北欧音楽が世界へと発信される。オスロ発、冬の祭典by:Larm
北欧最大級の音楽のショーケース、「ビー・ラルム」(by:Larm)がノルウェーの首都オスロで開催されている。1998年に初めて開催され、今年で20周年を迎える。当初は業界関係者が趣味と思いつきで始めた企画だったが、今は今後注目の北欧アーティストが発掘できる貴重な場となっている。
by:Larmは「街の騒音」という意味。オスロ中心地にある各地の会場を徒歩で移動しながら、多くの曲を聞く。零下の寒さの中で行われる、雪国ならではの音楽祭だ。ポップを中心に、ジャズ、クラブミュージック、ブラックメタルなど、ジャンルは幅広い。
もともとは業界関係者のための集まりで、契約を結びたい新人発掘の舞台となっている。今でも、コンサート会場の裏ではビジネスのやり取りが数多く行われている。
初日には、ノルウェーのホーコン皇太子がオスロ市長とともに出席。挨拶では、「私が怒りを覚えている時には、Kvelertakを聞くこともあります」と話した。クヴァラータクといえば、ブラックメタルの要素を取り込んだノルウェーのメタル/ロックバンドだ。王宮でこのような音楽が流れているのかと想像すると、ほほえましく感じた。
by:Larmでは、フォノファイル・ノルディック・ミュージック・プライズという北欧音楽賞が毎年授与されている。商業的な成績を抜きにして、北欧の音楽業界で素晴らしいアルバムを出したものに 贈られる名誉ある賞だ。
今年はノルウェーより、イェニー・ヴァル(Jenny Hval)のアルバム『Blood Bitch』が選ばれた。「負けることには慣れているけれど、何かを受賞するのは今回が初めて」と、同氏は皇太子よりトロフィーを受け取りながら、驚いていた。
今回大きな注目を集め、今後の活躍が期待されているのが、シグリ(Sigrid)だ。
フィヨルド観光の小さな町オーレスン出身の20歳。今年突然現れ、デビューシングル「Don’t Kill My Vibe」がBBCなど数多くのメディアで紹介された。ノルウェー人アーティストにしては異例のスピードで知名度を上げており、by:Larmの会場にも多くの観客が詰めかけた。
by:Larmの凄さといえば、出演アーティストがこれからどう飛躍するか、未来が読み切れない面白さだ。
会場が満員になっていなくとも、数年後にはヒットを飛ばしていることもある。知名度の低い内にチェックしておきたい卵が勢ぞろいしているのだ。新曲をこの場で発表する人も多く、音楽好きには興奮する舞台となっている。
Mayhem、Royksopp、Todd Terje、Highasakite 、Auroraなど、今やノルウェー音楽を代表する人々も、by:Larmに登場したことがある。Jarle BernhoftとSondre Lercheは、20周年を記念して会場に再び舞い戻り、現地の人々を喜ばせた。
Photo&Text: Asaki Abumi