Jユースカップの風景。「一人サポーター」は「一人」ではなかった
たった一人でピッチに声を送るということ
2013年11月4日、Jユースカップ決勝トーナメント1回戦。予選リーグを抜けて晴れの舞台に臨んだ二つの新興ユースチーム、つまり栃木SCユースとガイナーレ鳥取U-18の2チームには、そんな「一人サポーター」がそれぞれに付いていた。
僕が初めて「一人サポーター」を目にしたのは、1999年8月の日本クラブユース(U-18)選手権だったと記憶している。一人で太鼓を叩き、選手の名前をコールし、チャントを歌う。角田誠、松本昂聡といった人材を擁していたとはいえ、当時は新興チームだった京都サンガユース(現・京都サンガU-18)を熱いサポートで支える姿を見て、「なんてヤツだ!」と瞠目したものだった。
一緒に語り合い、声援を送る共同作業の楽しさは容易に想像できる。他方、一人サポーターにそうした楽しみはあるまい。そこにあるのが、孤独感と、ある種の気恥ずかしさであることも、想像に難くない。だからこそ、およそ「サポーター」という立場に共感性を持つ者は、そんな彼らのことを強くリスペクトするわけだ。
ところが、である。
第1試合。優勝候補の清水エスパルスユースに挑む新興チーム・栃木SCユースの選手の背中を押そうと声を張り上げていた彼の声に、別の声が重なり始めた。試合開始を前にして突如あがった声量に驚いてもう一度カメラをそちらに向けると、そこにはちょっと違った光景があった。
なんと彼の後方には複数の新たな「応援団」の姿があったのだ。その様子からして、いわゆる「サポーター」ではあるまい。栃木SCユースのOB選手なのだろうか。一人孤独に声援を送る彼の存在を「粋」に感じて応援に加わったということなのかもしれない。何にせよ、彼の最高に嬉しそうな笑顔に、こちらが勝手に救われた。
不思議なもので、この流れは継続した。
第2試合はガイナーレ鳥取U-18と、横河武蔵野FCユースの一戦である。ここでも流れは継続しており、控え部員が熱い応援を繰り広げる横河に対し、鳥取はレプリカユニフォームを着て観に来ている人こそ他にもいるものの、声を出しているのは一人だけという状況。「またも一人サポーターか!」とカメラを向けたのだが、こちらは試合が始まったあとになって、変化があった。
なんと、こちらにもまた、「助っ人応援団」が参戦してきたのだ。
献身的に声を張り続ける彼の姿を観て「参戦したくなった」人がいたということなのだろう。応援は本来的に楽しいものであるし、試合に出ている選手を支えたいという気持ちさえあれば、誰にだって参戦する資格はある。
何にせよ、「チームを支えたい」と思ったのは、彼一人ではなかったのだ。