Yahoo!ニュース

【神戸市東灘区】神戸の下水処理場は、とっても楽しい!「東水環境センター」施設見学してみませんか?

くりあんぱん神戸の日常系webライター(神戸市)

「東水環境センター」の施設見学で、神戸の下水処理について学んできました。

公式ホームページ:神戸市:東灘処理場

東水環境センターの施設見学は、最も内容が充実している「フルコース」、フルコースの簡略版「マンホールカードコース」、学校単位での見学「小学校社会科見学コース」の3種類があります。今回は一番人気の「マンホールカードコース」での参加です。

阪神「青木」駅から南西へ、東魚崎大橋手前の交差点を右折すると「東水環境センター」があります。

建物入口は2階です。正門から入ってまっすぐ、スロープを上がります。

スロープを上がったら右に建物と入口があります。

まずは「神戸下水道の歩み館」でスライドを観て学習します。資料も職員さんの説明も、とても分かりやすいです。

次に、中央監視室を見学します。

中央区を流れる生田川より東側の中央区・灘区・東灘区が下水処理の管轄です。
こまめに気象状況をチェックしながら、各ポンプの排出量等を調整しています。管轄内でも気象状況に差があり、短時間・狭い範囲で急激に下水への流入量が増減する事も。管理を誤ると下水があふれて住民生活に大きな被害が出てしまうので、とても気を遣うお仕事なのだそうです。「神戸の歴史は治水の歴史」という事を実感します。

次は魚崎運河を渡り水処理施設へ。甲子園球場3個分という広大な施設で約39万人分の汚水を処理しています。

実際の工事で使われた掘削機。全面にイラストが描かれています。ぜひ裏面までご覧になってみてくださいね。

マンホールの中を観察できます。

左:この穴を、普段はマンホールの蓋で塞いでいます。
右:想像以上に狭く、成人男性の体格では方向転換さえ大変そう。

生物反応槽です。大型駐車場みたいな空間の床下に処理槽が広がっています。

下水中の汚を食べてくれる微生物の力を借りて浄水します。微生物が最も活発になる酸素濃度に保たれており、水面が泡立っているのは、好気性である微生物に、十分に酸素が行き渡るようエアポンプを稼働させている為。このエアポンプが、施設全体の消費電力の実に3分の1を占めるとの事!

生物反応槽の仕組みです。水中の微生物に酸素を供給する「金魚のぶくぶく」のような装置「散気板」は槽の中ほどの深さに設置されています。底に設置すると装置にかかる水圧が高く、ポンプの消費電力が多くなってしまうとの事。縦に入れられた区切りも、効率的に旋回させ空気を馴染ませるための工夫です。

散気板は、軽石がよりきめ細かくなったような素材で出来ています。きめ細かくすることで酸素が水に溶け込みやすくなり、こちらも消費電力削減に繋がります。
こうして10時間かけて浄化された水は、最終沈殿池へと送られます。

床下に最終沈殿池が広がっています。

処理した水をくみ上げシャワー状に注ぎ、水面に浮いてきた汚泥を沈めます。

汚泥沈殿後、上澄みの水を次亜塩素酸ソーダで消毒し、自然に返します。この写真の手前から奥、魚崎運河に向かって流れています。運河を観察してみると、水が流れ出ている所は柵や水面の様子が周囲と異なりますよ。

最終沈殿池の汚泥の一部は「消化タンク」にて燃料用ガスの原料となります。職員さんの身長と比較すると大きさを実感します! 摂氏40度に保たれた内部で30日間かけて作られた「消化ガス」は、メタン約60%、二酸化炭素約40%、硫化水素等が少量という組成。ここからメタン98%まで精製するのですが、どのように純度を上げるのか、良かったらページを読み進める前に予想してみてください。ヒントは理科の授業で学ぶ「気体の集め方」です。

バイオガス精製設備。消化ガスの成分のうち、メタンは水に溶けにくく、二酸化炭素や硫化水素は水に溶ける性質を利用します。消化ガスに水シャワーをかけると、メタン以外は水に溶けて落ちていき、メタンのみが気体として残ります。より効率的に水溶性気体を除去できるよう、中は高圧(0.9MPa)低温(摂氏7度)です。こうして作られた天然ガス燃料が「こうべバイオガス」。本処理場の燃料としても使用され、完全循環型のシステムが確立されています。

