Yahoo!ニュース

今日からディズニーチケット値上げ 強気の価格設定、支えるのは「熱烈ファン」

山口有次桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授
東京ディズニーリゾートは10月1日発売分からチケット価格改定(写真:SunnySide/イメージマート)

東京ディズニーリゾートのチケット価格改定

 首都圏の新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が9月30日までの期限で全面解除された。東京ディズニーリゾート(TDR)はこの間、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーそれぞれの入園者数数5千人制限と時短営業を強いられてきた。解除後1カ月間は最大1万人となり、問題なければその後さらに緩和される見込みである。

 これにあわせてTDRは、2021年10月1日販売分から、チケット価格を改定する。既に2021年3月から変動価格制が導入されており、現行の1デーパスポート大人料金(税込)は、時期や曜日等により8200円と8700円の2段階で価格変動している。10月1日販売分からは、7900円、8400円、8900円、9400円の4段階へ変更になる。

TDRのチケット価格変動の考え方

 現在公開されている10月から2022年1月までの価格変動を見ると(図1)、土日と祝日、クリスマスと年末年始は最も高い価格設定となっている。そして、1月には価格帯が一段階下がる。特に日曜日の価格設定が土曜日より抑えられていること、平日は水曜日と木曜日が最も安く設定されていることがわかる。

図1 TDRの1デーパスポート大人料金(税込)の価格変動(OLC発表資料より作成、単位:円、横軸は各月)
図1 TDRの1デーパスポート大人料金(税込)の価格変動(OLC発表資料より作成、単位:円、横軸は各月)

TDRはUSJより強気の価格設定

 このTDRの価格設定を、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)と比べてみよう(図2)。2020年度まで長らく、USJの方がTDRより値段の高い、強気の価格設定が続いてきたが、今回はTDRがUSJより高い価格設定となっている。特にUSJにおいて、9000円台の最も高い価格設定がこの期間に見られず、最安値も一段階低く設定されている。つまり、需要予測においてUSJがやや抑え気味で見ているのに対し、TDRは強気に見ていることがわかる。確かに、これまで入園者数制限や時短営業が強いられ、また移動の自粛も求められ、熱烈なファンにとって、コロナ禍前までのように気軽にパークに行ける状況にはなかった。熱烈なファンはパークで楽しむことに飢えている。

図2 TDRとUSJの1デーパスポート大人料金の比較(OLC発表資料とUSJ価格表より作成、USJの価格が明らかな11月末までを表示、単位:円、横軸は各月の日・曜日)
図2 TDRとUSJの1デーパスポート大人料金の比較(OLC発表資料とUSJ価格表より作成、USJの価格が明らかな11月末までを表示、単位:円、横軸は各月の日・曜日)

特別チケット「ハロウィーンモーニング・パスポート」も大人気

 熱烈なファンに大人気のディズニー・ハロウィーン、通称“Dハロ”の期間中、いつでも全身をフルに仮装した状態で入園することはできないが、2019年までは全身仮装を楽しめる日が設定されていた。自分でオリジナル衣装を製作し、パーク内で披露しあう楽しみ方も定着している。一方、衣装に着替えるためにトイレやコインロッカーを利用するケースが多く見られ、運営側も対応に苦慮してきた。2020年はコロナ禍でハロウィーンイベントは中止となった。

 今年(9月15日~10月末まで)は、新たな「ハロウィーンモーニング・パスポート」を購入すれば、期間限定(10月25日~29日)でフル仮装のまま東京ディズニーランドで楽しめるようになった(ちなみに、東京ディズニーシーは全身仮装で入園することはできず、特別なパスポートの販売もない)。大人13,000円と高価であるが、熱烈なファンにとって、全身仮装できる機会が復活したことは大変喜ばしいと映るだろう。通常のパーク開園時間前の8時から10時に、このパスポート購入者のみ入園することができ、この時間帯以降もパークで過ごすことができる。この時に入園しなかったら、フル仮装で入園することはできない。また、この時間限定コンテンツとして、8時45分から約25分間、「ミッキーのグリーティングパレード・ウィズ・ヴィランズ」を実施する。記念品のプレゼントもある。既に9月22日から発売が開始され、早々に予定販売数を達成しているようだ。

障がい者向けチケットの販売再開

 コロナ禍で大幅な入園者数制限や時短営業が続き、シニアパスポート、スターライトパスポート、アフター6パスポート、複数デーパスポート、年間パスポートなどの販売は休止中である。そんな中、障がい者向けの1デーパスポート販売が、10月1日より再開される。障がい者からもコロナ禍でもパークを楽しみたいという熱烈な要望があったものと推察する。

 緊急事態宣言が解除されても、各パーク1万人の入園者数制限のあるTDRにおいて、チケット価格改定や特別チケット販売は、熱烈なファンの需要が支えるだろう。

桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授

早稲田大学大学院博士課程修了。博士(工学)。2006年より桜美林大学ビジネスマネジメント学群助教授、准教授を経て、2009年より現職。専門分野は、レジャー産業、レジャー施設、レジャー活動。1990年から『レジャー白書』の執筆に携わる。近年はアジア諸国のレジャー活動状況調査を実施し発表。単著『新 ディズニーランドの空間科学 夢と魔法の王国のつくり方』『観光・レジャー施設の集客戦略 利用者行動からみた“人を呼ぶ魅力的な空間づくり”』、共著『「おもてなし」を考える 余暇学と観光学による多面的検討』『観光経営学』『観光学全集 観光行動論』等。レジャー施設に関する論文多数。

山口有次の最近の記事