ビッグデータが示す温暖化「この1年、地球は最も暖かくなった」
11月末からフランスで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)を前に、リアルタイムのビッグデータをもとに地球温暖化を観測する欧州連合(EU)のプログラム「Copernicus(コパニカス)」は10日、この10月までの1年間、地球は最も暖かくなったと警鐘を鳴らした。
コパニカスによると、昨年11月から今年10月にかけて世界の平均気温は1981~2010年の平均気温に比べ、摂氏0.4度近く上昇した。上のグラフィックを見ると、グリーンランドとカナダ東部、南極大陸を除いて暖かくなっていることが分かる。
今年10月、世界の気温は1981~2010年の10月の平均気温に比べて、摂氏0.6度以上も暖かくなっていた。これまで10月の最高平均気温を記録した05年より、今年は摂氏0.1度以上も暖かい。
コパニカス大気モニタリング・サービスのプエシュ所長はこう語る。「過去12カ月間のデータはパリで行われる温暖化対策の協議に強いシグナルを送るでしょう。しかし温室効果ガスを削減しても、大気や気候は変動していくことを無視することはできません」
コパニカスは約70個の観測衛星ネットワークや陸や海に設置されたセンサーからリアルタイムのデータを収集して分析している。アプリケーションを通じて誰でもビッグデータを利用できるようにするのが狙いだ。どんなことが可能になるかと言えば――。
太陽光発電パネルや水力発電ダム、風力発電所をどこに設置すれば最も効率的に発電でき、利益を上げられるかを判断できる。エネルギー・インフラへの風や波、砂ぼこりの影響を制御するためリスクを評価できる。
電力供給を調整したり、高圧線配電網の計画を立てたりするため再生可能エネルギーの可能性を予測できる。不動産やインフラ、サプライチェーンを守るため、干ばつや洪水が起きるリスクが最も高い地域を事前に特定できる。
氷河や海氷の融解による海抜ゼロメートル地帯などへの影響を政策決定者が評価できるようになる。農業などへの戦略的な水供給を計画することが可能になる。最も大気がきれいなルートを使って通勤できる。マイホームを選ぶとき、将来、洪水に見舞われるリスクを予測できる。
「コパニカスに集積されたデータ量は6ペタバイトで、百科事典に置き換えると月まで積み上がる高さになります」とプエシュ所長。温暖化懐疑派の主張を完全にシャットアウトできる圧倒的なデータ量だ。
COP21の閣僚級準備会合が8~10日、パリで開かれ、日米欧や中国など約60カ国の閣僚らが参加した。COP21は2020年以降の温暖化対策(ポスト京都議定書)の合意期限とされ、オバマ米大統領や中国の習近平国家主席、プーチン露大統領ら首脳100人以上が出席する。
オバマ大統領はフェイスブックにビデオメッセージを投稿し、「この美しい地球を次の世代に手渡そう。みんなの力が必要だ」と訴えている。コペンハーゲンで09年に開かれたCOP15にはオバマ大統領や中国の温家宝首相(当時)らが出席したが、具体的な温室効果ガスの削減目標を定めることはできなかった。
米国と中国、それにEU、新興国、途上国がそれぞれの思惑を描きながら、合意を目指している。
(おわり)