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世紀の番狂わせは起こるのか? ロマチェンコ対中谷正義を元2階級制覇王者が予想

杉浦大介スポーツライター
Mikey Williams Top Rank via Getty Images

 6月26日、ネバダ州ラスベガスバージンホテルズ・ラスベガスで元OPBF東洋太平洋ライト級王者の中谷正義(帝拳)が3階級制覇王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と対戦する。ロマチェンコはアマ時代に五輪2連覇、通算396勝1敗というとてつもない実績を残し、プロ入り後もデビュー3戦目で世界王座に就いたスーパースターだ。一時はパウンド・フォー・パウンド・ランキングでも最強と呼ばれた選手を相手に、中谷がどんな試合をするのかが注目される。

 ESPNのアナリストとしてリングサイドで解説するティモシー・ブラッドリーに今戦の見どころを尋ねた。現役時代はスーパーライト級、ウェルター級の2階級を制し、マニー・パッキャオ(フィリピン)と通算1勝2敗というライバル関係を築いたブラッドリーの目に、中谷のチャンスはどう映っているのか。

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Photo By Mikey Williams/Top Rank
Photo By Mikey Williams/Top Rank

プレッシャーのかけ合いがポイント

 中谷がロマチェンコを攻略しようと思えば、ディフェンスを気にかけながら、積極的に攻める必要がある。中谷は攻撃力に秀でているが、ディフェンスが疎かになることが多い。サイズの利点を生かすと同時に、相手の反撃による被弾を最小限にしながら、より小柄なロマチェンコを下がらせなければいけない。チャンスがあれば相手をロープに詰め、パンチを叩きつけていくべきだろう。

 ロマチェンコは世界的に評価の高い選手だが、怖気付いてはならない。ロマチェンコだって人間。過去に負けた経験だってある。精神的にタフさを保ち、ハードに戦い抜くことだ。それを1試合を通じてやり遂げれば、中谷にも勝つチャンスはあると思う。

 一方、自分より大きな相手と戦うことになるロマチェンコの方も、相手にプレッシャーをかけるような戦い方ができるかが鍵になる。前に出て戦うのが好きな中谷に対し、どれだけ重圧をかけられるか。ロマチェンコはフットワークを使い、左右に動き、相手のパンチをかわし、手数を出して追い詰めていくことだ。

 この試合のどこかで、ロマチェンコは多少のリスクを冒してでも詰めにかかるだろう。中谷には相手にダメージを与えるだけのパンチ力があるから、危険な戦術ではある。

 ただ、そこで中谷のパンチをもらわず、懐に入ってかき回すことができたら、ロマチェンコは断然有利。近い距離からの様々な角度のパンチで中谷を下がらせたなら、一方的な展開になるに違いない。

ロマチェンコ勝利を予想するが

 見せ場の多い好試合になると思うが、予想を問われたらやはりスキル、フットワークで上回るロマチェンコが優位と言わざるを得ない。

 ロマチェンコはボクシング界のレジェンドだ。プロキャリアの早い時期にオーランド・サリド(メキシコ)に敗れた後も、さらに強くなって戻ってきた。今回の試合でもスキルがサイズの差を克服し、ロマチェンコが勝つのではないかと思う。前戦でテオフィモ・ロペス(アメリカ)に敗れたことでハングリー精神を取り戻し、最近では最高のロマチェンコが見られるかもしれない。

 とはいえ、中谷にも勝機はある。1発のパンチで流れが変わるのがボクシングというスポーツ。私はロペス戦の前にも中谷の実力を疑ったが、彼は予想を超える試合をした。昨年12月のフェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)戦の際にも中谷は勝てないと思ったが、見事な逆転KO勝利を挙げた。今回の試合でも中谷に不利の予想をするが、私がまたしても間違っていたとしてももう驚かないよ。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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