お年寄り夫婦で「病院まで1キロ以上」は約2割
お年寄りだけの世帯では万一の事を考えると、そして日頃の通院の便宜性から、近所に病院があった方がありがたい。過去の内閣府調査でも、大よそ60代は1キロ、70歳以上900メートル足らずが「歩いて行ける距離」と認識しているとの結果が出ている。
タクシーや自家用車が使えれば行動範囲は広がり、近場にバス停があればバスを利用することもできる。しかしすべての人がその機会に恵まれているわけではない。また費用を考えると躊躇してしまう。
それらの諸事情や状況を勘案し、「自分の住まいから最寄りの医療機関までの距離」について、総務省統計局が2015年2月に確定報を発表した、2013年10月時点における住宅・土地統計調査の確定報を基に、実情を精査してみることにする。世帯の内情を高齢者が居るか否かを中心に仕切り分けし、確認をした結果が次のグラフ。全体なら17.0%の世帯が「自宅から医療機関まで1キロ以上あり、歩いて行くのには難儀させられる、近場に医療機関が無いと認識している」といった居住環境にあることになる。
高齢者のみの単身世帯は全体的に、病院に近い場所に住む傾向がある。特に高齢単身者は病的リスクを自認し、医療機関の近場に住むような努力をする傾向が強いようだ。
他方単身世帯以外では一般的に、世帯全体よりも高齢者が居る世帯の方が医療機関から遠いところにあるのが分かる。特に世帯主も含めとにかく高齢者がいる世帯や、いずれか一方のみが65歳以上の夫婦世帯では遠場の傾向が強い。賃料や地価の面で過ごしやすい地方の方が高齢者が多く、面積あたりの医療機関数が少ないことに加え、高齢者「以外」の世帯構成員が居ることで安心感がある、何かあった時の即時対応性が高いのが要因だろう。
平均的な行動性向では歩きで来院するのが困難な「医療機関までの距離が1キロ以上ある」場所に住んでいる高齢者が、結構な割合に及んでいることに違いは無い。他方、高齢化と高齢世帯は増加する傾向にある。
すべての地域に対し、一定区間ごとに医療機関を配するのはリソース配分の上で事実上不可能。一方で、医療サービスを受け難い環境は高齢者にとり、不安なのも事実。往診サービスの拡充や定期健康診断の実施、無料や安価な地域バスの運行などの配慮が求められよう。他方、万一の事態が発生した時のリスクが高くなる単身の高齢層世帯においては、ご近所づきあいを心がけ、助力を受けられるように心がける必要がある。
また発想を逆転させ、医療機関に限らず各種設備が近場にある、整った環境下に集団で移住してもらう、集約化するという発想も検討すべきかもしれない。
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