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「あの選手(小平奈緒)との比較はやめて!」“女帝”イ・サンファがかなりナーバスになっているワケ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
メダルが有力視さている小平(写真:松尾/アフロスポーツ)

女子アイスホッケー取材後は江陵(カンルン)オリンピックパークに向かう予定だ。そこには、江陵ホッケーセンター(アイスホッケー)、江陵アイスアリーナ(フィギュアスケート)、江陵カーリングセンター(カーリング)といった氷上競技の試合会場が集まっており、いずれの試合会場も徒歩で移動できる距離だ。

その中のひとつ、江陵スピードスケート競技場では本日、女子スピードスケート1000mが行われるが、小平奈緒のライバルである韓国のイ・サンファ(李相花)は出場しない。

昨日、韓国スケート連盟関係者が明かしたところによれば、イ・サンファはメイン種目である18日の500mに照準を合わせ、棄権することを決めたという。

今日のレースは、小平奈緒との日韓エース対決の前哨戦として、韓国でも関心を集めていた。

イ・サンファは平昌五輪を盛り上げる“7大美女アスリート”にも選ばれている看板選手だけに、現地ではテレビを付けても新聞を見ても、小平との対決が大きく取り上げられていた。

(参考記事:「アイドル顔負けの美貌」の声も!! 平昌五輪を盛り上げる韓国の“7大美女アスリート”

それでもイ・サンファが欠場という決断を下したことからは、韓国で“氷上の女帝”とも呼ばれるイ・サンファが、500mでの直接対決を前に、小平のことをかなり警戒していることがうかがえるだろう。

実際、イ・サンファは、平昌の選手村入りした後には、現地記者に対してこう語っているほどである。

「頑張りますから、これ以上、あの選手(小平奈緒のこと)と比較しないでください。最近の報道を見ても、私ではなくあの選手の話ばかり。ホームで開かれる五輪なのだから、私にフォーカスを合わせてください」

小平と比較されることにかなりナーバスになりストレスを抱いているようにも感じさせる言葉だが、なぜ、イ・サンファはそれほど小平を警戒しているのか。

五輪3連覇を狙うイ・サンファの素顔

そもそもイ・サンファは、今大会で500m五輪3連覇を狙う韓国のスター選手だ。

中学校時代から韓国代表に選出。前々回のバンクーバー五輪では、20歳にして金メダルを獲得した早熟の天才。

彼女が若くしてその才能を開花させたのは、キム・ヨナもその恩恵にあずかった韓国の巨額投資強化計画“バンクーバー・プロジェクト”も関係しているだろうが、バンクーバー五輪後の活躍も華々しい。

13年11月には自身が持っていた世界新記録を更新し、ソチ五輪では五輪2連覇を達成している。

こうした実績に加え、そのクリーンなイメージも手伝って、韓国国内での人気は絶大だ。

プライベートな話題がメディアで取り上げられることも珍しくなく、同じくスピードスケート韓国代表からの片想い発言や元アイスホッケー選手との交際発表などが絡まった“氷上の恋の三角関係”が話題を呼んだこともあった。

また、イ・サンファは、そのルックスの良さにも注目が集まり、現地誌で大胆なグラビアを披露したこともある。LEGO集めやネイルアートが趣味というかわいらしい一面も相まって、男性ファンも少なくない。

(参考記事:LEGOオタク!? グラビアも披露!? スピードスケート界の“氷上の女帝”イ・サンファの意外な素顔

小平の実力は韓国も認める

そんなイ・サンファが小平奈緒を警戒しているのは、この2シーズンは直接対決で一度も勝てていないことが関係しているのだろう。

イ・サンファの負けが続いている一因には、怪我が重なって調子を落としていることもあると言われている、その一方で小平がオランダ留学などを経て実力を上げたことも否定できない。

何しろ、小平は現在、W杯15連勝中だ。イ・サンファが持つ世界記録(36秒36)こそまだ破られていないが、今季もW杯第3戦で36秒50をマークするなど好記録を出し続けている。

そんな小平の実力は韓国も認めている。メディアやファンの間では小平に対抗心を燃やすどころか、平昌での対決に諦めムードすら漂っているほどだ。

(参考記事:「イ・サンファの最高の対抗馬」「もう追いつけない」小平奈緒を見つめる韓国の視線

それだけにイ・サンファも意識せずにはいられないのだろう。“氷上の女帝”としての意地と焦りが、彼女をナーバスにさせているのは間違いない。

500mでの決戦を前に、小平に警戒心を高めているイ・サンファ。

今日、1000mを走る小平の滑りを、“氷上の女帝”はどのような心境で見つめるだろうか。日韓エース対決の行方を、引き続き現地で追っていきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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