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ポルシェ4連勝で迎える母国決戦!富士6時間はトヨタの応戦に期待。

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
トヨタTS050 【写真:FIA WEC】

FIA WEC(世界耐久選手権)はアメリカ・オースチンのCOTA(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)で第6戦が開催され、最高峰LMP1クラスでポルシェ(Porsche LMP Team)の2号車(ベルンハルト、バンバー、ハートレー)がル・マン24時間レースから4連勝を飾り、ポルシェは同クラスで3戦連続の1-2フィニッシュを果たした。

COTA6時間耐久レースのスタート 【写真:FIA WEC】
COTA6時間耐久レースのスタート 【写真:FIA WEC】

完敗のトヨタ。しかし、富士に望みをつなぐ善戦

ポルシェの前にまたもトヨタは完敗だった。ル・マン後に登場した「ポルシェ919ハイブリッド」のハイダウンフォース仕様とトヨタの「TS050ハイブリッド」には予選から大きなタイム差が生まれ、決勝でもポルシェが逃げていくと予想されていたが、レースではトヨタが応戦し、見ごたえのあるトップ争いが展開されていった。

ただ結果は21秒の差を付けられ、ポルシェが1-2フィニッシュ。ちょうど折り返しの3時間でセーフティカーの介入があったため同一周回でレースを終えることができたものの、トヨタはシリーズチャンピオン獲得という意味ではいよいよ崖っぷちに追い込まれた。今季限りで撤退を表明しているポルシェの勝ち逃げを許してしまうのか。

前戦メキシコに比べれば、COTAでのトヨタは善戦したと言えるだろう。次戦はマシン開発の最前線となる東富士研究所が近い「富士スピードウェイ」で開催される地元レース「富士6時間耐久レース」だ。ここで負けるわけにはいかないが、昨年もライバルに対して脅威となる戦闘力を見せただけに、地元での反撃開始を期待したい。

ぜひ楽しみたいLMP2の速さ

「富士6時間耐久レース」はトヨタの活躍も楽しみだが、やはり今季からリニューアルし、全レースで好バトルが展開されているLMP2クラスの戦いが楽しみだ。

ヴァイヨン・リベリオンのオレカ07【写真:FIA WEC】
ヴァイヨン・リベリオンのオレカ07【写真:FIA WEC】

今季はLMP2クラスが全車「ギブソン」のV型8気筒4.2Lエンジンに統一された。車体は複数のメーカーが製造を行っているが、年間参戦している中では全車がフランスの「オレカ07」を使用する(アルピーヌA470もオレカ07と同じマシン)。そして、タイヤも「ダンロップ」でということで、実質的にワンメイクカテゴリーとなっている。

ワンメイクになったことで、よりそのバトルにフォーカスが当てられることになったLMP2クラス。600馬力を絞り出すまでにパワーアップしたギブソンのエンジンによってLMP1に対して7秒ほどのタイム差と一気にペースアップしている。その分、乗り手を選ぶカテゴリーへと変貌し、今季はブルーノ・セナ、ネルソン・ピケJr.、ジャン・エリック・ベルニュに代表される元F1ドライバーが多く参戦。実力派のドライバーが多い。富士スピードウェイの長いストレート区間ではスリップストリームを使いあった複数台による争いが白熱するのではないだろうか。

GTクラスはポルシェが戦力アップ

そして、今季目が離せないのが「LM-GTE」クラスを戦うGTカー。こちらもLMP2クラス同様に特に「LM-GTE Pro」クラスではアストンマートン、フェラーリ、フォード、ポルシェによるメーカーワークス対決が毎戦展開されていて、これまた6時間飽きることのないレースを楽しめそうだ。

特に注目は戦闘力を徐々に上げてきている「ポルシェ911 RSR」。同社伝統の駆動方式であるRR(リヤエンジン・後輪駆動)を捨て去り、MR(ミッドシップ・後輪駆動)を採用した新世代マシンだ。全てが新設計になった911だが、そのメリットは空力面の改善に有効な大型ディフューザーを装着すること。空力性能の向上のために耐久王ポルシェが下した英断だった。

ポルシェ911 RSR【写真:FIA WEC】
ポルシェ911 RSR【写真:FIA WEC】

独自のBOP(バランス・オブ・パフォーマンス)システムによって、マシン間の実力均一化を図るWEC。昨年デビューした「フォードGT」は今季、BOPによって苦しい立場になっているが、フェラーリ3勝、アストンマーチン2勝、フォード1勝で迎える第7戦富士ではポルシェの初優勝の期待がかかる。日本のSUPER GTにも参戦経験があり、コースを熟知しているフレデリック・マコヴィッキィが乗るポルシェ91号車は特に注目。第6戦COTAではポルシェがフェラーリとトップ争いを展開し、戦闘力の増加を感じることができた。

母国レースでの勝利に期待

今季のWECには3人の日本人ドライバーが年間参戦している。トヨタLMP1クラスの中嶋一貴、小林可夢偉、そしてLM-GTE Amクラスでフェラーリを駆る澤圭太だ。

トヨタの小林可夢偉(左)【写真:FIA WEC】
トヨタの小林可夢偉(左)【写真:FIA WEC】

特に今季はルマンでポールポジションを獲得した小林可夢偉の飛ぶような速さには要注目。コースレコードを大幅更新する可夢偉の攻めに攻めたドライビングは世界中を驚かせた。その走りが富士でも見られるわけだ。小林可夢偉は昨年の「富士6時間耐久レース」を大いに盛り上げた立役者であり、国内でもスーパーフォーミュラで優勝争いを展開するなど、今年はまさにスイッチが入っている状態。否が応でも小林可夢偉の熱い走りに注目が集まることになるだろう。

ライバルのポルシェは今季限りで撤退を表明しているだけに、史上最強のハイブリッドプロトタイプカー対決が見られるのも今年が最後。来季以降のプランについてはまだ最終決定が下されていないが、耐久レースらしからぬスプリント勝負はこの機会にぜひ目に焼き付けておきたいものだ。「富士6時間耐久レース」は10月13日(金)から15日(日)に開催される。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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