香港の民主活動家にノーベル平和賞を与えないように 中国がノルウェーに警告
中国の王毅外相が8月末に北欧ノルウェーを公式訪問した。外相はイタリア、オランダ、フランス、ドイツの欧州5か国を訪れている。27日、首都オスロでは記者会見が開催された。
香港民主派がノーベル賞を受賞した場合のことを現地アフテンポステン紙の記者に聞かれ、王毅外相は「ノーベル平和賞を政治化し、中国の内政に関わる」ことに対して警告した。
このことは日本でも一部ニュースになっている。
ノルウェーのイーネ・エーリクセン・スールアイデ外務大臣(保守党)は、「中国の見解は周知の事実。ノルウェー政府とノルウェー・ノーベル委員会は互いに影響力を与えるような、依存している関係ではないことも周知の事実だ」とノルウェー公共放送NRKにコメントした。
記者会見の前日、ノルウェー首相官邸の前では、「中国では人権が守られていない」と抗議活動が行われた。現地警察によると参加者は100人ほどで、現地メディアにも報道された。
抗議の現場には与党である自由党のグランデ現党首、首相が党首である保守党の青年部、野党の国会議員の姿もあった。
自由党のグランデ現党首は近いうちに党首の座から退く予定。新党首となる見込みであるグーリ・メルビ教育・統合大臣は、2019年10月の時点で香港の人々を2020年のノーベル平和賞に推薦している。これは自由党の公式HPでも英語で公式に発表されている。
現在のソールバルグ首相が率いる政権は、中道右派ブロックの4政党の協力関係で成り立っている。その中でも香港の民主活動家たちを気にかける政治家が、自由党には特に多いという印象を私は受けている。
右派左派に関係なく、ノルウェーの国会議員が平和賞の候補者を推薦するのは毎年のことだ。
- ノルウェー公共放送NRK「中国外相、中国はノーベル平和賞が政治化されることを受け入れない」(ノルウェー語)
- アフテンポステン紙「中国外相が語る、もし香港の活動家が平和賞を受賞したら強く反発する」(ノルウェー語)
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ここからは私の見解だ。
ノルウェーはEU非加盟国だが、ロシアとの緊張関係もあり、人口530万人ほどの「小さな国」だ。他国との協力関係が国を支える重要なカギを握る。経済大国である中国に対しては「低姿勢」といっていいだろう。
2010年に服役中だった人権活動家の劉暁波(りゅう ぎょうは)氏にノルウェー・ノーベル委員会がノーベル平和賞を授与して以来、中国とノルウェーの外交は緊張状態となった。中国の内政に干渉しないことを条件に両国の関係は改善されたが、それ以来、もちろんノルウェー政府は中国に対して気をつかっている状態だ。
ノルウェー政府は「ノーベル委員会は独立機関であり、政府の影響を受けていない」としているが、中国に限らず、他国では必ずしも同じような解釈がされていない。
ノーベル委員会のメンバーはノルウェー国会により指名されている。私の目に映る委員会は、「メンバーを指名した各政党の思想をなんらかの形で反映している人々の集まり」だ。
香港民主派の逮捕が「ノーベル平和賞の選考になんらかの影響を与えるのでは」と誰かが考えるのは、自然なことだろう。事前に中国側が釘を刺したくなるのも、同じく自然だろう。
ノルウェーでは香港での騒動は日本ほど大きく報道されてはいない。日本では話題となった周庭氏のことも、顔も名前も知らないという人はノルウェーには圧倒的に多い印象を私は受けている。もちろん政治家やジャーナリストなどは把握しているだろうが、普段あまりアジア関連のニュースにアンテナを張っていない人は、逮捕された人の名前を聞いてもあまり分からないだろう。
中国の外相がノルウェーを訪問したのは2006年以降、初となる。王毅外相はオスロでの抗議活動を見ることなく、ノルウェーの首相と外務大臣によって丁寧に出迎えられたとも現地メディアは報じた。
ノーベル平和賞の発表は毎年10月にオスロにある委員会の建物で、授与式は12月にオスロ市庁舎で行われる。
平和賞のことを考える時は、自分が委員会メンバーになった立場で考えることを私はよくおすすめしている。委員会メンバーは理想的な完璧な人たちではなく、ひとりひとりが独自の考えを持つノルウェーで育った人の集まりだ。
10月の発表を控えて、ノーベル委員会が選考に頭を悩ませている時、中国の王毅外相が現地メディアを利用して発したメッセージには、どのような効果や狙いが含まれているだろうか。委員会側は気にするだろうか。気にしないだろうか。
想像は皆様にお任せしたい。
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Text: Asaki Abumi