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日本が最下位に沈んだ理由。コロンビア戦全選手採点

杉山茂樹スポーツライター

今、多くの人が落胆している理由は、グループリーグ最下位に終わった前々回のドイツW杯ではなく、ベスト16入りした前回南アフリカW杯の成績に基づいている。 

そこに間違いのもとがある。

前回のベスト16は率直に言ってマグレだった。そのグループリーグ最終戦。立ち上がりからデンマークに押し込まれ、劣勢を強いられる中で、本田、遠藤のFKが立て続けに決まったわけだが、そんな展開は100回に1回も望めない。滅多に出ないサイコロの目が出たことで、ベスト16入りを果たしたが、それを実力通りの結果だと思い込んでしまった。次も普通にやれば、ベスト16には行くだろうと思っていた。

危機意識の欠如。謙虚さ不足。

それが4年後の今回、日本がグループリーグ最下位に沈んだ最大の理由だと僕は思う。ザッケローニは率直に言ってダメだった。すべてにおいて足りない監督だった。しかし、その彼を選んだのも、4年間代表チームを預けたのも日本サッカー協会だ。またそこに、メディアもファンもプレッシャーを掛けてこなかった。その多くが4年前の成績に基づき、楽観的になっていた。

選手は全力を出したと思う。ベストを尽くしたと思う。ファンやメディアは、コロンビアに大敗して間もない今、選手に怒りの矛先を向けたくなるかもしれないが、本来の順番は違うはずだ。彼らにはきちんととした指導、教育を受けられなかったという言い分がある。

ザッケローニの指導力はそれほど低かった。作戦も、戦術も、メンバー交代も酷かった。この4年間、彼は視察と称して欧州各地を回ったということらしいが、いったいどこで、どんなサッカーを見てきたのか。

日本代表で採点が一番低い人物はずばり、監督である(採点は10点満点、平均5.5点)。

GK

川島永嗣 5.5 

止められるシュートは1本もなし。大きな判断ミスもなし。だが、もう10分試合をすれば、少なくとも2点は決められていた。コロンビアを向こうに回すと、川島の存在感はとても小さかった。GKに無力さを感じた試合だった。コロンビアと日本のレベルはそれほど離れていた。

DF

内田篤人 5.5 

ザッケローニは「ボール支配率の高い試合」を目指してきたと語ったが、サイドバックが単騎でサイド攻撃を担うサッカーではそれは不可能だ。プレッシャーの少ない、サイドでボールを保持する時間を増やさなければ、ボール支配率は上がらない。その登場回数の少なさに、ザックジャパンの根本的な問題がある。

今野泰幸 4.5 

前半、相手にPKを献上するファウルを犯す。決定的なミスパスも1本あった。初戦のコートジボワール戦こそ先発を外れたが、彼はチームのリーダーにならなくてはならない存在。以降、元気のないプレイに終始したのは問題だ。一呼吸置いたボール操作とか、逆にテンポを上げる球出しとか、最終ラインに攻撃のリズムを決定する機関があるチームには安定感があるが、今野はそうした存在になれなかった。元中盤選手であるにもかかわらず。ベテランなのにリーダーシップを発揮できなかった責任は大きい。

吉田麻也 5 

全体的にはよく健闘した。が、最終ライン一枚で、コロンビアの攻撃は止められない。吉田の守備能力がもうワンレベル高くても、大敗という結果に変わりはなかった。

長友佑都 5

単独プレイが多すぎ。それは長友の問題というよりチームの問題。ザッケローニの問題だ。サイドで確実にボールを保持し、安定したサイド攻撃ができなければ、ザッケローニが目指してきた(らしい)「ボール支配率の高いサッカー」は望めない。長友自身のプレイもケガの影響からか、一時期に比べるとキレが鈍っていた。

MF

青山敏弘 5.5

遠藤が長谷部とコンビでスタメン出場し続けていた時、本番で長谷部の隣りでプレイする選手が青山になると予想した人はどれほどいたか。しかし、34歳になる遠藤の本番での危うさについては、誰もが危惧していたはず。予想通りのことが起きたに過ぎないが、ザッケローニにはその準備ができていなかった。遠藤を引っ張りすぎた代償は高くついたと言える。青山は悪くなかったが、馴染んだ存在には見えなかった。

