「SNSでの誹謗中傷」と「昭和のヤジ」は大違い…金村義明氏が明かす「球場で個人情報を暴露されてもシャレで済んだ」根本的な理由
アスリートを精神的に傷つける罵詈雑言が、これで減少するのだろうか──。横浜DeNAベイスターズの外野手・関根大気選手は8月15日、自身のXに《情報開示命令申立が認められました》と報告し、大きな注目を集めた。 金村氏と親交の深かった仰木彬監督のサングラス姿も…【写真特集】平成を彩った、「異色の野球人」たち ***
添付された「開示仮処分命令対象投稿一覧」によると、関根選手は4月26日に投稿されたポスト8件を問題視し、Xに対して投稿者の個人情報を開示するよう裁判所に申し立てたことが分かる。 一体、4月26日に何があったのか。担当記者は「26日にDeNAは巨人と対戦し、関根選手の“死球アピール”が勝敗に大きな影響を与えました」と言う。 「関根選手の訴えを審判が認めると、巨人の阿部慎之助監督はビデオ判定を要求しました。しかし判定は覆らず、これで満塁。続く山本祐大選手はサードゴロに倒れ2アウトとなりましたが、度会隆輝選手が満塁ホームランを放ったのです。試合は10対7でDeNAの勝利に終わり、納得がいかない巨人ファンの一部は関根選手への誹謗中傷をXに投稿しました」 先の「投稿一覧」には、《当たってねーじゃん、関根死ねよ》、《やっぱり関根ゴミだわ》、《インチキ死球ゴミすぎ関根きもいわ》──といった誹謗中傷が列挙されている。 「近年、スポーツ界全体でSNS上の誹謗中傷が問題となっています。プロ野球なら2021年、中日の投手が契約更改の席で『試合で打たれると、殺害予告が来る』と明かしたことで注目が集まりました」(同・記者)
ヤジと誹謗中傷
翌22年にはパ・リーグ最終戦でマジック1だったソフトバンクが敗れ、オリックスが逆転優勝。この時もソフトバンクの一部選手にSNSで誹謗中傷が殺到した。 「今年はパリ五輪に出場した選手に対するSNSでの誹謗中傷が、日本だけでなく世界各国で確認されたことも大きく報道されました。関根選手の開示請求は、こうした状況に一石を投じたものだと言えます。法律の専門家も注目し、『死ね』や『ゴミ』といった言葉が問題視されたのではないかという見解もあります」(同・記者) 無論、選手の生命を脅かすような投稿を見過ごすことはできない。一方で、数あるプロスポーツの中でも日本のプロ野球は、“ファンからの声”を巡って少し独特な歴史を持っているのも事実だ。 昭和の時代には球場での“ヤジ”が盛んで、日常的な風景と見なされていた。そのため特別な社会問題として取り上げられることも皆無だったのだ。 「昭和30年代や40年代まで遡ると、一部のファンはプロ選手に対して“あいつらはカネ目当ての連中”と考えていました。アマチュアリズムが善とされ、“職業野球”という言葉には独特のニュアンスがあったのです。アマである高校球児に口汚いヤジを飛ばすのは、今も昔も明確なルール違反です。ところが、かつてプロ野球を球場で観戦する一部の観客は『自分は入場料というカネを払っているし、選手もカネ目当てにプレーをしている。だからある程度ならヤジを飛ばしても許されるのだ』という認識を持っていたのではないでしょうか」(同・記者)