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初のA級昇級目指す近藤誠也七段(28)B級1組7回戦でレジェンド羽生善治九段(54)を降す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月17日。B級1組7回戦がおこなわれました。結果は以下の通りです。

糸谷 哲郎八段(6勝1敗)○-●山崎隆之八段(1勝5敗)

近藤 誠也七段(5勝1敗)○-●羽生善治九段(2勝5敗)

高見 泰地七段(4勝3敗)○-●大橋貴洸七段(3勝3敗)

佐藤 康光九段(4勝3敗)○-●大石直嗣七段(2勝4敗)

石井健太郎七段(3勝3敗)●-○広瀬章人九段(3勝4敗)

澤田 真吾七段(3勝3敗)○-●三浦弘行九段(2勝5敗)

斎藤慎太郎八段(4勝2敗)空き番

近藤七段、1敗キープで折り返し


 将棋界のレジェンド羽生九段は、名人位9期を含め、A級以上通算29期の実績を誇ります。B級1組に降級してからは、6勝6敗、7勝5敗という成績で、今期は3期目となります。

 近藤七段はC級1組で藤井聡太七段(現七冠)に競り勝って昇級。C級2組1期、C級1組2期、B級2組1期と、かなりのハイペースで順位戦を駆け上がっていきました。B級1組は今期が5期目。昨年は7勝5敗の次点で、いつA級に昇級してもおかしくはない若手実力者の一人です。

 羽生九段と近藤七段は本局以前に12回対戦し、羽生九段8勝、近藤七段4勝。8月25日に放映されたNHK杯2回戦では近藤七段が勝ち、直近では近藤七段が2連勝中でした。


 本局、先手の羽生九段は早めに7七に銀を上がり、矢倉に組みます。対して後手の近藤七段は速攻を含みにした立ち上がりから、現代風の4三銀型(新型雁木)に組みました。

 中段で歩がぶつかって戦いが始まったあと、羽生九段は銀を前に進めて攻めていきます。対して近藤七段は軽くかわしながら、機を見ての反撃をねらいました。

 勝敗不明のまま迎えた終盤戦。近藤七段がわずかにリードを広げていきます。104手目、タダで取られるところに王手で銀を捨てるのが華麗な決め手。羽生玉が受けなしに追い込まれる一方、近藤玉は詰みません。

 108手目、歩成の王手を見て、羽生九段は投了を告げました。

 近藤七段はこれで5勝1敗。糸谷八段(6勝1敗)とともに昇級争いのトップを走っています。近藤七段は次節、山崎八段(1勝5敗)と対戦します。

 羽生九段は2勝5敗。今期でのA級復帰は難しくなりました。次節では高見七段(4勝3敗)と対戦します。

 羽生九段と近藤七段の対戦成績は、羽生8勝、近藤5勝となりました。

 両者はこのあと、王将リーグでも対戦します。


将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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