小林麻央さんの浪漫飛行とキャンサー・ジャーニー
がんサバイバーの揺れ動く心
4月13日、乳がんで闘病中の小林麻央さんが「浪漫飛行」と題して、揺れ動く自らの心情をブログに綴った。
キャンサー・ジャーニー
米国のがん患者は、自分たちの「がん体験」をしばしば「キャンサー・ジャーニー(がんの旅路)」と表現する。 ひょっとして、がんかも知れないと思ったとき、医師に診断を告げられた時、治療室に向かう時、自分のベット上で目覚めることができた時、家族の心配そうな顔を見た時、体調が思わしくないのに、外にはいつもと変らない風景が広がっているのに気づいた時と、その都度、サバイバー達の心は揺れ動く。
無事に治療が終わり、体力を回復していく過程でも、再発に対する恐れは長い間、頭の片隅に残る。期待通りに治療が進まずに、不安に押しつぶされそうになることもある。それでいて、ふと、笑っている自分に気づいたりもする。
がんサバイバー達は、苦しみ、楽しみ、出会い、喜び、落胆などを抱えながら、日々、山あり谷ありのキャンサー・ジャーニーへと歩みを進めていく。
立ち上がる力
常に心に葛藤を抱えたサバイバーにとっては、家族の支えだけでなく、信頼し、安心して話しができる医師がいることが心の大きな安らぎになる。しかし現実には、米国でも特に進行した治癒不能ながんについての対話は、医師、患者の双方にとって簡単なことではない。
最近発表された研究結果によれば、多くの末期がん患者が自分自身の予後(病気の予想される経過や結果)を十分に理解していない。
調査に参加した178人の末期患者のうち、主治医と過去および最近、予後について話し合ったと答えた患者は13%にあたる24人だけ。18人は最近だけ、68人は過去に話したことがあるだけと答え、残りの68人(38%)は、予後に関して医師と話し合う機会を持ったことは一度もないと答えている。
しかしワシントン大学医学部腫瘍学教授のアンソニー・バック医師は、「多くの人は困難な事態から立ち上がる力を持っていて、闘う覚悟ができるとその力を発揮します。そのためにも、医師と患者は意思疎通が必要です」と言う。
米国国立癌研究所(NCI)では、予後に関する医師と患者のコミュニケーションをテーマとする動画シリーズを公開しており、海外のがん情報を発信するJAMTが日本語字幕をつけている。
動画の中には、末期がんを患っても、安心して話せる医師に出会い、予後を受け止めながら今日を生き続ける患者が登場する。はじめて予後について知らされた時に怒りや失望を感じた患者も、信頼できる医師と対話をしながら、どのような選択肢があるのかを踏まえ、それぞれの目標に向けて生きていく。
NCIの医師は、患者の価値観や優先度は変化、発展することもあるので、医師が傾聴し、患者の価値観に寄り添って対話を続けることが重要だと言う。
今日を生きる
小林麻央さんも、自らの魂の変化をこう続ける。
でも、
いつからか、
私はここまでになる必要があったんだ
と思うようになりました。
そう思えるときの穏やかさは
魂が納得しているのだと感じます。
魂って自分が思っているより
ずっとずっと自分にロマンを
もっているのでしょう。
だから しんどくて寝ているときは
小さい小さい世界に閉じ込められている
みたいに感じますが、
実は逆で、
魂は壮大な浪漫飛行中なのでしょうね。
(前出の小林麻央オフィシャルブログ KOKORO.より)
どんな状態にあっても、小林麻央さんのように自由な魂とともに、今日を生き続けるサバイバー達が世界中にいる。医療従事者は忙しい。でも、どうか、患者一人ひとりに寄り添い、サバイバー達が精一杯生きていくための後押しをしてほしい。
麻央さん、体がしんどいときも、魂の浪漫飛行をしながら、旅を続けてください。そして、がんサバイバーの皆さん、私達もそれぞれの旅を続けていきましょう。このNCI作製の動画も、ヒントをくれます。