新監督の揃い踏みで鳴尾浜は大騒ぎ!締めは一二三と横田のサク越え《11/7 阪神ファーム》
きのう7日、安芸の秋季キャンプに不参加の選手たちで行われている鳴尾浜の秋季練習 (私はいつも、鳴尾浜秋季キャンプと呼んでいますが…) に、金本知憲1軍監督が視察&指導に訪れました。ことしは新しく就任した掛布ファーム監督を、その背番号31のユニホームをひとめ見ようと連日多くのお客様が来られている鳴尾浜。そこに加えて金本監督の来訪ですからねえ。背番号6の。
前もってご存じだったお客様が朝から詰めかけ、お昼には入場制限まで!球場入口から寮の正面玄関に向かってできた入場を待つ人の列は、午後2時を過ぎても解消しませんでした。最大で90人くらいの方が並ばれたとか。試合のない日の入場制限なんて前代未聞ですね。選手たちも気合いが入るなあ、と思ったら「本日のサイン会はなし」と告知された途端、蜘蛛の子を散らすように帰っていかれたそうで…。なるほど、終盤はサイン待ちの列だったわけですか。
でもスタンドで最後まで練習をご覧になっていた方は、サク越えの打球や懸命なプレーに大きな拍手を送ってくださっていました。それは本当にありがたいことです。グラウンドでは16時前まで練習が行われ、野手陣からも投手陣からも大きな声が聞こえてきたのは確か。金本監督は一日だけですが、1軍監督が鳴尾浜の秋季練習を指導するのは珍しいことで、掛布ファーム監督も感謝していました。選手はもちろんでしょう。
何かが変わる。変わってきている。――そんなふうに感じた人は多かったかもしれませんね。
根気を大事に、と金本監督
練習を終えて、まずテレビカメラの前で取材に応じた金本監督は、人の多さが「掛布さんフィーバーです」と言ってニヤリ。この日を振り返って「楽しみな選手を何人か見られたのはよかったですね。一番目についたのが植田、横田。秋季練習(甲子園)に来ていた一二三も、形がよくなって飛距離も伸びてる。ちゃんと意識してやってくれてるんだなって感じました」という感想です。
途中、掛布ファーム監督と話し込んでいたのは?「僕も経験あるんですけど、言われたことをすぐ忘れてしまう傾向があって(笑)。あれもこれも一気によくしたいという気持ちが強すぎて、大事なことを忘れてしまう。言う方も根気よく、忘れないうちにまた言ってあげることも必要だ。掛布さんとも『すぐ忘れちゃうんだよね~』『いや、僕らもそうだったじゃないですか~』って2人で話していて、根気も大事やと思いました」
本来なら安芸の秋季キャンプに参加してしかるべき選手も、今回は鳴尾浜での練習になった点について「本当は安芸へ連れていきたかったですけど、ずっと掛布さんがバッティングを見られてて、そのまま続ける方がいいとの判断で残していきました」とのこと。また、安芸キャンプ再合流は第3クールからになる金本監督。「ちゃんと連絡を取り合って情報は得ています。全体練習は高代さんに任せて。助かっています」
「横田は3割40本の選手に育てたい」
最後に、横田選手の話で「スタンスの広さが気になったんですよ。スタンスが広すぎて顔がぶれてしまう。あれだと速い球は差し込まれて、変化球は泳がされる。どのバッターもそう、入口はね。あとはテイクバックで右肩が下がること。これを修正して実戦で経験を積めば」と課題を挙げた金本監督。
「振る力と飛距離は持っているから、それを生かしていく。あの体つき、見ての通りですよ。想像通りの打球が飛びますね。小さくまとめない。3年かかって3割10本より、5~6年かかっても3割40本のつもりで育てていきたい」と楽しみで仕方がないという様子でした。それもそのはず、この日の特打を見守ったチームスタッフの皆さんも「人間の打ったボールがあんなに飛ぶとは…」と呆気に取られるくらいの打球ですからね。
とはいえ、来年の沖縄キャンプに連れていくかと問われ「まだその段階にはいっていない。この秋どう仕上がるか」と冷静に分析しています。続けて「欠点は多いよ。でも下半身、腰がちゃんと平行にしっかり回っている。普通の選手はそれができるようになるまで時間がかかるんだけどね。腰がしっかりしているから上半身のパワーがある」とのことでした。
なお横田選手よりも先に名前が出てきた植田選手の話は、あすご紹介します。
掛布監督は、いい刺激に感謝
次に掛布ファーム監督。練習が終わった時に、小さな子どもが「サインください!」とお願いしたようですが「これからミーティングだからダメなんだよ~。ごめんね」と謝って引き揚げてきました。優しいですねえ。この日の練習には「ファンの方も多かったし、金本監督の目というのもあって、選手たちは緊張感のある一日だったと思います。こういう中でやるのも大切でしょう。金本監督が鳴尾浜の方に一回でも来てくれて、いい刺激になった。こちらから1人ずつの情報は伝えて、監督も1人1人に声をかけてくれましたしね」と大満足のようです。
