NTT転勤廃止にみる令和時代の社員の「安定」とは
みなさんこんにちは。自立型人材のキャリア支援を行う転職エージェントのアクシス株式会社 代表の末永 雄大です。
一昨日28日に、NTTグループが「職住近接」を掲げてリモートワークを基本とし、転勤や単身赴任は原則として廃止する方向で検討すると発表がありましたね。
(https://news.yahoo.co.jp/pickup/6405608)
転勤や単身赴任は、日本の大手企業では特徴的な人事制度ですが、NTTのような歴史のある大企業がコロナをきっかけにこのような働き方にについての改革を進める事は、非常に大きな影響力があるのではと感じます。
重要性を増す「キャリア自律」
高度成長期以降の日本企業は、終身雇用・年功序列を社員に保証する代わりに、企業側に強い人事権がありました。つまり、企業が社員の異動・配置・昇進・昇格・転勤をある意味一方的に決めていました。
しかしながら、2019年4月、経団連の中西宏明会長は「企業が終身雇用を続けていくのは難しい」と言及し、また、2019年5月に、トヨタ自動車の豊田章男社長が「終身雇用の維持は難しい」と発言したことも、社会に大きなインパクトを与えました。
経済界のリーダーによるこれらの発言のように、近年「終身雇用の崩壊」について語られる局面が増えています。
一方で社員個人の価値観も、既に終身雇用を信じている事は少なく、新卒で入社した会社に骨を埋めるのではなく、スキルを身につけ、いずれは転職を想定している人が若手社員を中心に増えていると感じます。
そうした時代や価値観の変化を背景に、近年注目されているのが「キャリア自律」です。
キャリア自律とは、働く個人が自らのキャリアについて主体的に考え、キャリアに責任を持ち、キャリア形成に取り組んでいる状態のことを一般的に指します。
近年、企業を取り巻く環境は、不確実性や不透明さが増し、終身雇用や個人のキャリアに責任を負うことが難しくなりつつあります。そのため、自ら選択肢を増やせるようキャリア自律に力を入れる企業が増えた印象です。
個人にとっても自分のキャリアを会社に依存している状態は、安心・安全ではないと考える方が増え、キャリア自律の必要性が増しています。
若手の定着活躍の懸念
しかし、企業の立場からは、働く個人自らがキャリアを形成していくと、結果として転職につながるのではないかという懸念に思う企業経営者・人事も少なくありません。
実際ある調査では、市場価値が高い人材・キャリア自律に興味関心がある人材は、転職意向も高くなる傾向が明らかとなっています。
そうしたキャリア自律に関心がある人材や市場価値も高い人材に対しては、「正当な評価や報酬を与え、抜擢をする」などにより転職リスクは軽減できたと結果にあります。
今後重要になのは、企業のビジョン・経営戦略をもとに組織や事業が求めているポジションを開示し、個人のキャリアビジョンを共有する機会を設け、組織目標と個人目標の設定を紐付ける必要があります。
不確実性が高い時代、優秀な人材に定着・活躍してもらう事は企業にとってより重要性を増していきます。
弊社アクシスでも、転職エージェントとして転職市場・市場価値相場に精通したプロの視点から、これからの時代における若手人材の定着・活躍の考え方について皆さまへシェアできればという想いから、キャリア自律・若手社員の定着をテーマにオンラインセミナーを開催していますが、今後は大手企業を中心にこうしたテーマへの関心は高まっていくと予想しています。
企業と個人、双方のビジョンを実現できる新しい関係性・雇用関係が今後求められてくるのだと強く感じています。