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3月の訪日外国人93%減で256万人減少、国別1位はアメリカ、2位はベトナムに。4月は更に減ることに

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
成田空港の到着ロビーも閑散としている(第1ターミナルにて4月10日筆者撮影)

 観光庁は、2020年3月の月間訪日外国人の速報値を4月16日に発表した。昨年は3月の1ヶ月間で276万人の外国人が日本を訪れていたが、新型コロナウイルスの影響により19万3700人に減少し、減少者は約256万人、減少率は約93%となった。記録的な減少であり、改めてコロナショックが数字でも示された形だ。

 2月の訪日外国人数は、前年比58.3%減の108万5100人で、2月と3月で比較しても3月は前月比で約82%(約89万人減少)となった。

3月の急激な落ち込みは中国・台湾・香港・韓国が中心

 3月の訪日外国人減少傾向の特徴としては、これまで全体の約4分の3を占めていた中国・台湾・香港・韓国の東アジア地域において、前年比で中国は98.5%、台湾は98.1%、香港は94.2%、韓国は97.1%の大幅減となり、結果、訪日外国人数全体で93%減となった。

 中国や韓国は、1月後半~2月前半の段階で新型コロナウイルス感染者が急増し、中国では1月末の旧正月後半から海外への団体旅行が禁止されたことで、2月の時点で前年比87.9%減になっていた。韓国は日韓関係悪化で、昨年の7月以降、前年比の半分に落ち込んでいたが、年末頃から回復傾向が見られていた中での新型コロナウイルスの蔓延で、更なる減少となってしまった。今回のコロナウイルスで中国と韓国の入国制限が強化された3月9日以降は、両国からの便は成田空港と関西空港の2空港のみに制限されたことで、他の国際線よりも早い段階でほとんどの便が運休となった。

成田空港第2ターミナルの到着ロビー(4月10日、筆者撮影)
成田空港第2ターミナルの到着ロビー(4月10日、筆者撮影)

3月は国別で見ると1位アメリカ、2位がベトナムに。ベトナムが上位の理由は?

 3月の訪日外国人数を国別のデータを見ると、今までにない傾向が見られた。今までは中国、韓国、台湾、香港の順で訪日外国人の国別の1位~4位だったが、3月の速報値ベースで見ると、1位はアメリカの約2万3000人(87%減)、そして2位はベトナムの約2万800人(56.6%減)となった。韓国は約1万6700人で3位、中国は約1万400人の5位となり、4位はフィリピンの約1万900人(77.4%減)となった。

 アメリカは落ち込みも激しいが、従来から月間で10万人以上が訪れていたこともあり、約87%減ったが東アジアに比べると落ち込みが若干少ないことで1位となった。むしろ注目すべきはベトナムである。

 近隣のタイが96.7%減の約4800人、マレーシアが93.5%減の約3300人、シンガポールが88.3%減の約5100人となったのに対し、ベトナムは56.6%減の約2万800人が来日した。3月前半時点では他の国に比べると、ベトナム便の運休は限定的であったことに加え、両国ともにお互いに入国制限の措置が取られていなかったことで、日本人・ベトナム人共に一定数は、旅行を取りやめずに予定通りに双方の国を訪問していた。このような状況もあり、減少幅も主要国の中で最も少ない56.6%となった。実際に4月10日時点でも感染者数は257人で、死者も出ていない状況であり、アジアの中でも感染者が少ない国となっている。

近年、日本人観光客が増えているベトナム・ダナン。1月時点では世界各国から多くの観光客が訪れていた(今、ダナンで最も熱いスポットとして人気の天空に突如現れる巨大な神の手「ゴールデンブリッジ」、1月12日筆者撮影)
近年、日本人観光客が増えているベトナム・ダナン。1月時点では世界各国から多くの観光客が訪れていた(今、ダナンで最も熱いスポットとして人気の天空に突如現れる巨大な神の手「ゴールデンブリッジ」、1月12日筆者撮影)

原発問題で外国人が日本を敬遠した2011年東日本大震災の時でも落ち込みは約半分

 今回のコロナショックの衝撃は、2011年3月11日に発生した東日本大震災の時を遙かに超える状況になっていることが数字からも読み取れる。2011年3月は、震災後に原発事故による不安が世界中に広がり、地域によっては計画停電が実施されたこともあった。そのような状況に見舞われたが、2011年3月は前年比約50%減の約35万人となった。

 震災が3月11日だったことで、最初の10日間は影響がなかったことに加え、首都圏及び東北への影響が中心で、大阪、九州、沖縄などへは一定数の外国人は訪れていた。また、今回のような入国制限・入国拒否などの措置はなかったが、それでも当時は半分に減ったことは衝撃的であり、海外航空会社の一時運休や運航乗務員を日本に滞在させない為に、ヨーロッパからの便の一部がソウル経由にするなどの対策を講じたケースもあった。筆者も震災直後から成田空港で取材をしていたが、留学生を中心に日本在住の外国人の出国が相次ぎ、成田空港の出発ロビーは人で埋め尽くされていた。

4月は月間10万人を下回る可能性が高い

 震災翌月の2011年4月が最も落ち込み、62.5%減の29万5000人となったが、今回の新型コロナウイルスの影響では、既に3月で19万3700人と東日本大震災発生時よりも落ち込んだ。

 4月3日からは、アメリカやベトナム、フィリピンを含めて従来の24の国・地域から73の国・地域が外国人の入国拒否対象となり、ANA(全日本空輸)やJAL(日本航空)の国内2社の国際線も約9割が運休となり、国際線全体では9割以上の便が運休していることで、外国人の日本入国が物理的にも厳しくなり、東アジア以外の減少が加速していることから、今月(4月)は10万人を下回る可能性が高い。

 本来であれば4月は、日本の桜を見るためにわざわざ4月を選んで来日する訪日外国人観光客(インバウンド)が多いことで、夏の観光シーズンと並び、年間でもトップシーズンとなり、昨年(2019年)4月は、約292万人が日本を訪れていることから、95%以上の減少は確定的だ。

羽田空港第3ターミナルの到着ロビーも閑散としている(4月4日、筆者撮影)
羽田空港第3ターミナルの到着ロビーも閑散としている(4月4日、筆者撮影)
9割以上の便が欠航していた(4月10日、羽田空港第3ターミナルにて筆者撮影)
9割以上の便が欠航していた(4月10日、羽田空港第3ターミナルにて筆者撮影)

長引けば、年間1000万人を下回る可能性も

 既に観光業界・航空業界が大打撃であるのは言うまでもないが、この状況がいつまで続くのか。今年は、東京オリンピック・パラリンピックイヤーであることから年間4000万人の訪日外国人(インバウンド)を想定し、受け入れ体制を整えてきたが、収束時期の想定も見通せず、この状況が長引けば年間の訪日外国人数が1000万人を下回る可能性もあるだろう。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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