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お墓が足りない 多死時代のお墓はどうあるべきか

斉藤徹超高齢未来観測所
死んだ後の場所を確保するのも大変な時代(ペイレスイメージズ/アフロ)

お墓が足りない!?

 2008年を人口のピークとして日本の人口は減少局面に転換しました。人口減少とは、すなわち生まれる人間よりも、死んでいく人数が多いことを意味します。

図1 出生数・死亡数の予測
図1 出生数・死亡数の予測

 平成28年の出生数98万1千人に対して死亡者数は129万6千人。死亡者数は、今後もますます増えると予測されており、2035年の出生数78万人に対して、死亡者数は36万増の165万9千人となります。160万人といえば福岡市や神戸市の人口と同等です。1年でこれだけの人が亡くなっていくのが日本の未来なのです。(「社会保障人口問題研究所」推計より)

 死者数の増加に伴い、これからは埋葬場所を巡る問題が大きく浮上してくることでしょう。とりわけ、現在多くの高齢者が居住する東京を中心とした大都市圏およびその周辺部では、きちんとした埋葬場所が確保できるのかどうかも甚だ疑問です。

 すでにこのような傾向は現れつつあります。公営墓地である都立霊園では、用地取得が困難であることから、今後は個人で墓石を管理する一般墓地は増設せず、合葬墓地で対応方針であるとの記事が出ておりました。(8月12日付「東京新聞」)

 東京都の2008年公表データによると墓地需要は年2万基程度と推計されますが、都内での供給は民間と公営分を合わせても年6千基程度だそうで、現在はさらにギャップは広がっているはずです。このままでいくと圧倒的な墓不足が予想されるのです。(東京都建設局「東京都内墓所受給の現状」)

埋葬の方法

 人が亡くなり葬送されるのには、どのような方法があるのでしょうか。

「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」では、死者を葬る方法として、「土葬」、「火葬」、「水葬」の3つを定めています。但し、「土葬」は禁止の条例を定める自治体が殆どで、「水葬」については船員法によって航海中の船長のみの特例として認められているため、日本において実質認められているのは「火葬」のみとなります。(宗教上の理由として土葬を認めているところもあります)

 葬られた遺骨を納める場所としては、「墓地」:墳墓(遺骨を埋蔵する施設)を設けるために、墓地として都道府県知事の許可を受けた区域、「納骨堂」:他人の委託を受けて遺骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設の2つがあるほか、最近では「手元供養」として、墓地や納骨堂に納めず、ずっと自宅で供養する人も増えてきています。自宅の庭などに埋葬することは墓埋法によって禁じられていますが、自宅での保管・供養は法律で禁じられているものではありません。そのためのオシャレな骨壺(たとえばこちら「骨壺.com」https://kotsutubo.com/)も最近は注目を集めているようです。最近では散骨も次第に市民権を得てきているようです。

墓地数は減少している

 大きな墓地不足が将来的に懸念される中で、現状の供給状況はどうなっているでしょうか。図2,3は平成20年度から27年度の全国墓地数および納骨堂数の推移をみたものです。(厚生労働省「衛生行政報告例」より)

図2 全国墓地数の推移
図2 全国墓地数の推移

 

図3 全国納骨堂数の推移
図3 全国納骨堂数の推移

 これを見ると墓地の数は増加しているどころか、むしろ減少していることが理解できます。平成20年に8万8千あった墓地数は27年には8万6千と約2千も減少しています。墓地の運営主体別に見ても、地方公共団体、民間法人、宗教法人、いずれもその数は減っています。

 墓地数減少の明確な理由は不明です。もしかすると宗教法人では、無住寺院数の増加と関係があるかもしれません。その数は2万を上回るのではないかという説もあります。墓地を拡張したくとも土地がない中で檀家も減少し、寺院経営は大きな曲がり角に立っています。

 一方で、近年その数が増加しているのは納骨堂です。平成20年度1万1600から27年度は1万1900と約300増加しています。図4は増加数の多い県を表にしたものです。寒冷地という地域性ゆえに元々納骨堂が多い北海道を除くと、東京、大阪、兵庫、京都などの都市部で納骨堂数が増えていることが理解できます。

図4 主要県別にみた納骨堂数
図4 主要県別にみた納骨堂数

都市部は納骨堂が主流の時代に

 時代の変遷とともに近年の納骨堂のタイプにも変化が生じてきています。初期のタイプは、霊園や墓地の片隅で一時的に遺骨を預かるだけの施設でしたが、その後長期的に弔うための施設として、棚式・ロッカー式、次いで仏壇式のタイプの納骨堂が登場してきました。

 近年では、より利便性と簡便性を追求した納骨堂が登場してきています。最寄りの駅から近く、冷暖房完備の室内で、機械式による自動搬送で遺骨が礼拝堂に運ばれてくる室内墓所と呼ばれるタイプのもので、自分専用の墓地、墓石を購入するよりも比較的安価な価格もあり、人気を集めているようです。

 先祖代々の墓を守るといった「イエ」意識の希薄化、少子化傾向が続く中、その墓すらも守ることの出来ない世帯が増えていく中で、このような共同管理型の納骨堂はさらに人気を高めていくことでしょう。

(参考文献:「悩み解決!これからの「お墓」選び」柿田陸夫著(新日本出版社))

超高齢未来観測所

超高齢社会と未来研究をテーマに執筆、講演、リサーチなどの活動を行なう。元電通シニアプロジェクト代表、電通未来予測支援ラボファウンダー。国際長寿センター客員研究員、早稲田Life Redesign College(LRC)講師、宣伝会議講師。社会福祉士。著書に『超高齢社会の「困った」を減らす課題解決ビジネスの作り方』(翔泳社)『ショッピングモールの社会史』(彩流社)『超高齢社会マーケティング』(ダイヤモンド社)『団塊マーケティング』(電通)など多数。

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