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原作累計発行部数ついに大台の1億部突破「鬼滅の刃」熱はどこまで続くのか

小新井涼アニメウォッチャー
劇場ポップ(筆者撮影)

週刊少年ジャンプで連載されていた吾峠呼世晴氏の漫画「鬼滅の刃」の累計発行部数が、10月2日発売の最新22巻で1億部を突破することが発表されました。

ブームの火付け役となったアニメの放送終了からは1年、原作完結からも5ヶ月が経とうとしているにもかかわらず、未だに本作の人気は止まることを知らないようです。

来月の劇場版公開を前に、今更なる盛り上がりをみせている「鬼滅の刃」熱は、一体どこまで続いていくのでしょうか。

◆未だ冷めやらぬ作品熱

5月に迎えた原作の完結によって、一旦はそのブームも落ち着きを見せ始めるかと思いきや、実際にはご存知の通り、連載終了後も各媒体での特集や企業・メーカーとのコラボ、グッズの発売といった新しい展開が次々と発表され、本作は依然盛り上がりを見せ続けています。

定期的に発表される劇場版の最新情報もその都度話題になるなど、ブームを支えるファンの作品熱も、未だに高い状態で維持されているようです。

原作の累計発行部数の推移も、今年2月に4000万部、5月には6000万部、7月の8000万部を経て来月の1億部突破と、短期間のあいだに2000万部ずつの増加という驚異的な伸びが、今も続いています。

◆熱が維持されるポイント

前述の通り、アニメの放送終了からは1年、原作完結からも5ヶ月が経ち、現在は原作やアニメからの新たな供給は基本的に無い状態です。

そんな、普通なら盛り上がりも落ち着きかねない今の状況下でさえ、ファンが作品から離れず、こうしてブームが維持されているのには、上記の展開の他にも、原作が完結する前に、劇場版公開日が10月16日であると既に発表できていたことも大きかったと思います。

同じ待つでも、新しい展開がいつあるのか分からないまま待つのと、時期が分かっていて待つのとでは、長距離走で見えないゴールを目指しながら走っているのと、『とりあえずあの電信柱まで…』と決めて走っているのと同じくらい心持も違ってくるからです。

どんなに作品が好きでも、いつくるか分からない続編を待って見えないゴールを走り続けていては、疲れて離脱してしまう人や、追うことに飽きてしまう人だって、中には出てきてしまうでしょう。

その点『あと5ヶ月で劇場版が観られる』という具体的な目印があったことは、全ての展開の大本となる原作が完結した時に、一気に波が引いてしまうことを防ぎ、『とりあえずまずはあの電信柱まで…』と、劇場版公開まで作品熱を維持するモチベーションにもなったと思うのです。

(加えて4月の段階での劇場版公開日発表は、まだ「鬼滅の刃」に触れたことの無い人にとっても、10月までにアニメや漫画を予習しておけば劇場版からリアルタイムで楽しめると、このタイミングで新しく作品に手を伸ばしやすくする効果もあったのではないでしょうか)

◆『その次の電信柱は…』

そうしてファンの熱量が維持され、期待値も最高潮のまま迎える来月の劇場版公開は、先日発表された入場者特典や今月から解禁された映画館の全席販売開始なども追い風となり、原作完結以来の大きな盛り上がりをみせるのではないかと予想されます。

その後12月には、原作漫画の最終巻となる23巻の発売も控えているということで、まだまだ今年いっぱいは、本作のブーム自体も続いていくのではないでしょうか。

しかしそれらが一旦落ち着いたあと、ファンがそこまで盛り上がりを維持して走るためのモチベーション、”次の電信柱”となりそうな大きな展開は今のところ未定です。

アニメの2期が発表されるのか、新たな小説やスピンオフ漫画が発表されるのか、ゲームの配信・発売日がついに発表されるのか、はたまた関係者席さえ準備できない回があるほど盛況だった舞台版の再演や新作が行われるのか…。

原作の連載が終了し、年末でコミックスの発売も一旦終わりを迎える分、それ以外の大きなメディアミックス展開がいつどう行われていくのかによって、累計発行部数の推移や、この盛り上がりがどれくらい維持されていくのか、「鬼滅の刃」ブームの今後の行く末が決まってくると思います。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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