「ちょっとステップが大きい。腰の回転でフル選手が少ない。今の子は上体が強いからね。遠くへ飛ばそうとしてステップが大きくなってしまう。金本監督も『スタンスを狭く、狭く』と言っていました。スタンスが狭いと物足りなく感じるんですよね。でも自分の感じで覚えていかないと、1軍で打つには。きょう金本監督が言ってくれてよかった。これからも根気よく言ってあげないといけないけど」
この秋季キャンプと秋季練習を「11月ってのは数字に関係なくやれる時期。いい形で確認して来年につなげていく、そのヒントを与えていこうと思っています。その点でも、スタンスってのは1つのポイントになる」と掛布監督。また「金本監督からの要望は特にありません。気づいたことを話し合って、その共通点がスタンス。もともと2人とも広いんですよ。金本監督が、40本打った時は狭かったと言っていて、自分もそうだったかな?1985年はまた広くなってたな、と思い出しながら」一二三選手や横田選手にアドバイスをしたということでしょう。
「打球が違った」と横田
全体練習後、一二三選手と2人で特打を行った横田選手。ホームランが出ると満員のスタンドから拍手が起き、特にバックスクリーンに当たってゴンッ!という音を立てた時には「おお~」とどよめきも聞こえてくるくらいです。離れたところで見ていても活気が伝わってきますね。加えて両監督やコーチ陣が見守る中で、横田選手は144スイングして31本のサク越えでした。
スタンス、ステップの幅についてアドバイスがあったようですね?「ステップの幅を意識するだけで打球も全然違ったし、ヘッドが抜ける感じもしました。この間、ずっとやっていこうと思います」。どれくらい狭くしたの?「1足分です」。これは足の幅1つ分ということ。横田選手自身、それほどの違和感はなかったと言います。
「ステップさえ直れば、と思います。最初は物足りなかったんですけど、打球が違ったので。ステップは前から掛布さんにも言われていたんですが、別のところを直していて修正するのが遅れていました。きょう改めて言われて直した。感覚はよかったです。幅を狭くして、体も平行に回ったりとか、いい部分があった」と、おおむね好感触の様子。
それから「安芸に行けなくて結構くやしかったので、きょう少しでもいいところを見せられればと思っていました」とのこと。横田選手にとって、昨年はまだ腰痛が治ったばかりで制限つきだった秋季キャンプ。ことしこそ!と思っていたはずで、監督同士の事情はあったとしても悔しかった思いはわかります。だからこそ、この一日は貴重な時間だったでしょうね。十分なインパクトを残しましたよ。
一二三「物足りなさは我慢!」
同じく特打をした一二三選手は、159スイング中32本がサク越えです。飛ばしていたねえと話しかけたら、その前にまず「きつかった!」という感想。そんなに?「特にランニングが…。メッチャきついっすよ!あれ。30メートル行って戻ってくる時に、どうやって動いていいかわからんくらい!」。そう言いながら笑いました。
「掛布さんにも前から言われていたことで、スタンスの歩幅をせばめるという話でした。自分の中で物足りなさはありますね。僕の中でメッチャせばめてる気がするけど、見てみたら半歩くらいしかないんですよ。感覚が全然違う。自分ではメチャクチャ大きい幅やのに」と、横田選手と違って一二三選手は違和感だらけの様子。ウエートルームから出てきた時はもう外が真っ暗だったのですが、そこで自分の足を使って歩幅の説明をしてくれます。
これまでのスタンスだと「広すぎて回転できない。上体が前へ出て、自分から迎えにいってしまって回れない。それを足幅を狭くして、右腰で回す。足で回そうとしたらダメ」だそうで「難しい…」とつぶやいています。ゴルフの練習だと、両足を閉じた状態でクラブを振ったら腰の回る感覚がわかりやすかったのはあります。って…プロ野球のバッティングと一緒にしちゃいけませんね。失礼しました。
この日の特打でも、ずっとスタンス幅を意識していた?「していたつもりが広くて。途中からやり始めました」。やっぱり狭いと物足りない?「力が入りきらない感じがするんですよね。結構ガッと力を入れて打ちたいほうなので、物足りなさはある」。確かに大きく開くと力を入れやすいし、安定感があるんでしょう。「その感覚を早く自分のものにするため練習するしかない」とのこと。
「練習でバンバン飛ばしても実戦で打てないとダメなんで、物足りなさは我慢してやります。自分の中でいろいろ見つけながらやっていきたい」と話しています。やるしかない?「はい。そうです」。短く答えた一二三選手。育成契約へ移行するとの情報が既に伝わっていて、でも何だかとても明るく感じました。久しぶりに、お腹の底から笑うのを見た気がします。