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「安倍元首相の国葬に訪れた女性がつけていたのは統一教会のペンダント」根拠不明の情報が9千件以上拡散

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
拡散している根拠不明の情報。Twitterより。モザイクは筆者加工

 9月27日に行われた安倍元首相の国葬にて、「弔問客としてテレビのインタビューに答えた女性がつけているのは統一教会(現:世界平和統一家庭連合)のペンダントだ」とするツイートが9,000件以上拡散していますが、その指摘には根拠がありません。

Twitterユーザー「統一教会ペンダントの人、これっすな」

 この根拠不明の情報はもともとTwitterユーザーAが投稿した「献花に訪れた女性がテレビ局のインタビューに世界に誇れる人と言ってたけど、ペンダントが統一教会のやつw」とのツイートから始まりました。

「統一教会のペンダントをつけた女性がインタビューに答えていた」という指摘。Twitterより。モザイクは筆者加工
「統一教会のペンダントをつけた女性がインタビューに答えていた」という指摘。Twitterより。モザイクは筆者加工

 このツイートは記事執筆時点で1.3万件以上も拡散され、多くの人に「統一教会の信者が安倍元首相の国葬にやってきている」との印象を植え付けました。

 続いてこのTwitterユーザーAのツイートを引用RTするかたちで、別のTwitterユーザーBが「ひるおびに出てたらしい、統一教会のペンダントの人、これっすな」とテレビのキャプチャ画像付きで投稿しました。

根拠不明の情報により、統一教会の信者とされた女性。Twitterより。モザイクは筆者加工。放送された番組は2022年9月27日放送の『ひるおび』とのこと
根拠不明の情報により、統一教会の信者とされた女性。Twitterより。モザイクは筆者加工。放送された番組は2022年9月27日放送の『ひるおび』とのこと

 こちらも2日間で9千件以上拡散しました。

 さらにTwitterユーザーBは「九段坂公園に統一教会信者がたくさん動員されてたんだね〜」、「自分は「真の家庭」ペンダントが一番近いかなと思ったけど。 153万円か〜w」などと、女性がつけているペンダントは統一教会のものであり、信者がたくさん動員されているとの憶測をリプライとして拡散したツイートにつけており、こちらも1,000件以上拡散されました。

憶測により、統一教会の信者が動員されていたと決めつける投稿。Twitterより。モザイクは筆者加工。
憶測により、統一教会の信者が動員されていたと決めつける投稿。Twitterより。モザイクは筆者加工。

 しかし、これらの情報には根拠が一切ありません。

Aの「女性」とBの「キャプチャ画像の女性」は紐づかない。画像も他人の投稿画像を転載したもの

 TwitterユーザーAは「テレビ局のインタビューで世界に誇れる人と言った女性が統一教会のペンダントをつけていた」とツイートしていますが、TwitterユーザーBが投稿したキャプチャ画像には「長い間 日本のために尽くしていただいて本当にありがとうございましたという気持ちを伝えたい」とのテロップしかなく、「世界に誇れる人」と言ったかどうか確認できません。

 キャプチャ画像以外のシーンでそのようなことを喋っていた可能性はありますが、TwitterユーザーBはキャプチャ画像について「画像の出元はこのツイート」とTwitterユーザーCの投稿を無断で転載したものだと明かしており、TwitterユーザーBが「世界に誇れる人」と言った女性だと確認して投稿したものではないとみられます。

 また、キャプチャ画像を投稿したTwitterユーザーCは「一般献花の長蛇の列」としか書いておらず、こちらの投稿からも女性が統一信者のペンダントを付けているとの情報は確認できません。

 つまり、「キャプチャ画像の女性がつけているのは統一教会のペンダントである」との指摘はTwitterユーザーBが「(統一教会のペンダントをつけた女性が)ひるおびに出てたらしい」と憶測で書き込んだものにすぎず、根拠不明の情報と言えます。

 そもそもTwitterユーザーAは「テレビ局のインタビュー」としか投稿しておらず、その番組が『ひるおび』であったかどうかも不明という状況です。

根拠不明の情報で決めつける恐ろしさ

 安倍元首相の国葬に統一教会の信者が弔問に訪れていることはあると思いますし、もしかしたらTwitterユーザーBが投稿したように上層部の指示により信者が動員されているかもしれません。

 しかし、そのような考えを持っているからといって弔問に訪れた人を根拠不明の情報で「この人は統一教会の信者だ」と決めつける行為は許されるものではありません。

 拡散数を見るにその何倍、何十倍もの人が「この女性は統一教会の信者である」との根拠不明の情報を受け取ったでしょうし、女性を知っている人が何らかのアクションを起こす可能性も考えられます。

 そのアクションで被害が出れば、TwitterユーザーBや拡散した人の責任は大きいと言えます。それでなくともネット上には「女性が統一教会の信者である」との根拠不明の情報が長く残ることでしょう。

 TwitterユーザーBのこれまでの投稿を見ると、国葬について批判的な立場のようです。しかし、その意見を補強するために根拠不明の情報で信者と決めつけるのは間違っています。

 この記事を読んだ方々には、そのようなことはしないよう、そしてそうした情報には惑わされないよう注意して欲しいと思います。

 なお、9月29日の夕方ごろにTwitterユーザーBは問題の投稿を削除しましたが、その理由は「一定以上のインプレッション数を超えて通知がウザいから」としています。

 根拠不明の情報を流し、自分でも削除する必要があると思っているのであればきちんとした訂正もして欲しいものです。

補足

  • この女性の知人を名乗る人物が、「女性は統一教会と無関係だ」と問題の投稿に返信しています。
  • キャプチャ画像のペンダント部分を拡大して、統一教会が販売していたペンダントとつきあわせて否定する行為が行われていますが、“統一教会のペンダント”の全種類がわかっているわけではないため、否定情報としては弱いと判断してこの記事では取り上げておりません。
ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。インターネット(SNS)で起きる炎上の解説、デマのファクトチェック、スマホやガジェットの話題、生成AIが専門。最近はYouTubeでも活動しています。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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