再び、悪いこと言わないから、ネット銀行は使いなさんな!?
ほぼ2年前に書きました、拙稿「悪いこと言わないから、ネット銀行は使いなさんな!?」を現在でも少なくない人が読んでいるようです。タイトルが挑戦的なこともあって、一部には批判的なコメントも頂いています。「被害に遭うからネット銀行を使うな」とは「交通事故に遭うから、道を歩くな」と同じ、とか「とてもセキュリティ専門の大学教授とは思えない」という意見が多いようです。文章力が十分でないという反省点も若干顧みつつ、やはり十分に内容を理解されていないことでの批判だと考えています。要は「必要でないものを持つことは、邪魔になるだけでなく、思わぬ災いをもたらす」ということです。一般の利用者にとってネット銀行の便利さ、さらにサービスを提供する上での簡便さによる金利等の優遇は魅力的です。この便利さ、さらに事業者側のサービスにおける簡便さは利用者にとって大きな負担を強いることにもなるのです。つまり安全・安心の担保です。すべての人に対してネ、ット銀行の利用を控えるよう進言しているのではなく、ネット銀行のサービスを必要としない人は無理にネット銀行を使う必要はないと言っているのです。必要がないばかりか、今までの銀行業務の一部を自分で管理することになるゆえに、不正送金等のセキュリティ上のリスクが増大します。たとえば、通常、銀行での窓口業務は当然、銀行員が責任をもって対処していたわけです。ネット銀行ではパソコンやスマホが対処しているように見えますが、事実上はその利用者の責任において処理することとなり、利用者の不注意が大きな被害を及ぼすこととなります。
最近、格安スマホの問題が取り上げられています。
この記事にもあるように、格安スマホでのトラブルが増えているのです。しかし、このトラブルの原因は必ずしもサービス側にあるのではなく、消費者側の理解不足、勉強不足が原因という見方もあります。通常のスマホと全く同じで、格安であるわけがないのです。格安であるがゆえに、何かを捨てなければならないのです。
ネット銀行も使い易さやサービス内容ゆえに安全性や安心を犠牲にしているところがあります。正確に言えば、安全性や安心の担保を利用者に強いているのです。したがって、必ずしもその使い易さやサービスが必要でなければ、ネット銀行を使う必要がないのです。たとえば、頻繁に振り込みや入金確認を行ったりしないのであれば、ネット銀行を使う必要はありません。必要がないばかりか使うことによってセキュリティリスクが生まれるのですから、安心が大きく阻害されてしまいます。
セキュリティの世界の鉄則は、「安全性と利便性は互いに反比例(トレードオフ)」ということです。この比率は若干技術で補うことが出来るとはいえ、どちらも同時に完璧を求めることは不可能です。どちらに重きを置くかという問いにおいて、一般の人では安全性が優先されるべきでしょう。ネット銀行は便利ですが、その便利さを大きく享受できなければ、あるいは必ずしも必要なければ、トレードオフの関係にある安全性を優先すべきなのです。つまり、その場合は「ネット銀行は使いなさんな!」ということになるのです。