まるでSF映画や海外ドラマのような、TM NETWORKによる最新コンサート!
トリッキーに稼働する、映画『2001年宇宙の旅』のモノリスのような立方体LEDモニターの存在
1983年結成、1984年にデビューしたTM NETWORKによる30周年を記念するコンサートツアー『TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30』が、12月10日(水)東京・国際フォーラム ホールAでおこなわれた。当日は、ツアー途中ながらもGYAO! MUSIC LIVEにてストリーミング生配信され、多くのFANKS(TMファンのこと)が最新型TM NETWORKの目撃者となった。
特筆すべきは、30周年といってもベスト選曲の同窓会ではなく、今回のツアーは2012年の日本武道館公演『TM NETWORK CONCERT-Incubation Period-』からパラレルに続くシリーズであり、デビュー時よりSF的世界観を提唱してきたTMらしいコンセプチュアルなテーマで展開していく。
〜簡単なあらすじ〜:東西冷戦時代、スマホもSNSもない時代から始まった、地球を救う潜伏者の物語。あの頃、僕らはまだ、“クモの巣を手に入れてなかった・・・”。果たして潜伏者にかせられたミッションとは??? IPより託された黒いバトンの存在とは???
ステージ上空、ワイヤーによってトリッキーに稼働する、映画『2001年宇宙の旅』のモノリスのような立方体LEDモニターを3台活用し、背景にはステージを埋めつくす巨大LEDとともに、完全オリジナル映像によってストーリーを紡ぎだす、まるで海外ドラマのようであり、SF映画のような世界観。まぎれもなくTM NETWORKらしさ感じさせる、シアトリカルな極上のエンタテインメント、それが『TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30』だ。
『CAROL』の続編!? 世界観あるロックショーのスタート!
オープニングで湖畔の映像とともに流れてきたのは「SEVEN DAYS WAR」のインスト&コーラス。映画のオープニングのような荘厳な雰囲気に会場が包まれていく。
まるでテーマパークの案内役のように登場したのはキャロル・ミュー・ ダグラス。そう、彼女はTM NETWORKが1988年にリリースし100万枚をセールスした名作アルバム『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』で描かれた主人公だ。当時ティーンエイジャーであった彼女が30代後半〜40代な姿で登場する、まさにタイムマシンな驚き。
実は、今回のツアーでは公演を重ねるごとに、演出やキャロル・ミュー・ ダグラスのメッセージ、演奏などが、メンバーやスタッフの間で議論され、改善される終わりなきこだわりがみられた。10月29日(水)初日の横須賀公演での展開から回を重ねるごとに進化し、11月12日(水)大宮公演でほぼ完成系に到達しながらも、東京・国際フォーラム公演にて、さらに音へのこだわりをアップデート。
セットリストにも驚かされた。最新アルバム『QUIT30』を軸に繰り広げられる、人類の歴史、示唆を伝える歌や歌詞における内容の濃さはもちろん、ヒット曲である「WILD HEAVEN」、「TIME TO COUNT DOWN」、「THE POINT OF LOVERS' NIGHT」など、意外にもTMN期(90年代、TM NETWORKはTMNにリニューアルしていた)の選曲がファン心を揺さぶってくれる。しかし、アレンジの変化はもちろん、映像や照明とのシンクロによって、物語のページを進める機能として輝く楽曲たちは、かつての感動をさらに更新してくれた。ハードロックと最新ダンスミュージックの融合。希代のヴォーカリスト宇都宮隆が、マイクスタンドを使ったパフォーマンスや、派手なアクションによってオーディエンスの感情をさらにアップリフトしていく。のびやかに響き渡る歌声はもちろん、やはりウツの表現力の高さにはいつも魅了されてしまう。
「君がいてよかった」では、中盤にトリックスターである木根尚登が、アコギ片手のアカペラ・ソロとして、レア曲「Looking At You」を歌ったことも見所だ(前日9日は「月はピアノに誘われて」)。続いて、エレキギターを持ち直し、KORGのショルダーキーボードで登場した小室哲哉とともにギターソロ・バトルを繰り広げるアクションも。途中には、映画『ぼくらの七日間戦争』の挿入歌「GIRLFRIEND」のフレーズまでとびだした。まさに、曲名にかけて、“木根がいてよかった”というメッセージが具現化されていく。「STILL LOVE HER」での間奏時、3人が一カ所に集まり、木根がサビフレーズをハーモニカで奏でる瞬間にカタルシスは最高潮に。多様性を体現するステージングだ。
