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大人でも体重で用量異なるインフル治療薬「ゾフルーザ」正確に伝えて 正しく知りたい異常行動のこと

高垣育薬剤師ライター、国際中医専門員
(ペイレスイメージズ/アフロ)

インフルエンザが流行しています。国立感染症研究所によると1月7日~13日の定点あたりの患者報告数は前週78116人から2倍以上増加し、190527人と報告されました。

筆者が勤務する薬局でもインフルエンザの患者さんが急増していますが、今季は前シーズンとは少し異なることがあると感じています。それは、あたらしい抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ」が処方された方に、思いがけず待ち時間が長くなるケースがあるということです。

今回は、ゾフルーザが処方されたときに少し気をつけておきたいポイントと、薬局で患者さんからよく質問される異常行動のことをお伝えします。

大人でも体重ごとに用量が異なるゾフルーザ、体重を聞かれたら正確に伝えて

「私、体重80kg以上あるのですが伝えそびれてしまって……」

薬を渡し終えた成人の患者さんから薬局へ電話が入りました。薬と一緒に渡したリーフレットを自宅で改めて読んでいたら、自分の体重だと薬の量が足りないようなのでどうしたら良いかという問合せです。

実は、抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザは、こどもも大人も体重によって用量が細かく定められています。

体重とゾフルーザ錠・ゾフルーザ顆粒の用量
体重とゾフルーザ錠・ゾフルーザ顆粒の用量

診療所と薬局で体重をダブルチェックしていたのですが、熱で朦朧としていたのでしょうか、体重を正確に伝えられなかったのだと言います。医師に連絡したところ、薬を追加で処方するために、再度診療所と薬局に来て頂くことになってしまいました。インフルエンザで体調が悪い中、もう一度受診するのは本当に大変だったと思います。

この事例のように帰宅してから再来院・来局というケースは、今のところこの1件のみしか経験していませんが、薬局で体重を確認して医師に問合せて用量が変更になる事例は毎日数件起こっています。これが前シーズンになかった変化です。

薬局から診療所や病院に問合せて、処方医に処方内容を変更してもらう手続きをとると、ただでさえ長い待ち時間がさらに長くなり、患者さんのお体に負担をかけることになってしまいます。

特に、成人の患者さんでは「大人なのにどうして体重なんて聞かれるんだろう」と思うかもしれませんが、正確な体重の情報を医療従事者に伝えることは、患者さんがゾフルーザによる適切な薬物療法を受けるために欠かせません。

待ち時間を1分でも短くし、インフルエンザの治癒に不可欠な療養の時間を十分に確保するためにも、診療所や薬局で体重を尋ねられたらどうか正確にお伝えください。

特定の抗インフルエンザウイルス薬が異常行動の原因になるというのは誤解

5歳のインフルエンザ患者さんのご両親にインフルエンザ罹患中の異常行動に対する注意事項をお話していたときのことです。

「そういえば、この薬って飛び降り事故の原因になったことでニュースになっていたやつですよね……」

そう言いながら、ご両親は薬に対して不信感をあらわにしました。しかしそれは誤解です。

厚生労働省の研究班が行った「インフルエンザ罹患に伴う異常行動研究」によると、2017/2018シーズンにおける、突然走り出す、飛び降りるなどの重度の異常な行動の報告件数は95件でした。

服用薬別(他薬との併用を含む)の件数をみてみると、タミフル23件、リレンザ16件、イナビル26件、ゾフルーザ2件、ラピアクタ2件で、これらの医薬品の服用がなかった場合も16件報告されています。

この調査結果を含むこれまでの研究から、厚生労働省は特定の抗インフルエンザウイルス薬にのみ異常行動との明確な因果関係があるとは言えないと報告しています。

したがって、インフルエンザに罹患したら、薬の種類や服用の有無に関係なく誰もが重大な事故の発生を防ぐ対策を講じる必要があります。なかでも異常行動の発生が多く報告されている就学以降の小児、未成年者では特に注意が必要です。

具体的な対策としては、発熱から少なくとも2日間は、就寝中も含めて出来るだけ一人にならないように配慮をすることが挙げられます。さらに、住居や居室から飛び出すのを防ぐため、玄関や窓の施錠を徹底する、ベランダに面していない部屋で寝かせる、一戸建てだったら1階の部屋で寝かせるなどの工夫も併せて行います。

インフルエンザで発熱、残薬や市販の解熱剤を自己判断で使わないで

「熱が高くなったら、家にある解熱剤を飲んでも良いですか?」

インフルエンザの患者さんからときどき質問されます。インフルエンザにかかったときの熱さましには「アセトアミノフェン」という有効成分の解熱剤の使用が適切です。インフルエンザと診断された方のみではなく、インフルエンザの疑いがある場合も同様です。

もし、お手持ちの解熱剤の種類が分からない場合や、高熱のせいででよく眠れない、食事が摂れないなど、インフルエンザの治癒に不可欠な療養を妨げる状況改善のために解熱剤の服用が必要な場合は、お近くの薬局の薬剤師に遠慮なくご相談ください。薬剤師は患者さんのつらい症状を取り除き、安心して療養するためのお手伝いをします。

薬剤師ライター、国際中医専門員

2001年薬剤師免許を取得。2017年国際中医専門員の認定を受ける。調剤薬局、医療専門広告代理店等の勤務を経て2012年にフリーランスライターとして独立。薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている。愛犬のゴールデンレトリバーの介護体験をもとに書いた実用書「犬の介護に役立つ本」(山と渓谷社)の出版を契機に「人」だけではなく「動物」の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行っている。

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