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NPB、スタジアムでの撮影に制限 #専門家のまとめ

阿佐智ベースボールジャーナリスト
野球場では近年カメラを携えたファンを多く見かける。(筆者撮影)

 プロ野球・NPBは2日、プロ野球試合観戦契約約款の下部規定として「写真・動画などの撮影及び配信・送信規定」を策定した。この背景にはSNSの発展があるとされている。実際の適用は来シーズンからになる模様だ。

 近年、SNSの発達だけでなく、デジタルカメラの機能が充実し、ズームレンズを使えば、誰もが「プロ並み」の写真を撮ることができるようになり、試合展開そのものよりも撮影に夢中になっているのではと思えるファンの姿も見かけるようになっており、スタジアムでの撮影は日常の風景になっている。

ココがポイント

球場のボールインプレイ中のプレーヤーについて撮影の制限はないが、一切の動画の配信・送信を禁止する

出典:デイリースポーツ 2024/9/2(月)

甲子園の場内アナウンスで、観客への写真撮影について注意喚起が行われた。

出典:日刊スポーツ 2024/9/1(日)

ベイスターズの外野手・関根大気選手は8月15日、自身のXに《情報開示命令申立が認められました》と報告し、大きな注目を集めた

出典:デイリー新潮 2024/8/28(水)

エキスパートの補足・見解

 デジタル機器、インターネットの発達により、誰もが気軽に撮影、そして情報発信ができるようになった今、様々な問題がスタジアムで巻き起こっている。これを受けてのNPBの新規定の制定だろうが、遅きに失した感がある。プロ野球の本場、アメリカではすでに10年以上前から、望遠レンズやノートパソコンの球場内への持ち込みは禁止され、SNS、デジタル時代に予想されるトラブルを未然に防ぐ努力がなされている。近年では、一眼レフカメラの持ち込みすら認めない球場も現れている。日本の場合、試合風景の長時間の動画撮影や後部座席の観客の視界を妨げるようなロングレンズでの撮影は今まで野放しになっており、実際、ユーチューブなどに編集された試合風景の動画が公開されていた。SNSによる選手への中傷も、この「なんでもあり」の状況の延長線上にあるのではないか。

 スタジアムは第一に生観戦の場である。そのことをまずはファンも肝に銘じて「観戦」をしなければ、今後様々な規制が設けられ、窮屈な観戦を強いられることになるのではなかろうか。

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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