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賃貸か持ち家か…住居の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 賃貸か、それとも持ち家か…あなたはどのような種類の家に住んでいますか?(ペイレスイメージズ/アフロ)

・若年層は賃貸住宅が多いが、年を取ると持ち家の比率が増える。

・単身世帯は賃貸住宅の比率が高い。

・この11年の間では持ち家率に大きな変化は無し。単身世帯の20代でやや増加する動きか。

年齢階層別の住居の実情

住む場所が無ければ生活の維持は困難だが、その場所は賃貸住宅、持ち家など多様である。その実情を金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年実施している調査「家計の金融行動に関する世論調査」(※)の公開結果から確認する。

まずは単身世帯・二人以上世帯それぞれの、世帯主(単身世帯の場合は当然当人)における、最新分となる2016年調査分の住居の状況。仕切り分けは「自身購入持ち家」「相続・贈与持ち家」が持ち家、「親・親族に居候」が非持ち家で賃貸以外、「民間賃貸」「公団公営賃貸」「官舎社宅」が賃貸、「間借その他」「無回答」がその他。グラフではいくつかの選択肢をまとめている。また色合いは青系統が持ち家、赤系統が賃貸その他としている。

↑ 住居の状態(単身世帯、2017年、世帯主年齢階層別)
↑ 住居の状態(単身世帯、2017年、世帯主年齢階層別)
↑ 住居の状態(二人以上世帯、2017年、世帯主年齢階層別)
↑ 住居の状態(二人以上世帯、2017年、世帯主年齢階層別)

大よそ単身・二人以上世帯ともに、年を取るほど持ち家率が高くなる。年上になるに連れてその親も高齢化し、遺産相続などによって住宅を譲り受ける機会が増えるのが一つ、蓄財や年収の増加などに連れて住宅を所有できる余裕ができるのがもう一つの理由。他方、二人以上世帯の方が持ち家率が高いのは、家族を持つことによる持家の必要性の高まり、共働きで金銭的な余裕ができやすいこと、さらに単身世帯よりも住宅を相続されやすいことが理由として挙げられる。

また単身世帯では20代において11.1%の人が官舎社宅、つまり勤め先が用意した住宅に借り住まいをしている。家賃の優遇などの措置が取られているのが主な理由だが、同年齢階層の二人以上世帯では4.6%に留まっている。結婚した世帯では社宅住まいは、比較的難しいところがあるのかもしれない。

単身世帯は60代の回答が上限だが、その年齢階層で比較すると、単身世帯では持家率は6割近くに留まっているが、二人以上世帯では8割強の値を示している。高齢単身世帯に賃貸住宅住まいの人が多い実態は、他の調査でも指摘されているが、今件でもそれが裏付けられた形となる。健康面でのリスクをはじめ(一人暮らしの場合、急な健康のトラブルが生じた時に、対応が困難となりやすい)、多方面で気になる話に違いない。

経年による変化

今調査では連続した形で値を追えるのが2007年分以降であることから、2007年分以降の動向に関して確認をしたのが次のグラフ。

↑ 持ち家率推移(単身世帯、世帯主年齢階層別)
↑ 持ち家率推移(単身世帯、世帯主年齢階層別)
↑ 持ち家率推移(二人以上世帯、世帯主年齢階層別)
↑ 持ち家率推移(二人以上世帯、世帯主年齢階層別)

実のところ、傾向だった動きは見受けられない。特に二人以上世帯ではほぼ安定した動きを示している。単身世帯では20代で漸増のように見える流れがあるが、まだ傾向だったものとは認識し難い。少なくとも2007年以降において、各年齢階層で持ち家率の動向に目だった動きは無いことは確かである。

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※家計の金融行動に関する世論調査

直近分となる2017年分は二人以上世帯においては、層化二段無作為抽出法で選ばれた、世帯主が20歳以上でかつ世帯員が2名以上の世帯に対し訪問と郵送の複合・選択式で、2017年6月16日から7月25日にかけて行われたもので、対象世帯数は8000世帯、有効回答率は47.1%。単身世帯においてはインターネットモニター調査で、世帯主が20歳以上70歳未満・単身で世帯を構成する者に対し、2017年6月23日から7月5日にかけて行われたもので、対象世帯数は2000世帯。過去の調査も同様の方式で行われている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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