虐待された動物の命が守れない? 「一時保護」がない動物愛護法について考える
犬や猫は家族の一員といわれています。
2019年動物愛護法改正により、獣医師は、みだりに殺傷されたり、虐待されたりした疑いのある動物を発見したときは「遅滞なく、都道府県知事その他の関係機関に通報しなければならない。」すなわち通報義務があるということになりました(以前は、「努力義務」)。
動物を救うために、虐待があれば通報すると肝に銘じて治療をしています。虐待には気をつけていますが、子どもと違って動物は「一時保護」というものがないので、動物の命を守れない可能性もあります。そのことについて見ていきましょう。
動物虐待で逮捕された飼い主の元に犬や猫は戻される
虐待を通報すれば、動物はその環境から救い出されると思っていました。
しかしそうではなく、飼い主が逮捕されても犬や猫はそこに戻る可能性があるのです。
動物虐待で、以下のような事件がありました。
2021年9月、動物愛護法違反(虐待)の容疑である動物愛護団体(神奈川県横浜市)のシェルター(神奈川県藤沢市)を家宅捜索して計107匹の犬や猫を押収しました。2022年3月には団体と代表の男性を同容疑で書類送検し、同11月には別の犬に対する同容疑で7匹を押収、男性を逮捕しました。
本事件では動物愛護団体の代表の男性は逮捕され、犬や猫を押収されています。しかしながら、いまの動物愛護法では犬や猫の所有権は依然この男性にあるのです。調べが終わったあとにこの男性が犬や猫の返却を求めれば、それに応じる必要があります。
飼い主が動物愛護法で有罪になっても、飼い主が所有権を放棄しない限り虐待を受けた動物は飼い主の元へ返されてしまいます。
「一時保護」の必要性と現在の課題
いまの動物愛護法では、犬や猫は、飼い主の所有物です。つまり命あるものではなく、モノになっているのです。
彼らの命を守るためには、行政は虐待を受けている(疑いのある)動物を、適切なタイミングで一時保護できることが望まれます。虐待の程度が酷い場合など一定の条件をみたした場合には、犬や猫などの所有権を飼い主から速やかに喪失させることも必要と考えます。
ただし、一時保護ができても、いまのシステムだと行政による動物の居場所の確保が難しいです。
多頭飼育崩壊などになれば、すぐに動物保護施設は満員になるので、その辺りも改善が急がれます。
子どもの虐待対応の「一時保護」
ペットは子どもと同じではありませんが、犬や猫も家族の一員といわれているので、少し子どもの虐待対応の一時保護について説明します。
厚生労働省の一時保護のホームページによりますと、
と記載されています。
そして、虐待の緊急性が予測される場合などには、直ちに対応すべきであり、生命に関わるなど重大な事件が発生する前の対応を進める上で、休日や夜間に関わりなくできる限り速やかに対応する事を原則とすべきと記載されています。
まとめ
現在の動物愛護法は、動物の安全と命を守ることに対して完全な法律ではありません。このような一時保護がないことを多くの人が知ってほしいです。
そして、動物の虐待の定義はその時代によって変化します。しつけと称して、日常的に、殴る・蹴るなどの暴力を振るっている飼い主もいます。それも虐待に当たる可能性が高いです。
虐待している飼い主から動物を保護しても、その受け皿が準備できていないという問題もありますが、もっと動物の安全と命を守る社会になる必要があります。
【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサーが企画・執筆し、編集部のサポートを受けて公開されたものです。文責はオーサーにあります】