北京で肺ペスト患者が発生 ペストとは?
中国で肺ペスト患者が発生したというニュースが報道されました。
現時点では患者は2名、内モンゴル自治区の出身で、現在は北京市内の病院で治療を受けているとのことです。
New York Timesの記事では、中国CDCは「感染拡大の可能性は極めて低い」と発言しているようで、現時点で流行が広がる恐れはなさそうです。
ペストとは
ペストはYersinia pestisという細菌による感染症で、ノミの吸血により感染する腺ペスト、感染者・げっ歯類から飛沫感染する肺ペスト、これらから進展するペスト敗血症に分類されます。肺ペストは感染性が高く、ヒト-ヒト感染をするので注意が必要です。
普段ペスト菌はノミとげっ歯類の間をサイクルしていますが、ときにノミやげっ歯類から人間に感染することがあります。
ペストというと日本では昔の病気に思われがちですが、2000年以降も世界中で症例が報告されており、特にマダガスカル、コンゴ民主共和国、ペルー、アメリカ合衆国では毎年発生報告があります。2017年にはマダガスカルの首都アンタナナリボを含めた都市部で肺ペスト患者のアウトブレイクがあり、2300人以上の感染者と200名を超える死者が出ました(致死率8.6%)。
歴史的にはこれまで世界で3回の大規模な流行があり、2回目の14世紀の中国から始まった大流行では世界中で8500万人もの死者が出たとされます。
日本では、感染症法の1類感染症に指定された1999年から現在まで、海外からの輸入例の報告はありませんが、明治から昭和初期には散発例の発生がありました。
通常は曝露してから1-7日の潜伏期間の後に高熱、頭痛、嘔吐等の症状が出現します。
肺ペストは腺ペストに比較して潜伏期が短く、急激に進行する呼吸困難、血痰等の呼吸器症状が急激に進行します。ペスト全体に対する割合は数%とされています。ただし2017年にマダガスカルのアウトブレイクでは、肺ペスト患者がより多くの割合で報告されています。
腺ペストはノミに刺された部位のリンパ節が腫れ、高熱や皮疹が出現します。ペストの80~90%を占めるといわれています。いずれも敗血症を起こし全身の出血斑、壊死が出現します。無治療では数日~1週間程度で致死的になります。ペスト全体の10%程度が敗血症に至るとされています。
ペストが国内で発生したら
現時点で中国の2例から国内に波及する可能性は低そうですが、万が一国内でペストが発生した場合は、特定感染症指定医療機関または第一種感染症指定医療機関という政府に指定された医療機関(各都道府県に1つ以上あります)で隔離され、しっかりと感染対策が行われた上で抗菌薬による治療が行われます。
ストレプトマイシンやゲンタマイシンといった国内にもある抗菌薬で治療を行います。
なお、日本全国の検疫所で定期的にげっ歯類のペスト菌の保菌調査が行われていますが、近年ペスト菌が見つかったことはありませんので、日本国内でペストに罹る恐れはありません。
参考: