日本一不気味で、日本一芸術的な蛾と言えば?春の3大蛾の一角を占めるイボタガ
日本一番見事なデザインの蛾と言えば、真っ先に思い浮かぶのがイボタガだ。あまりにも凝ったデザイン、茶色の濃淡だけの色彩は、地獄の使者のようでもあり、不気味さの点でも日本一かもしれない。
しかし、その複雑な模様を画像加工ソフトでカラー化してみると、すごいことになる。突如として前衛作家の芸術作品が出来上がってしまうのだ。自然が作り出したとはとても思えないその芸術性は、そんじょそこらの蝶では、とても及びもつかない。
このイボタガは、虫好きの間ではかなり人気があり、しばしば「春の3大蛾」の一つに挙げられている。都心近くにも結構生息しており、すごく珍しい虫ではないが、出現するタイミングが、まだ少し肌寒い春の夜なので、虫好き以外の人々が目にする機会は少ないかもしれない。
イボタガは英語ではアウル・モス(フクロウ蛾)とも呼ばれる。翅を広げた時に中央部分の模様がフクロウの顔のように見えるからだ。肉食のフクロウに似たその姿には、天敵を威嚇する効果があるのかもしれない。
イボタガという日本語名も、若干気味悪さがあるが、その名はイボイボのような目玉模様とは無関係で、幼虫の食樹であるイボタに由来している。しかし、このイボタの木の名前の由来は、イボタに付くイボタロウムシという昆虫が出す蝋(ろう)物質が、疣(いぼ)を取る薬として使われたこと(イボトリの語が変化してイボタになった)と言われており、イボタガとイボの間に全く関連性がないというわけでもない。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)