「生涯現役」を公言する41歳川﨑宗則が過ごす日常と衰えることのない野球愛
【独立リーグ3年目のシーズンを終えた川﨑宗則選手】
2020年のシーズン途中からBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスに在籍している川﨑宗則選手が、同リーグでの3年目のシーズンを終えた今も精力的に活動を続けている。
シーズンが終わってからというものの、10月だけでも自宅のある福岡に留まらず、鹿児島、大分、広島と各地を飛び回っている。
川﨑選手の近況を確認するためチームの本拠地である栃木県小山市を訪れた際も、雑誌の取材、先月中日から戦力外通告を受けた滝野要氏とのYouTubeコラボ撮影、さらには自身のYouTube公式チャンネル「宗チャンネル」の撮影と、忙しい1日を過ごしていた。
【川﨑選手には存在しないオフシーズン】
プロ野球選手がシーズン以外で過ごす時期を、人々は「オフシーズン」と呼んでいる。だが現在の川﨑選手にオフシーズンという概念は存在していない。野球以外で活動する時間も彼にとっては、生活の一部であり、大事な生業の1つでもあるからだ。
「自分の中にオンとオフという感覚はないです。すべてがオンであり、オフなので、オンもオフもないですよね。
僕の場合は(野球とビジネスが)同時進行なので、常にトレーニングをしつつ、身体を動かしつつ日々の仕事に邁進している感じです。
全力投球というわけではないですが、力を抜きリラックスしながらも真剣に現場に臨ませてもらっています」
川﨑選手のみならず、すべての選手が独立リーグでプレーするだけで十分な収入を得られるわけではないし、野球以外の活動とも向き合っていかねばならない。だが川﨑選手はそれらを「副業」と割り切らず、すべての活動を生業と考え真剣に取り組み、そうした活動で得た知識、体験を人生の糧にしようとしている。
【今も45歳のイチロー選手と向き合う姿勢】
だからと言って、川﨑選手の野球に対する情熱は1ミリも薄らいではいない。今でも憧れのイチロー選手の姿を追い求め、自らの研鑽に手を抜こうとしない。
「今年も良いシーズンを過ごせました。41歳になって身体もどんどん酸化していく中で、今年夏頃に一塁までの到達タイムで3.84秒が出たんです。それは凄く嬉しかったです。イチロー選手は45歳で3.7秒を出していてそれを目標にしているので、それに近づけたのはやはり嬉しいです。
ただその記録が出た時に肉離れをしかけたので、今後はそれに耐えられるような身体にしていかないといけないですよね。もっと(タイムを)上げられるとは思うんですけど、そこはなかなか簡単にはいかないです。
でも陸上競技と違い土のグラウンドで速く走るのは簡単ではないです。そうした技術的な部分を考え、追い求めていくのは本当に楽しいですよ。来年こそは3.8秒を切りたいですね」
イチロー選手が3.7秒を記録したのが東京ドームだったことを考えると、土のグラウンドを主戦場としている川﨑選手とは条件があまりに違いすぎる。それでも彼は、イチロー選手に追いつくことをまったく諦めていない。
【41歳で20代の若手選手たちをライバル視】
イチロー選手のみならず、独立リーグの中にも川﨑選手がライバル視する選手が存在していたという。
「埼玉(武蔵ヒートベアーズ)の樋口(正修)くんが、常に3.7秒を出していた選手なんです。彼を目標にしていましたし、追いかける存在というかライバルがいたというのは嬉しいことですよね。
そんな彼が中日に育成でドラフト指名されました。やっぱり嬉しいです。独立リーグは次々に良い選手が入ってくるので、来年もすごく楽しみにしています」
現在の川﨑選手にとって、元NPB選手、元MLB選手という肩書きは何の意味もなさない。独立リーグという舞台であってもグラウンド上で若手選手たちと切磋琢磨することに喜びを感じているのだ。
【宗リストを作成して打ち取られた投手たちを紹介】
それは野手だけでなく、投手たちとも常に真剣勝負を挑み続けている。
「インスタで『宗リスト』というのを作っていて、自分が対戦して三振したり、打ち取られた投手の動画をアップしてるんです。
それが選手たちに評判が良いらしくて、みんなが『ムネリンに打たれないように』って真剣勝負を挑んでくれるんです。それも嬉しいことですよね」
現在の川﨑選手が独立リーグでプレーすることに、どれほどの生きがいを感じているかが、これらのエピソードからも容易に理解することができるだろう。
【川﨑選手が目指す「生涯現役」】
改めて繰り返しになるが、現在の川﨑選手にオフシーズンなど存在しない。彼はこれからも「生涯現役」を貫いていくつもりだという。
「野球選手は『引退』という言葉を使うけど、30代や40代で引退したら普通の人はおおごとでしょ。野球選手も『卒業』はできるだろうけど、引退なんてできないですよ。
僕は引退なんてできないし、しません。一生涯現役です。それはみんなもそうじゃないですか」
これからも川﨑選手は前を向いて歩み続けていくことだろう。