賃上げ実現のために必要なこととは
先日、イオンがここ2年で3度目となる大規模な値下げに踏み切るとの報道がありました。賃金の伸びが予想以下で消費者の節約志向が根強いことが理由とのことです。また、担当者の「我々は(日銀の)インフレ目標で値段を決めるわけではない」とのコメントも一部で波紋を呼んでいるようです。いずれにせよ、日銀の目標とする2%インフレの実現はますます難しくなりそうですね。
【参考リンク】コラム:イケアやイオン値下げ、波及なら一段と遠のく2%達成
企業に賃上げをためらわせているものとはなんでしょうか。そして、上記の記事でも指摘されている「来年の春闘までに実行すべき『何か』」とは何なのでしょうか。
企業に賃上げを促す2つのアプローチ
労使がどれくらい賃上げするかを決める際、最も参考にするのは「これから先の会社の経営状況」です。特に日本は終身雇用という超長期雇用が原則なので、10年20年先のリスクも織り込んだうえで賃金水準を決めないといけません。つまり、たとえ現在最高益を出しているような会社でも、労使ともに賃上げにはかなり慎重にならざるをえないということです。
そうした構造上の理由を踏まえた上で、ではどうやったら賃上げしてもらえるかというと、2つのアプローチが考えられます。
1.国の基礎体力を向上させ労使の将来の展望を明るくする
出生率を回復させたり、場合によっては移民を受け入れるなどして人口を増やす。あるいは大胆な規制緩和により経済活動を活発化させる。そうした地道な努力の積み重ねにより「これからも日本経済は成長を続け、我が社の売り上げも増え続けるだろう」と労使が判断すれば、総理に言われなくても自分たちでどんどん賃上げしてくれるでしょう。
ただし、これは1年2年でどうにかなる話ではなく、目に見える効果が出るまでには10年以上のスパンが必要でしょう。そこで、重要なのが2つめの処方箋です。
2.解雇規制を緩和し、賃上げしやすい環境を作る
労使ともに恐れているのは、固定費である賃金を上げ過ぎると後々経営状況を圧迫しかねないというリスクです。そこで、解雇や賃下げといった不利益変更をスムーズに行えるような規制緩和をすることで、将来的なリスクを過度に織り込むことなしに賃上げすることが可能となります。
アベノミクスが足踏みしているのは、正社員を保護する規制が強すぎて賃上げが頭打ちになっているためだというのが筆者の見方です。早期に規制緩和することで、アベノミクスの止まってしまった歯車を再び動かすことができるかもしれません。
個人でアベノミクスの“成果”を手にする方法
とはいえ、労働市場流動化もまだまだハードルは高く、来年の春闘までに(理論上は)実現できることではあっても、実現までには長い時間を要しそうです。そこまで待てないという人は、次善の策として、まずは個人で“デフレ脱却”することをおススメします。
以前書いたファーウェイのように、世の中には非・終身雇用型の給与体系の会社もあり、きちんと生産性に応じた賃金を払ってくれます。
世の中の正社員の皆さんが自分たちの賃金を削って将来に備えておいてくれるため、日本は今後も低失業率で安定した社会が続くはず。もちろん、物価も安く推移するでしょう。成果に応じた対価をきっちり受け取れている人間にとっては、とても暮らしやすい魅力的な社会と言えるでしょう。