EU脱退巡り、英金融街が二分
欧州連合(EU)が英国の総選挙の争点になるのは珍しい。しかし、5月の総選挙ではまさにそんな珍しい事態が発生しそうだ。問題視されているのはEUを脱退するべきかどうかー。EUの官僚体制への不信感が強い英国ならではの現象だろう。
与党保守党は次回も政権党になった場合、EUへの継続加盟を問う国民投票を2017年に行うことを確約している。
英フィナンシャル・タイムズの調べ(8日付記事)によると、英国の年間の経済生産の5分の1を担う金融街シティーの意見が大きく二つに分かれている。銀行業は脱退反対派だ。脱退でロンドンの世界的な金融センターとしての地位が大きく揺らぐと見る。
一方のヘッジファンド業はEU官僚が押し付ける複雑な規制体制から逃れられるとして、脱退に賛成だ。
ヘッジファンドの1つオーデイ・アセット・マネジメント社創業者は「英国は経済同盟に加入したのであって、政治同盟に加入したつもりはない」、連邦制の欧州「の一部にはなりたくない」と語る。FTによれば、在英ヘッジファンドの大部分がEU圏外から調達された資金を運用している。運用にさまざまな規制をかけるEUから脱退すれば「もっと稼げるのに」という声が聞こえてきそうだ。
一方、銀行業界の懸念は、脱退によって28カ国・5000万人の人口を抱える単一市場としてのEUへのアクセスが失われる可能性だ。欧州の資本市場及び投資銀行業の収入の4分の3が英国での取引を通じて生み出されている。脱退によって英国の優位性がぐらつき、欧州の銀行大手が一斉に英国から大移動するかもしれない。
EU脱退の是非で割れるシティーは、賛成派と反対派が拮抗する英国民の感情をそのまま反映しているようだ。
(「週刊エコノミスト」の筆者担当分のワールドウオッチ・コラムに補足しました。)