「努力はいつか必ず報われる」約7割の人が肯定的
世の中はすべて努力が報われるようにはできておらず、現実にはその努力が空振りに終わることも少なくない。それでも人は「努力はいつか報われる」と信じているのだろうか。統計数理研究所による定点観測的調査「日本人の国民性調査」(※)の結果を基に、その実情を確認する。
今項目では「努力は報われるか」と題し、回答者自身の考えとして「まじめに努力していれば、いつかは必ず報われると思う」「いくら努力しても、まったく報われないことが多いと思う」どちらの意見に近いかを尋ねている。次のグラフはそのうち「努力はいつか必ず報われる」と答えた人の割合。今調査項目は1998年と2013年の2回、調査対象として挙げられており、その双方の結果について併記する。
直近調査結果では全体で72%の人が「努力はいつか必ず報われる」と回答している。ちなみに「報われないことの方が多い」は26%。その他や無回答などは合わせて3%。
年齢階層別に見ると、若年層がやや低めで30代は6割台にとどまっている。中年層に至っても伸び悩み、60歳以上でようやく年齢階層別の最大値75%に達する。これから努力を重ねて目的に向かってまい進すべき若年層よりも、歳を経た高齢層の方が「夢はきっと叶う、努力は報われる」と考えている人が多いのは誠に皮肉であり、同時に現代社会の問題点を投影しているかのようでもある。
そして経年変化だが、1998年では全体で79%。興味深いことに、2013年時点でもっとも高い値を示した60代世代に一部が該当する50代において、最高値を示している。奇しくもこの世代はいわゆる「団塊の世代」であり、実際に自らの努力が体現化する事例が多く、その裏付けがあるからこそ多くの人が「努力は報われる」と考えている結果と見れば、道理は通る。見方を変えれば2013年時点の20~30代の若年層世代は、団塊世代と比べればその希望への思いが減少しているという事実にも突き当たるのだが。
なお回答者の学歴別に見た「努力は報われる」回答値は次の通り。
1998年当時は高卒までの方が「努力は報われる」とする考え方を持つ人が多かった。ところが2013年になると大きく状況は変わり、高卒までは10%ポイント以上下げ、大卒はわずかながら上昇している。学歴による努力の成果の体現率が上がるとともに、高卒までの人における努力が報われない状況が増加していることが推測できる。学歴がすべてではないとはいえ、当事者の考えの変化を見るに、時代の変容を改めて思い知らされる次第ではある。
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※日本人の国民性調査
統計数理研究所が1953年以降5年ごとに実施しているもので、各回ごとに微妙に細部は異なるものの、基本的に20歳以上の男女個人を対象にした標本調査。層化多段無作為抽出法で2254人から6400人の標本を抽出し、個別面接聴取法で実施している。
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