イラク情勢の展望
とりあえずの関心事は軍事情勢である。どこまでISIS(イラクとシャームのイスラム国)が支配地域を広げるかである。この組織は名前の通り、イラクと東地中海に面したアラブ地域における「イスラム」体制の樹立を目指している。焦点は、どこまで南下するのか、できるのかであろう。現在バグダッドの北方に位置するバクーバやサマッラ―での戦闘が伝えられている。破竹の勢いでモスルなどスンニー派の多い地域を制圧したISISではあるが、南部に行けば行くほどシーアの人口密度が高くなる。したがって進撃は停滞が予測される。事実、バクーバもサマッラーも依然として陥落していない。これは、シーア派の防衛努力の成功を意味するのであろうか。あるいは、そもそもISISは、南部に本格的に侵攻する意図はもっていなかったのだろうか。陽動作戦だったのだろうか。いずれにしろ、南部にマリキ政権が兵力を集中している隙に、ISISが西部の国境地帯の都市を次々に手中に収めた。
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