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WBOヘビー級10位の判定勝ち

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Amanda Westcott/SHOWTIME

 スーパーヘビー級トルコ代表としてリオ五輪に出場したアリ・エレン・デミレゼンが、先日3-0の判定勝ちでポーランドの人気選手、アダム・カナッキを下した。

 32歳のデミレゼンは2020年より6連勝を飾り、自身の戦績を17勝(12 KO)1敗とした。

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 一方のカナッキは、2020年3月以降3連敗。そのうちの2回はKO負けだ。元々太鼓腹が特徴で、愛嬌のある風貌と"ホワイトヘビー"ということで人気を得てきたが、完全にメッキが剥がれてしまった。

 今回は判定まで粘り、93-97、93-97、94-96のスコアだったが、33歳のカナッキはハッキリと限界を感じさせた。これで20勝(15KO)3敗。

 彼がニューヨーク、ブルックリンのバークレイズ・センターのリングに上がるのは11度目。当地でファンの期待に応えられなかった。

Amanda Westcott/SHOWTIME
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 初回、多少腹の贅肉が少なくなったカナッキは、トルコ代表のボディーを狙って前進する。が、デミレゼンの方が手数も多く、パワーショットも多く繰り出した。

 10ラウンド、ポーランド人ファイターは左目を切り出血する。力を振り絞って右を放つが、獲物を的確に捉えられない。

Amanda Westcott/SHOWTIME
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 試合後、敗者は言った。

 「ちょっと腕が鈍ったな。キャンプでは動きが良かったんだ……。何故だろう。

 俺、二人の子供がいるんだよ。今後については妻と時間をかけて話し合う。沢山のファイトをこなし、リングでの素晴らしい思い出も無数にある。敗者のまま去りたくないな。もう一度試合に勝って、ファンと喜びを分かち合って引退したい」

Amanda Westcott/SHOWTIME
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 勝者も話した。

 「アメリカで試合が出来るのは、本当に嬉しいです。ニューヨークも好きですしね。もっと自分を知ってもらいたいと思っています。カナッキが強い選手だと分かっていたので、緊張しました。でも、上手く試合を運べましたね。

 カナッキのホームタウンで勝利できました。次世代のトルコ人ファイターに、誇れる何かを見せたかったんです」

 デミレゼンはチャンスを掴めそうだ。

写真:ロイター/アフロ

 ポーランド人のヘビー級選手として思い出すのはアンドリュー・ゴロタだ。一時期将来を期待され、97年に世界ヘビー級タイトルに挑んだが、レノックス・ルイスにファーストラウンドでKOされ、全盛期を過ぎたマイク・タイソン戦でも、戦意を喪失して自ら棄権した。リディック・ボウとも2度戦って2失格負け。

 カナッキは、ファンに愛されているうちに去った方が賢明だーーー既に終わりを意識しているのなら、ケガのないうちに……と感じざるを得ないファイトだった。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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