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斎藤明日斗五段(26)棋王戦挑戦者決定二番勝負に進出! 敗者復活戦で近藤誠也七段(28)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2024年12月9日。東京・将棋会館において第50期棋王戦コナミグループ杯・挑戦者決定トーナメント敗者復活戦決勝▲近藤誠也七段(28歳)-△斎藤明日斗五段(26歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は18時23分に終局。結果は54手で斎藤五段が勝ちました。

 斎藤五段は敗者復活戦で澤田真吾七段(33歳)、近藤七段を連破。挑戦者決定二番勝負へと勝ち上がりました。

 挑決二番勝負は、勝者組・増田康宏八段(26歳)と敗者復活組・斎藤五段が対戦。斎藤五段は2連勝で藤井聡太棋王(22歳)への挑戦権を獲得できます。

斎藤五段、横歩取りの乱戦を制する


 準決勝の▲近藤七段-△斎藤五段戦は、近藤七段先手で横歩取りに。結果は91手で近藤七段の快勝でした。


 本局も近藤七段先手。戦型は互いに横歩を取り合う形となりました。

 25手目。近藤七段は相手の飛車にあて、自陣三段目に金を上がります。持ち時間4時間のうち、ここまでの消費時間はわずか15分。事前にこれで大丈夫という成算がなければ指せない手です。

 対してここまで1時間8分を使っていた斎藤五段。飛車を逃げずきっぱり、金桂2枚との交換に出ます。これも相当の決断がなければ指せない順。局面はいきなり乱戦となりました。

 近藤七段は斎藤陣に角を打ち込み、次いで中段に飛車を打って攻めます。対して斎藤五段は手堅く受け続け、形勢は斎藤五段よし。優勢から勝勢へとリードを広げていきました。

 最終盤、近藤七段は斎藤玉に詰めろをかけ続けて迫ります。対して斎藤五段は着実にしのいで、逃げ切りました。

 総手数は54手。短手数の乱戦を制して、斎藤五段が大きな一番を制しました。

 今年度、充実した成績の近藤七段。王将戦と棋王戦で挑戦権を争いましたが、いずれもあと少しで届きませんでした。

藤井棋王に挑戦するのは増田八段か? 斎藤五段か?


 かくして藤井棋王への挑戦権を争う長いトーナメントも、最終段階を迎えることになりました。増田八段、斎藤五段のどちらが勝ち上がっても、初のタイトル戦番勝負登場となります。

 増田八段の師匠は名棋士・森下卓九段です。森下九段は1994年度と96年度、棋王戦五番勝負で羽生善治棋王(現九段、永世棋王資格者)に挑戦。残念ながらその堅塁を抜くことはできませんでしたが、本棋戦に大きな足跡を残しました。

 師弟でタイトル戦に登場した例は、それほど多くはありません。幼い頃から大器と言われ続けた増田八段。ついに満を持しての大舞台登場となるでしょうか。

 斎藤五段の師匠は「令和の名伯楽」宮田利男八段です。斎藤五段の兄弟子・本田奎六段は2019年度、弟弟子の伊藤匠叡王は前期2023年度に、棋王戦五番勝負に登場しています。斎藤五段も続くことができるでしょうか。

 挑戦者決定戦二番勝負は勝者組を勝ち上がった側に1勝分のアドバンテージがあり、2局のうち1局でも勝てば挑戦権を獲得できます。

 現行の挑決二番勝負はこれまでに32回おこなわれ、勝者組が20回、敗者復活組が12回制しています。前期の伊藤七段(現叡王)も敗者復活からの挑決2連勝でした。

 増田八段と斎藤五段は過去に2回対戦し、互いに1勝ずつという成績が残されています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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