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125回目生誕日を迎えたベーブ・ルースと大谷翔平との絶対的な違いとは?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
2月6日に125回目の生誕日を迎えたベーブ・ルース氏(写真:ロイター/アフロ)

【125回目の生誕日を迎えたベーブ・ルース氏】

 現地時間の2月6日、SNS上にはなぜかベーブ・ルース氏に関する情報が溢れていた。ちょっと気になり調べてみたところ、この日はルース氏の125回目の生誕日だったことが分かった。

 生誕日に様々な投稿がされるほど、ルース氏は今も人々に愛される存在であることを改めて実感させられた。

 先日も全米中を賑わせたトム・ブレディ選手の現役引退が報じられた際も、スポーツ専門サイトの『Bleacher Report』が以下のようなツイートを投稿している。

 すでにNFL史上最高のクォーターバックと謳われるブレディ選手の功績を称えるものだが、ブレディ選手とともに登場する各スポーツ界のレジェンドの中に、マイケル・ジョーダン氏やタイガー・ウッズ選手、セリーナ・ウィリアムス選手らに混じり、ルース氏が入っているのは分かるだろう。

 米国民の意識の中では、野球界においてルース氏が今も圧倒的なレジェンドであるようだ。

【二刀流でルース氏を上回った大谷翔平選手】

 ルース氏がこれだけ人々の関心を集めているのも、昨年改めて彼の功績を考えさせられる出来事があったのも関係しているだろう。いうまでもなく、人々に衝撃を与えた大谷翔平選手の二刀流の活躍であり、その比較対象者としてルース氏が登場し続けることになったからだ。

 残念ながら1918年にルース氏が記録している「2桁勝利+2桁本塁打」には届かなかったが、投打5部門で100超え(138安打、103得点、100打点、130.1投球回、156奪三振)を達成し、1シーズンの二刀流の活躍としてはすでにルース氏を上回っているとんぼ声が出ているほどだ。

 そうした人々の評価が、満票でMVPを受賞するという結果にも繋がったわけだ。

 それでは大谷選手が現在のような活躍を続けていけば、いつしか彼もルース氏と並び称されるような伝説的な存在になれるのだろうか。残念ながら答えは「ノー」だ。実は現在の大谷選手には、絶対的に不足している要素があるのだ。

【レジェンドたちに必要不可欠な「優勝」という2文字】

 これまで通算本塁打数や二刀流で知られてきたルース氏だが、MLB在籍22年間で本塁打王12回、打点王5回、首位打者1回のタイトルを獲得しているにもかかわらず、実はMVPを受賞したのは1923年の1度しかない(ちなみに1929年までは一度MVPを受賞すると候補から外されていた)。

 つまり1923年以外は、すべてのシーズンでルース氏を上回る活躍をしている選手がいたということだ。それではなぜ彼が今も尚レジェンドとして賞賛されているかといえば、彼が“圧倒的勝者”だからだ。

 ルース氏は1918年に二刀流としてレッドソックスで初のワールドシリーズ制覇を経験すると、1920年にトレードされたヤンキースでも主軸打者として6度のワールドシリーズ制覇に導くなど、ヤンキースの黄金期を築き上げた立役者の1人だ。

 ワールドシリーズ制覇7回は、ヨギ・ベラ氏(10回)、ジョー・ディマジオ氏(9回)に次ぐMLB史上3位タイの大記録だ。やはり野球選手にとって最も評価を受け、最高の勲章といえるのがワールドシリーズというタイトルなのだ。

 それを獲得できていない選手がレジェンドとして称えられるのは、やはり難しいことだ。

【2016年の活躍が求められる?】

 前述のツイートに登場する各スポーツ界のレジェンドたちも同様だ。個人スポーツ、団体スポーツにかかわらず、個人成績はさることながら各競技で王者として君臨してきた選手たちばかりだ。

 特にブレディ選手やジョーダン氏、ウェイン・グレツキー氏らの団体スポーツのレジェンドたちは、彼らがチームを牽引して王者に導いたというカリスマ性も秘めている。

 現在MLBで最も評価を受けているマイク・トラウト選手がルース氏のような評価を受けられていないのも、未だワールドシリーズ出場さえ叶わないことが間違いなく影響している。

 仮に大谷選手が2016年に日本ハムを日本一に導いた活躍をMLBの舞台で成し遂げたとしたならば、彼の評価はまさにレジェンド級まで跳ね上がることだろう。

 もちろん大谷選手も個人記録ではなく、チームの勝利のために日々プレーし続けている。果たして大谷選手は、レジェンドたちのようにチームを頂点に導くことができるだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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