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絶対的クローザー不在のレッドソックス入りした澤村拓一が2013年の上原浩治を継承する?!

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
レッドソックス史上8人目の日本人選手となった澤村拓一投手(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

【レッドソックスが澤村投手の獲得を正式発表】

 すでに米メディアが報じていたように、レッドソックスは現地時間の2月16日、海外FA権を行使してMLB移籍を目指していた澤村拓一投手の獲得を正式発表した。

 チーム発表によれば、契約期間は2年間で、澤村投手とチーム双方で2023年の契約オプション権を共有することになったようだ。

 年俸を含めて契約内容の詳細は明らかになっていないが、本欄でも報告しているように、米メディアによれば、2023年の契約オプションが行使され、すべてのインセンティブがクリアされれば、総額で765万ドルに上ると見込まれている。

 この結果澤村投手は遂に自分の夢を実現させ、レッドソックス史上8人目の日本人選手が誕生することになった。ちなみに「日本生まれ」という括りになると、デーブ・ロバーツ選手(現ドジャース監督)が加わり、9人目となる。

【地元メディアは早くも勝利の方程式として期待】

 澤村投手の加入は、早くも地元メディアから期待を集めているようだ。

MLB公式サイトでも、岡島秀樹投手、上原浩治投手、田澤純一投手を引き合いに出し、「レッドソックスは日本人リリーフ投手たちから多大な貢献を得た過去がある」とし、澤村投手も試合の終盤を任される「勝利の方程式」の一角として期待を寄せている。

 しかも今シーズンのレッドソックスは、過去にシーズンを通してクローザーを務めた経験を持つ投手が存在しておらず、今シーズンから指揮官に復帰したアレックス・コーラ監督も、複数の投手でクローザー役を回していく考えを示しているという。

 そうした意味で澤村投手は、レッドソックスのリリーフ陣の中で最もクローザーとしての経験を有しており、米メディアの期待は当然といえるだろう。

【実績では澤村投手がトップ】

 MLB公式サイトでは、澤村投手を含め、勝利の方程式を担うと期待されている4投手の名前を挙げている。そこで4投手の実績を比較するため表にまとめてみた。

(筆者作席)
(筆者作席)

 如何だろう。実績という面では、やはり澤村投手が頭一つ抜けているように思う。もちろんMLBでの成績ではないので単純比較はできないが、クローザーとしての実績は3投手と比べようがないくらい十分なものだ。

 唯一気がかりなのは、「SO/W(奪三振数/与四球数)」の高さだ。澤村投手1人だけが3ポイントを上回っている状況だ。いずれにせよ澤村投手が実際にMLBの公式戦でどんな投球を披露するのかを確認してからでないと、どんな役割を担えるのかは判断できないだろう。

 ちなみにヘルナンデス投手の年俸が記入されていないのは、MLB在籍日数が3年未満のため、スプリングトレーニング中に最低年俸額程度で契約することになるためだ。また澤村投手の年俸額も明確になっていないため、『FAN GRAPHS』掲載のデータを使用している。

【澤村投手が上原投手の継承者に?】

 ただ現在のレッドソックスのリリーフ陣は、上原投手がワールドシリーズで胴上げ投手になった2013年に類似している部分があるように感じている。

 同年のシーズン開幕時は、ジョエル・ハンラハン投手というクローザーを擁していたのだが、開幕後すぐに負傷して戦線離脱してしまう。その後は入れ替わりでクローザー役を試してみたのだが、なかなかフィットする存在が現れなかった。

 そこで当時のジョン・ファレル監督は、開幕からセットアッパーとして安定した投球を続けていた上原投手を6月下旬にクローザーに指名することを決断(それまでは彼をセットアッパーから外しリリーフ陣が崩れるのを警戒していた)。そこから上原投手はさらに大車輪の活躍をみせ、チームを6年ぶりのワールドシリーズ制覇に導いている。

 澤村投手が上原投手と同じ道を歩む可能性は、十分にあるのではないだろうか。

 昨年巨人からロッテにトレードされた後、澤村投手が入場曲に上原投手がMLB時代から使用していた『Sandstorm』を使うようになったのは有名な話だ。さらに偶然にも今シーズンのレッドソックスは、現在背番号19が空きになっている。

 もしかしたら今シーズンのフェンウェイ・パークで、『Sandstorm』の入場曲が流れる中、背番号19をつけた澤村投手がマウンドに上がるシーズンが見られるかもしれない。1人の日本人ファンとしてワクワクを抑えられない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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