「食べるものが何もない」北朝鮮の食糧難が末期症状
北朝鮮では現在、大々的に秋の収穫が行われている。同時に行われているのは、麦の種まきだ。北朝鮮の人々は前年の収穫が底をつく春先のポリッコゲ(春窮期)に、飢えに苦しめられるが、その救世主的役割をするのが、初夏に収穫が始まる麦だ。
しかし、その麦栽培に異変が起きている。
デイリーNK内部情報筋によると、昨年の小麦、大麦の種の価格は1キロ4400北朝鮮ウォン(約75円)、4200北朝鮮ウォン(約71円)だったが、今年は1万6000北朝鮮ウォン(約272円)、1万5500北朝鮮ウォン(約264円)と3倍以上になっている。
価格高騰の原因は、食糧難だ。
「深刻な食糧難に瀕し、食べるもののない人々は、農場から託された種を食べてしまい、種不足に繋がり、価格に影響を及ぼしている」(情報筋)
(参考記事:若い女性3人が中年女性を襲い…北朝鮮「飢餓犯罪」の残虐な現場)
また、麦そのものの不作も影響しているものと思われる。
穀倉地帯である黄海北道(ファンヘブクト)では去年、今年と深刻な食糧難に襲われ、2月からは野草を入れた粥を食べて生き延びる農民が急増。「来年もどうなるかわからない」と不安がっている。
道内の鳳山(ポンサン)郡の協同農場では、麦の種を里管理委員会(村役場)と農場の作業班が管理してきたが、一部では、盗難を恐れて、責任あるポストについている農民に預けるなどの措置を取っている。ところが、それを食べられてしまい、種が不足する事態となっているのだ。
鳳山、黄州(ファンジュ)などの農場では、仕方なく高騰した種を購入して、ようやく種まきを行う有様だ。そんな苦労をして麦を栽培、収穫したところで、平壌ビール工場やパン工場に安値で買い取られ、農民が手にするのはほんの僅か。収穫の盗難も相次ぎ、「これならば麦栽培などやらないほうがマシだ」との声も聞こえるという。