もちろん独創性あふれるリーダー、小室哲哉のパフォーマンスも素晴らしかった。いつもよりアクションも激しく、コーラスをとるパートも多かった。さらにAvicii以降を彷彿とさせる最旬シンセリフがとてつもない破壊力を持つ最新型「Get Wild 2014」のダンサブルなフレッシュさにやられた。あのEDMの本質をとらえたリフだけでも朝まで踊れそうな、そんな永遠性を持つ奇跡のメロディだ。そして、TMのメッセージ性のコアである「Self Control (方舟に曳かれて)」でのオーディエンス大合唱な盛り上がりへ。最新のテクノロジーとともに作品を進化させる、チャレンジし続けるアプローチが目の前で繰り広げられていく。
謎めいた演出、映像もサウンドも情報量が多い
TMらしさ全開に、踊れるダンサブルな魅力や、コンセプチュアルなプログレという手法のこだわり。そこで注目したいのが、ステージ上には3人しかいないが、とてもライブ感溢れる演奏が展開されていたことの不思議。そんなトリックは、終盤「LOUD」によって明かされていく。LEDスクリーンに、ギターとドラムのソロパートを演奏する勇姿が映しだされたのだ。なんと、ステージ裏にギタリスト松尾和博とドラマーRuyが、本編中ずっと生演奏していたという驚きの種明かしへ。
映画『インターステラー』のごとくSF映画のようであり、ミステリーのように綿密にストーリーテリングされた本編。映像もサウンドも情報量が多いが、欠けたピースを感じる考えるスキマが残された物語。もしかしたら謎解きの答えは、受け取る人それぞれの胸の内にあるのかもしれない。
クロスメディアな楽しみ方を提供してくれる“金色の夢”
本公演はもちろん、最新作『QUIT30』ハイレゾ配信、小室哲哉著 小説『CAROLの意味』を読み解くこと、聴き解くこと、つなげあわせて、ネクストを掴みとること。そんなクロスメディアな楽しみ方を提供してくれる奥深さ。30年間ゆるがない独特なる世界観に驚かされる。小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登の3人から発せられるクリエイション、コンセントレイション、イマジネイション。まさに、音楽によって人々を目覚めさせるチカラという存在だ。
今回のツアーは、国際フォーラム公演がラストではない。年明け愛知県芸術劇場、福島県文化センターホールで2本を残し、本編の追加公演『TM NETWORK 30th 1984〜 QUIT30 HUGE DATA』が、2月にさいたまスーパーアリーナと神戸ワールド記念ホールで開催されることも発表されている。気になるのは、アルバム『QUIT30』の「Mist」の歌詞にも登場する、副題“HUGE DATA”だ。その意味とは? さらに、年末にはTM NETWORKとしては初のロックフェスへの出演となる12月30日『COUNTDOWN JAPAN 14/15』。メインステージで、ONE OK ROCKと名前が並んで登場する、まさに日本音楽史のミッシングリンクを埋めるような事件。どんなスペシャルな感動を与えてくれるかが楽しみだ。
ロゴにあった電源ボタンは緑から赤へと変わっていた
ステージ本編ラスト、LEDに映し出されたTM NETWORKロゴにあった電源ボタンは緑から赤へと変わっていた。しかし、潜伏者である3人は世界各地へと散っていく。宇都宮はミュージシャン姿。バトンを受け取ったスーツ姿の木根は、キャロル・ミュー・ ダグラスが乗る車のドライバーでもあった。車を停め、PCを開くと「Next Mission is commanded.」の文字。そして、アジアのマーケットを駆け抜ける小室の姿。BGMは謎めいたエンディングにふさわしき疾走感溢れる「Alive (TK Mix)」だった。
最新作『QUIT30』の“QUIT”とは再起動の意味を持つという。地球を救う潜伏者=TM NETWORKは、果たして何処へ向かっていこうとしているのだろうか? 日本を代表する究極のフィクション音楽ユニット、TM NETWORKのネクストに期待をしたい。
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30
2014.12.10 ver. setlist
Opening. SEVEN DAYS WAR
01. Birth
02. WILD HEAVEN
03. TIME TO COUNT DOWN
04. The Beginning Of The End~Mist
05. Alive
06. 君がいてよかった〜Looking At You〜君がいてよかった
07. Always be there
08. STILL LOVE HER
09. Glow
10. I am
11. Get Wild 2014
12. Loop Of The Life~Entrance Of The Earth
13. THE POINT OF LOVERS' NIGHT
14. Self Control
15. LOUD
16. The Beginning Of The End II~The Beginning Of The End III
Ending. Alive(TK Mix)