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アンチエイジング成分NMNの正しい摂取方法と注意点 - 美容と健康への効果を最大限に

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【NMNとは何か? NAD+との関係と若返りメカニズム】

近年、アンチエイジング分野で大きな注目を集めているのが、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)です。NMNは私たちの体内でNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)に変換される物質で、NAD+は細胞のエネルギー代謝や DNA修復、老化のペースを制御する上で欠かせない重要な役割を担っています。

しかし残念ながら、加齢に伴ってNAD+の量は徐々に減少していきます。そこでNMNをサプリメントなどで補充することによって、体内のNAD+を増やし、若々しさを維持できるのではないかと期待されているのです。

実際、マウスを使った実験では、NMNを投与することで寿命が延びたり、老化に伴う身体機能の低下が改善されたりしたというデータが報告されています。例えば、老化したマウスにNMNを与えたところ、筋力や持久力が向上し、骨密度の低下が抑えられたそうです。

また、NMNは血管の機能を高め、脳の認知機能を保護する働きもあることが動物実験で示されています。アルツハイマー病のモデルマウスでは、NMNの投与によって神経細胞の損傷が軽減され、記憶力や学習能力が改善したとの結果も出ています。

【NMNの摂取方法と安全性についての研究結果】

それでは、NMNはどのように摂取するのが良いのでしょうか? 現在のところ、サプリメントとして経口的に飲むのが一般的な方法です。

ヒトを対象とした臨床試験では、1日あたり100mgから1000mgほどのNMNを、数週間から数カ月間継続して摂取することの安全性と有効性が確認されています。副作用の報告は少なく、比較的安心して利用できるようです。

ただし、大量に摂り過ぎた場合の安全性については、まだ十分なデータが揃っていないのが現状です。過剰摂取は控えめにし、様子を見ながら徐々に量を調整していくのが賢明だと言えるでしょう。

また、体内でのNMNの代謝は個人差が大きく、同じ量を摂っても体内のNAD+増加率には違いが出てくるようです。自分に合ったちょうど良い分量を見つけ出すことが大切なポイントと言えます。

NMNの体内動態について、興味深い研究結果が報告されています。経口摂取したNMNは小腸で吸収された後、肝臓で代謝を受けてNAD+に変換されるのですが、その過程で一部は分解されてしまうのだそうです。つまり、NMNが全てNAD+になるわけではないと言うことです。

この吸収や代謝の仕組みをより深く理解することで、NMNをより効果的に体内で利用する方法が見つかるかもしれません。腸内細菌叢との関連なども今後の研究課題だと考えられています。

NMNはサプリメントとして販売されていますが、医薬品とは異なり、厳密な品質管理の基準が設けられているわけではありません。合成方法や純度、含有量などにばらつきがある可能性も否定できません。信頼できるメーカーの商品を選ぶことが重要だと言えるでしょう。

【NMNの効果が期待される分野と今後の展開】

NMNのアンチエイジング効果は、美容分野でも大きな注目を集めています。紫外線によるシミやシワ、たるみなどの予防に役立つのではないかと考えられているのです。

実際、老化したマウスの皮膚にNMNを塗布したところ、コラーゲンの生成が促進され、シワが改善されたとの実験結果が報告されています。また、アトピー性皮膚炎のモデルマウスでも、NMNの投与によって炎症が抑えられ、症状が緩和されたそうです。

ヒトでの臨床試験は始まったばかりですが、今後さらなるエビデンスが集まれば、NMNを配合した化粧品や皮膚疾患の治療薬などが開発されるかもしれません。

NMNは他の抗酸化成分との相乗効果も期待されています。例えば、フェルラ酸やレスベラトロールと組み合わせることで、より高いアンチエイジング効果が得られる可能性が指摘されています。

これらの物質は、NMNとは異なる経路で老化のプロセスに作用すると考えられています。それぞれの長所を活かしながら、効果的に組み合わせる方法の確立が待たれます。

さらに、NMNはCOVID-19など特の疾患の治療にも応用できるのではないかと注目されています。ウイルス感染によって低下したNAD+を補充することで、免疫機能を高め、回復を助ける効果があるかもしれません。

このように、NMNの可能性は計り知れません。私たちの健康長寿を支える重要な鍵となる日も近いのかもしれませんね。ただし、安全性への配慮を忘れずに、正しい情報を得ながら賢く活用していくことが大切だと言えるでしょう。

参考文献:

- Irie, J., Inagaki, E., Fujita, M., Nakaya, H., Mitsuishi, M., Yamaguchi, S., ... & Okano, H. (2020). Effect of oral administration of nicotinamide mononucleotide on clinical parameters and nicotinamide metabolite levels in healthy Japanese men. Endocrine journal, 67(2), 153-160.

- Mills, K. F., Yoshida, S., Stein, L. R., Grozio, A., Kubota, S., Sasaki, Y., ... & Imai, S. I. (2016). Long-term administration of nicotinamide mononucleotide mitigates age-associated physiological decline in mice. Cell metabolism, 24(6), 795-806.

- Yoshino, M., Yoshino, J., Kayser, B. D., Patti, G. J., Franczyk, M. P., Mills, K. F., ... & Imai, S. I. (2021). Nicotinamide mononucleotide increases muscle insulin sensitivity in prediabetic women. Science, 372(6547), 1224-1229.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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