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【猫の不思議】なぜ猫には前足で水を飲む子がいるのか? ニャンコの水飲み事情を獣医師が解説

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
「猫整体 キュベレイ@cybele_nakano」より

寒い時期が到来すると、オシッコに血が混じる、オシッコが出にくいなどのいわゆる下部尿路疾患になる猫が増えます。

猫は、犬に比べて水を飲まない子が多いです。そんな猫ですが、前足で水を飲む子もいます。今日は、猫の水飲みの不思議を獣医師が解説します。

前足で水をすくって飲む猫

「猫整体 キュベレイ@cybele_nakano」より

一般的な猫は、犬と違ってザラザラとした舌を持っています。その舌を上手に使って、ピチャピチャ舐めるように水を飲みます。

その一方で、上の動画のように猫のなかには、水の入った器に前足を浸し、すくうにして飲む子もいます。前足をストローのようにして飲み続けます。猫は水が苦手なはずなのに、なぜこのような行動をするのかを解説します。

なぜ猫のなかに、前足ですくって水を飲む子がいるのか?

日本にいる猫の祖先は約13万1,000年前に中東の砂漠などに生息していたリビアヤマネコであることが判明しています。

砂漠生まれの猫は本能で水や雨が苦手という習性を持っています。濡れた被毛は猫の気持ちを滅入らせ不快にさせます。身近な例だとシャンプーをするのが好きな猫は珍しいです。

被毛が濡れてしまうと、乾かすために毛繕いするのにも時間がかかります。猫は被毛の手入れに関してこだわりが強いです。元気な猫なら、いつも乾いた状態の被毛を保っています。

猫が前足で水を飲む理由は以下です。

イメージ写真
イメージ写真写真:イメージマート

1、砂漠の生活の名残

前足で水を飲む動作は、昔砂漠地帯にいた種によく見られるそうです。乾燥している地域では、いつでも水を飲めるわけではありません。

やっと見つけた水たまりが泥水であれば、舌で直接飲むと泥が入ります。そこで前足を浸し、それを舐めて水分補給すれば、泥が口の中に入ることが少なくなります。

2、ヒゲの感度

猫の口の周りのヒゲはとても敏感な触覚器官です。そのため水の入った器が深すぎたり小さすぎたりすると、猫は頭を下げて水を飲むときにヒゲが曲がります。ヒゲが曲がってしまう器を嫌う猫もいます。

3、器の深さの問題

猫の視覚は、動いているものはよくわかります。器に入る水は動いていないので、前足を使って水位の深さとの距離を確認することがあるそうです。そのうえ、猫が頭を下げて水を飲むと、まわりの環境がよく見えないので、猫は頭を下げて器の水を飲む際に不安になることがあります。

4、器の配置場所の問題

水の入った器が部屋の壁際や角に近いと猫は水を飲むために部屋側に背を向けることになり、背後を監視できない状況です。

そのような場合、猫は自身の安全を優先するため頭を下げて飲むのではなく、足を使用して器の水を飲むことがあります。

5、水遊びが好き

「水が嫌い、苦手」な猫が大部分です。しかし、イリオモテヤマネコなどの品種によっては水が好きな猫もいて、シャワーやお風呂が好きな子もいます。そのような猫は、遊び感覚で前足をつけて水を飲む場合もあります。

まとめ

イメージ写真
イメージ写真写真:イメージマート

犬のなかで、前足を使って水を飲む子を見たことがありません。

猫のなかでも少ないですが、動画のような動作をして水を飲む子がいます。猫には、流れている水が好きな子がいて、水道の蛇口から飲む子もいるのです。

寒い時期、猫はどうしても飲水量が減るので下部尿路疾患や腎臓病になりやすいです。このような猫の特性を知って、十分に飲水できるように、飼い主は工夫をしてあげてください。sippoの記事によりますと。猫はアミノ酸のヒスチジンと核酸のイノシン酸の成分がよくわかり、これらはマグロに多く含まれているそうです。そのため、マグロ味の水はよく飲んでくれるのです。

猫のなかには、器を変えたり、高さを変えたりしてあげると、飲水量が増える子もいます。飲水量は猫の健康にさせるためには、大切です。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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