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全勝無双・藤井聡太二冠(18)はこのまま突き進むのか? 1月6日、B級2組順位戦で上位陣直接対決

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月6日、東西の将棋会館にわかれてB級2組順位戦がおこなわれます。特に注目されるのは成績上位陣がぶつかりあう以下の2局です。

△藤井聡太二冠(7勝0敗)-▲中村  修九段(6勝2敗)

▲横山泰明七段(6勝1敗)-△佐々木勇気七段(6勝1敗)

(▲=先手、△=後手)

藤井二冠-中村九段戦

 藤井聡太二冠(18歳)はここまでB級2組7戦全勝。デビュー以来の順位戦成績は36勝1敗と、とんでもない数字になっています。

 藤井二冠はもし9回戦も勝てば、自身の順位戦連勝記録を18から19に更新することになります。

 一方でベテランの中村修九段(58歳)。昭和55年(1980年)に四段に昇段した「55年組」の一角として、新時代の波を起こしました。若き日のキャッチフレーズは「受ける青春」。その名の通り、独自の受け将棋で史上最年少王将、王将位連続2期などの実績を残しています。

 中村九段は順位戦ではB級2組とB級1組に長く在籍。B級2組からB級1組への昇級回数は3回もあります。

 中村九段は前々期は2勝8敗で1度目の降級点。前期は4勝6敗で、わずかな順位差でかろうじて2度目の降級点(=降級)を逃れています。今期はここまで6勝2敗で勝ち越し決定。規定により1度目の降級点が消えました。そして昇級の可能性も残しています。

 ほぼ1年前の2020年1月7日。藤井七段(当時)と中村九段は銀河戦で対戦しました。

 中村九段先手で序盤に細かな駆け引きがあり、互いに雁木に組んでいます。それから中村九段は右玉に構えました。

 右玉は一般的に待ちの姿勢の場合が多いものですが、中村九段は自玉の上から動いて戦いが始まりました。

 藤井七段は右玉の弱点である玉側の端から動き、ポイントをあげます。一方で中村九段も反撃し、難しい終盤戦となりました。中村ワールドに引き込まれたか、藤井二冠もピンチを迎えます。中村九段は薄い自玉をものともせず、終盤では有望な局面も現れました。

 しかし藤井二冠はうまく粘って決定的な決め手を与えません。きわどい終盤戦を最後に制したのは、藤井二冠でした。

 順位戦では再び中村九段先手となります。まずは中村九段の作戦が注目されるところでしょう。

 藤井二冠は全勝で走っているものの、1期目で順位が低いのはウィークポイントです。ただし昇級を争う上位陣が崩れれば、9回戦で藤井二冠の昇級が決まる目も出てきます。前期までの昇級枠2が、今期からは3に増えたことも大きく作用するかもしれません。

横山七段-佐々木七段戦

 横山泰明七段(40歳)は今期でB級2組4期目。その間、ずっと昇級候補として、好成績をあげ続けています。

 2017年度は8勝2敗で次々点。2018年度は7勝3敗で次点となりました。

 前期2019年度は途中まで6勝1敗。そこで同成績の近藤誠也六段(現七段)との直接対決を制しています。もう昇級は確実か。ファンや関係者の多くからはそう思われながらも、終盤で失速し2連敗。2年連続で7勝3敗次点となっています。

 くさってしまいそうなところで横山七段は立ち直り、今期またも白星を重ねてきました。そして前期と同様、6勝1敗同士の直接対決という重要な局面を迎えています。

 佐々木勇気七段(26歳)は藤井二冠とともにB級2組に昇級してきました。

 誰もが認める大器がいよいよその真価を発揮してきたか、今期B級2組1期目で、早くも昇級に近づきつつあります。

 横山七段と佐々木七段は過去に5回対戦し、横山七段3連勝のあと、佐々木七段が2連勝を返しています。

 今回の対戦、勝った方が大きく昇級に近づくのは言うまでもありません。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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