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改正動物愛護管理法の闇 元ブリーダーがポメラニアンなど小型犬を生きたまま窒息死

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

ポメラニアンやトイプードルなど小型犬3匹を生きたまま、ビニール袋に入れて窒息させ、殺したとして、埼玉県の81歳の元ブリーダーの男が逮捕されたことが分かったとTBS NEWS DIGが伝えています。

2019年6月に「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)が改正され、2020年6月1日から施行されています。

パピーミルという悪質な繁殖場などを無くすために動物を愛護する法律なのですが、そこにはこの事件のような闇があるかもしれません。その辺りのことと関連づけて、今回の事件を見ていきましょう。

ポメラニアンやトイプードルなどを生きたまま窒息死 元ブリーダー逮捕

【速報】「始末するのがブリーダーの責任。だから殺した」 ポメラニアンなど小型犬3匹を生きたまま袋に入れ窒息させ殺す 81歳元ブリーダーの男を逮捕 埼玉県警|TBS NEWS DIG より

どのようなことが、元ブリーダーのところで起きたのかを見ていきましょう。

繁殖引退犬は、売れないしもらい手もない、そのうえ、エサ代がかかり世話もしないといけないので、始末するのがブリーダーの責任なのでと話し、生きたまま窒息死させたため動物愛護法違反の疑いで逮捕されました。

動物好きな人がこの記事を読めば、なんともおぞましくて、読みすすめられないでしょう。繁殖犬がいたのでいままで生活できたのに、老犬になったから用済みとして生きたまま窒息死させたのですから。

犬を繁殖させて生活している人が、犬の命をこのように考えていることに怒りを感じます。

なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。

それは、この元ブリーダーしか知るよしもないかもしれません。しかし、推測されるひとつの原因に、改正動物愛護管理法があるのです。その法律を見ていきましょう。

いままで劣悪な環境にいた繁殖犬も保護するために、法律が改正されました。

改正動物愛護管理法の数値規制

2020年6月1日から施行された改正動物愛護管理法は、具体的に何が変わったのでしょうか?

ブリーダーは、第一種動物取扱業です。「マイクロチップの義務化」などもありますが、今回の事件と関係があるものを抜粋します。

1、犬の繁殖の回数制限、年齢制限が定められた

犬の生涯の出産回数は6回まで、そして交配時の年齢は6歳以下とします。ただし7歳に達したときに出産回数が6回未満と証明できる場合は、交配時の年齢は7歳以下とします。

犬は、年に2回、発情があり、毎回、発情時に出産をさせていると、早くて3年で出産回数が6回になり、もう繁殖させることができず、繁殖引退犬になるのです。

最近の犬は、元気なので7歳を過ぎても発情があり、妊娠することが可能な子もいます。

そんな子もシニアになると、この法律では繁殖させることはできないのです。逮捕されたブリーダーがいうように、生きているのでエサが必要です。だからといって、殺してもいいというものではありません。

ブリーダーは、繁殖引退犬には自分のところで飼養できないのであれば、新しい里親を見つけてあげる必要があります。

2、飼養または保管できる動物の数に上限が認められた

犬は、1人あたり20頭が上限です(そのうち繁殖犬は15頭まで)。

この元ブリーダーのところでは、従業員6人に対して犬179頭を飼養していました。この数字も改正動物愛護管理法違反の疑いがあります。法律だと、6人なら120頭しか飼養できないのです。

3、飼養施設のケージなどに数値規制が定められた

東京都動物愛護相談センターのホームページ より
東京都動物愛護相談センターのホームページ より

上の動画を見ると、犬は寝室・休養場所と運動スペースが別の分離型の飼養施設にいます。その場合は、上のイラストのようなスペースを確保する必要があります。

動画に映っている犬は、狭いケージに入れられています。

まとめ

東京都動物愛護相談センターのホームページ より
東京都動物愛護相談センターのホームページ より

改正動物愛護管理法が2020年から施行されました。上のイラストにあるように、殺傷、虐待、遺棄に対しても厳罰化されました。

動物を保護する法律があるのに、このように無惨に殺されている子もいるのです。生きたまま犬を窒息死させる事件は、この元ブリーダーのところだけであってほしいと願うのは甘い考えなのでしょうか。

TBS NEWS DIGによりますと「警察は、渡部容疑者が数年前から同様の手口で、ほかにも犬を殺していたとみて、余罪を追及する方針です」とあります。この3頭以外にもこのように殺された犬がいるかもしれません。

繁殖引退犬を愛おしまず、エサを食べるから殺したというブリーダーがいなくなるように、第一種動物取扱業の規制をもっと厳しくし、教育を強化するべきです。また、犬や猫を殺すことは犯罪であるという認識を広め、彼らの命を大切にしてほしいと思います。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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