天然ガス自動車の燃料として外部供給もされています。二酸化炭素排出量ゼロエネルギーとして企業からも重宝されており、2022年は約4500台の車へ提供されました。

左は水素燃料のガススタンド、右は消化ガスエンジン発電機。2024年7月から、水素燃料や消化ガス発電の電気も供給されています。


消化タンクで使用後の汚泥は更に有効活用され、優秀な肥料「こうべハーベスト」の原料「こうべ再生リン」となります。

リン回収設備で汚泥からリンを回収します。水酸化マグネシウムや水と化学反応させて得られたリン酸マグネシウムアンモニウムが「こうべ再生リン」の主成分。アンモニウム化合物には窒素原子が含まれており、植物の三大栄養素「窒素・リン・カリウム」のうちリンだけでなく窒素も与えることができます。リンの多くは中国から輸入されていますが、中国は農業大国、自国で使う分も確保しておきたい事情等から輸出規制されており、円安の影響もあり価格高騰しています。とても貴重で需要の高い再生資源です。

正式に生産業者登録もされています。

このリン酸マグネシウムアンモニウム、元々は何と、配管内を詰まらせる厄介者だったのだそう! 何一つとして役に立たないものはない、工夫次第で有効活用できる、…そんな姿勢をここまで実現させた神戸の下水処理システム、間違いなく、我が市の自慢の1つですね!

左:別日に神戸空港で貰ったカード「だいすきこうべ」、中央:今回貰ったマンホールカード「王子動物園」、右:「神戸下水道の歩み館」のカプセルガチャの中身です。
左:別日に神戸空港で貰ったカード「だいすきこうべ」、中央:今回貰ったマンホールカード「王子動物園」、右:「神戸下水道の歩み館」のカプセルガチャの中身です。

参加後「王子動物園」のマンホールカードが貰えます。マンホールカードとは、全国各地で配布されているご当地マンホールの紹介カードで、神戸市内には2種類あります。

参考サイト:神戸市:神戸市のマンホールカード

左:「こころのアート展」作品を巨大壁画に再現展示されたもの、右:地元中学校の生徒さんが飾り付けされた生物反応槽モデルです。

壁画作者の紹介HP:NPO法人アイ・コラボレーション神戸 メンバー 黄色いネムネム

各所から、市民に親しまれる施設であろうとする姿勢がひしひしと伝わってきました。町づくりに関心がある方は社会科見学として、人の繋がりや職人魂に関心のある方は職員さんの姿から、工場やコンビナート好きな方は施設設備の様子から、科学好きな方は処理システムから、教育や福祉に関心のある方は施設内の市民アートや地元中学生の作品から等…様々な嗜好の方が楽しめるツアーだと思います。現地でこそ感じられる、温度感や嗅覚(強い匂いや悪臭はありませんのでご安心下さい)等からも、得られる発見がたくさんありますよ。


最後、職員さんに「水環境を守るために一番大切なことは何ですか?」とまとめの質問をすると『食べ物や飲み物を大切に、フードロスゼロを目指しましょう!』とのご回答でした。我が家の今夏の目標は「フードロスゼロ」に決定です。夏の気候や家族の食欲変動に、柔軟に対応しながら頑張ります!

●東水環境センター(東灘処理場)●
〒658-0025 神戸市東灘区魚崎南町2-1-23
電話番号 078-451-0456
FAX 078-453-6328
ホームページ 神戸市:東灘処理場

●施設見学 マンホールカードコース●
開催日時 年末年始を除く平日、10時開始と14時開始 要予約
所要時間 約1時間
ホームページ 神戸市:神戸市のマンホールカード

神戸の日常系webライター(神戸市)

神戸でささやかに暮らしている一市民。大好きな町神戸の魅力を、心地よい日常から拾い上げて大切にお届けしていきます。記事を通して皆様と「わくわく」「ほっこり」な気持ちを分かち合えたら嬉しいです。よろしくお願いします!

くりあんぱんの最近の記事