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無人レジにAIスタッフ...最新技術が一堂に。小売業界の大展示会「NRF」に4万人(NY)

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
大手通信会社AT&Tで来場者を歓迎するロボット犬。(c)Kasumi Abe

小売業界(リテール)の最新動向やトレンドを紹介する世界最大規模の展示会「NRF’24」が、今月14日から3日間、ニューヨークで催された。

会場のジャヴィッツ・センターでは、米IT大手GoogleやMicrosoft、日本の富士通、東芝、日立など、世界100ヵ国から1000社を超える企業が自社の新たな技術やサービスを出展し、来場者の関心を集めた。

会場に入るやいなや、対話型AIレセプショニストが質問に答えてくれた。(c)Kasumi Abe
会場に入るやいなや、対話型AIレセプショニストが質問に答えてくれた。(c)Kasumi Abe

今年も多くの企業が、デジタルトランスフォーメーション(DX)の一環としてAI(人工知能)、カメラ、センサーなどの最新技術を駆使したサービスを披露した。一つの最たる事例は、レジでの物理的な精算がないオートノマス・ストア(フリクションレス・ストア)だ。日本語では無人店舗とも呼ばれるもの。

代表的なAmazon Goはいくつかの閉店を経て、現在全米に23店舗を展開中。ほかのオートノマス店も、都市部や商業施設内で時々見かけるようになった。

Amazonのレジレス決済システム、Just Walk Outを導入したオートノマス店。(c)Kasumi Abe
Amazonのレジレス決済システム、Just Walk Outを導入したオートノマス店。(c)Kasumi Abe

これに似たコンセプトで、アメリカでは大企業やコワーキングスペース、駅や病院などで、フリクションレス・キオスク(無人店舗サービス、売店)やベンディングマシーン(自動販売機)の導入も進んでいる。

ゴールドマンサックスのNY本社で導入されているフリクションレスな売店、AWMのQDU(クイックドロップユニット)。シンガポールなどグローバルに展開中。(c)Kasumi Abe
ゴールドマンサックスのNY本社で導入されているフリクションレスな売店、AWMのQDU(クイックドロップユニット)。シンガポールなどグローバルに展開中。(c)Kasumi Abe

生体認証による本人確認で、自動決済が簡単にできる日立のCO-URIBA(コウリバ)。実店舗としての導入はこれから。(c)Kasumi Abe
生体認証による本人確認で、自動決済が簡単にできる日立のCO-URIBA(コウリバ)。実店舗としての導入はこれから。(c)Kasumi Abe

最新の会計システムといえば、セルフレジもそうだ。アメリカの大手小売チェーンを中心に導入されるようになって久しい。新型コロナのパンデミックをきっかけに通常の有人レジがあってもセルフレジを選ぶ人は増えた。

Trader Joe's(トレーダー・ジョーズ)のように顧客とのコミュニケーションを大切にしたり、また予算の関係で有人レジにこだわる企業も未だ多いが、大型店の多くが有人レジと無人レジの混合スタイルを採用している。中にはセルフレジのみの店舗を試験的に導入したり*、セルフレジを主流にするなどの舵切りをしている企業**もある。

  • *Kroger/クローガーやDollar General/ダラー・ジェネラル。**Whole Foods Market/ホールフーズ・マーケットやWegmans/ウェグマンズなどの一部店舗
ウェグマンズの新店は、レジスペースの大半がセルフレジ。(c)Kasumi Abe
ウェグマンズの新店は、レジスペースの大半がセルフレジ。(c)Kasumi Abe

ただセルフレジは、万引きや不正行為(商品の質や重量に応じた価格の差異を顧客が偽るなど)が問題になっており、エラーも頻繁に出ることで結局スタッフが機械と人の両方を監視しなければならず、導入を進めるにあたり改良が求められていた。

