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台風9号は上空の風で台湾へ向かい、台風5号は上空の風が弱くて小笠原近海で迷走

饒村曜気象予報士
気象衛星赤外画像(7月29日6時)

上空の風と台風の動き

台風は上空の風に流されて動きますが、地球の自転の影響により、北へ向かう性質も持っています。この北へ向かう性質は、風が強い台風ほど(発達している台風ほど)ほど大きくなります。

そのため、東風(偏東風)が吹いている低緯度では、台風は西へ流されながら次第に北上します。

そして、台風が上空の風が弱い場所にくると、台風は地球の自転の影響でゆっくり北へ向かいます。

さらに、上空で強い西風(偏西風)が吹いている中・高緯度に来ると台風は速い速度で北東みます(図1)。

図1 台風の移動
図1 台風の移動

偏東風と偏西風の境目である、台風が西進から東進に変える緯度は、夏になるにつれ高緯度となり、秋が進むにつれ低緯度になりますので、台風の月別平均進路は、図2のようになります。

図2 台風の平均進路
図2 台風の平均進路

台風9号と台風5号の動き

沖縄の南海上にある強い台風第9号が北西進して先島諸島に接近する見込みです。

また、強い台風第5号が強い勢力を維持したまま小笠原諸島に接近する見込みです(図3)。

図3 地上天気図(平成29年7月28日21時)
図3 地上天気図(平成29年7月28日21時)

上空約10kmの高層天気図では、強い西風が北海道付近にあり、台風9号のある沖縄の南海上の上空は東風であり、台風9号はこのまま台湾に向かうと思われます。

しかし、台風5号のある小笠原近海の上空は強い風が吹いていません(図4)。

また。台風5号の東側に低気圧があります。この低気圧は、上空に寒気を伴った寒冷低気圧で、地上天気図では現れていませんが、上空ほどはっきりした低気圧です。

寒冷低気圧と台風5号は、藤原の効果と呼ばれる相互作用を起こし、動きが複雑になる可能性もあります。

図4 上空約10kmの高層天気図(平成29年7月28日21時、気象庁作成図に加筆)
図4 上空約10kmの高層天気図(平成29年7月28日21時、気象庁作成図に加筆)

目が離せない台風5号の進路予想

台風5号の進路予想は複雑で、予報円も非常に大きくなっています(図5)。

しかし、それが今の台風進路予報の限界であり、「台風進路予報が難しいので最新情報でチェックが必要」という、利用者の重要な情報を含んでいます

小笠原諸島は29日昼前には、暴風域に入る見込みですが、長時間に及ぶ可能性があり、小笠原諸島では厳重な警戒が必要です(図6)。

図5 台風進路予想図(2017年7月29日5時)
図5 台風進路予想図(2017年7月29日5時)
図6 小笠原諸島の暴風に入る確率(2017年7月29日3時の予想)
図6 小笠原諸島の暴風に入る確率(2017年7月29日3時の予想)

また、台風5号は、いずれ北上してくる可能性がありますが、いつのタイミングで、どこに接近するのかは、非常に難しい予報です。

台風情報に注意を続ける一週間です。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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