そこでよりスムーズに、より進化した不正検知システムを搭載した最新のセルフレジが生まれている。

東芝の最新のセルフレジは、商品情報をより正確に検知するシステムを搭載。昨年秋マンハッタンにオープンしたスーパー、ウェグマンズで導入されている。(c)Kasumi Abe
東芝の最新のセルフレジは、商品情報をより正確に検知するシステムを搭載。昨年秋マンハッタンにオープンしたスーパー、ウェグマンズで導入されている。(c)Kasumi Abe

また現状のセルフレジでは、アルコールを購入する際にスタッフを呼んでID確認をしてもらう必要がある。無人システムを採用と言っても結局は担当スタッフを配置しなければならないが、その問題を解決するため、事前登録したID情報をカメラで検知できるセルフレジが生まれている。開発元の富士通のブースでは、来場者が新技術を体験していた。

会場では、新しい陳列のアプローチも来場者の関心を引いていた。これからの商品売り場は、消費者が楽しく心が躍るような没入体験をできるものになりそうだ。

ショーウィンドウや棚、空間で、3Dホログラム映像を投影し立体的に見せる技術。英HYPERVSN(ハイパービジョン)のブースにて。(c)Kasumi Abe
ショーウィンドウや棚、空間で、3Dホログラム映像を投影し立体的に見せる技術。英HYPERVSN(ハイパービジョン)のブースにて。(c)Kasumi Abe

ほかにも基調講演として、世界最大の小売業と言われるWalmart(ウォルマート)、IT大手のSalesforce(セールスフォース)、書店大手のBarnes & Noble(バーンズ・アンド・ノーブル)などのCEO、そして著名人が多数登壇した。

パンデミックがきっかけになった消費者の書物回帰、書店回帰により新店舗のオープニングを推し進めているBarnes & Noble。昨年は30店舗のオープンを発表していたが、今年はそれを上回る「50店舗を新たにオープン予定」とCEOジェームズ・ドーント氏は来場者を前に明かした。

WalmartのCEOジョン・ファーナー氏とSalesforceのマーク・ベニオフ氏は対面で、AIを含む小売業界の未来について話した。一般公開された2022年11月以降、多くの人が利用するようになったチャットGPTの昨今の事情を踏まえ、「現実世界が昔観た未来映画の世界そのものに進化しつつある。ものすごく速いスピードで」とベニオフ氏。AI利用については利便性がある一方、デメリットも指摘されているが「より高まりのある場所へ向かうのかそれとも暗闇に行くのかは自分たち次第だ。AIがどんな価値をもたらすか、AIを使ってどんな世界にしたいか、何が自分たちにとって大切なことなのか。課題は我々の目の前のテーブルに置かれ議論されようとしている。引き続き積極的に話し合っていくことが大切だ」とした。

俳優のドリュー・バリモア氏や元プロバスケットボール選手で実業家のマジック・ジョンソン氏が現れると、壇上はさらに華やいだ雰囲気となった。

バリモア氏は、機能的で料理が楽しくなりそうな可愛いデザインのキッチン用品、Made by Gather(メイド・バイ・ギャザー)を創業。商品はWalmartで販売し、俳優業の傍ら実業家としても頭角を現している。ビジネス参入へのきっかけとして、「親になったことが大きい。日々の大変な家事をうまく前進させるには、何があれば良いかと頭を捻った」と言い、自信作を披露した。

可愛くて機能的なデザインのMade by Gatherのプロデューサー、バリモア氏と、CEOのShae Hong氏(右)。(c)Kasumi Abe
可愛くて機能的なデザインのMade by Gatherのプロデューサー、バリモア氏と、CEOのShae Hong氏(右)。(c)Kasumi Abe

以上が今年の「NRF」のレポートだ。3日間で4万人が訪れ、6,200以上のブランドやサービスを目にし体験した。日進月歩で進むこれらの新技術が今後、我々の生活に浸透していき、さらに便利な世の中にしてくれそうだ。

  • 本稿に記載した出展社数、来場者数、参加国数、参加ブランド数は主催者発表

(Text and photos by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、著名ミュージシャンのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をニューヨークに移す。出版社のシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材し、日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。

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