長谷部誠 5.5 

長谷部は前の2戦より、前に出ようと積極的にプレイした。ボールを前に運ぼうとしていたが、自分のことに精一杯という感じで、全体を見る余裕がなかった。長谷部はなぜキャプテンを任されたのか。チームは事実上「本田ジャパン」だった。指令系統が2つあるようだった。そこにちぐはぐさが垣間見られた。長谷部がキャプテンだというなら、本田より偉そうにプレイしているべきだったのだ。長谷部の立場は中途半端。真面目で一生懸命にプレイする姿。しかしながら、キャプテンとして余裕のないその姿は、見ていて少々痛々しかった。

香川真司 4.5 

大会を通して大ブレーキ。そもそも香川の背番号はなぜ10だったのか。10番は1トップ下を務める、本田の方がよっぽどスッキリしている。「本田ジャパン」なのだから。だが、香川は負けじとその1トップ下付近に侵入。チームは滅茶苦茶になった。そしてザッケローニはそれさえも注意できなかった。コロンビア戦。香川にはシュートチャンスが何度かあった。だが、キックは当たらず。インステップキックを満足に蹴ることができない10番では勝てない。

本田圭佑 5 

前の2戦に比べ、高い位置でプレイした。しかしもはやそのプレイにFWとしての迫力はない。右サイドで相手のサイドバックと1対1になったシーンが何度かあったが、縦抜けを図ることは一度もなく、すべて、その場からのセンタリングに終始した。前半の岡崎のゴールはそこから生まれたが、コロンビアの選手は、アシスト役の本田に、怖い選手だとの印象を持った様子はなかった。本田が4番で、香川が10番。長谷部がキャプテンで、日本サッカー界で最多のキャップ数を誇る遠藤がサブ。中心選手が実はピッチの中に綺麗に収まっていなかったザックジャパン。根本的な部分に問題を抱えていたといえる。

岡崎慎司 6.5

同点弾のヘディングシュートは、岡崎ならではの味のあるシュートだった。試合を一瞬、盛り上げたが、その他のプレイはサッパリ。後半には中に入り込む時間が多かったため、布陣は4-2-3-1ならぬ4-2-2-2に「成り下がって」いた。相手が強かったことも確かだが、日本が自爆した試合と捉えたほうがいい。キチンと戦えば、もう少し良い試合ができた。僕はそう思っている。

FW

大久保嘉人 5 

4-2-3-1のサイドで起用されるより、のびのびとプレイしていたが、みんなが真ん中に入り込んでくるために、逆に攻撃は混乱した。なぜ揃いも揃って、みんなが中に入りたがるのか。トップ下にこだわるのか。変な幻想が日本のサッカー界にはいまだ確実に存在する。この癖をザッケローニは治せなかった。手も付けられなかった。放置していたと言ったほうがいい。コロンビアの攻撃との違いはそこになる。したがって日本がボールを奪われる場所は真ん中。詰まってボールを奪われ、コロンビアに逆襲を浴びる。後半はその連続だった。なぜそれが分からないのか。ザッケローニは何を見ているのか。選手もなぜそのことに気付かないのか。学習効果のない集団と言われても仕方がない。

交代選手

山口蛍 4.5 

終盤、ゴール前でボールを受けたが、シュートを狙わず無責任なヒールパスに及んだ。全体的にそつなくこなすが、決定的な仕事には関与しようとしないタイプに見えた。このままでは一流にはなれない。

柿谷曜一朗 5.5 

ロスタイム、交代で入った相手の大ベテランGKモンドラゴンに向けてシュートを放つがセーブにされる。コロンビアサポーターで埋まるスタンドを大喜びさせる結果になった。

清武弘嗣 -

監督

ザッケローニ 3 

推定年俸2億円、4年間の総額は8億円。それに相応しい監督だったとはまったく思えない。この4年間で試合後の監督会見に40回以上立ち会っているが、サッカー学の向上に役に立った台詞(せりふ)はひとつもなかった。良いことを言うなと感心させられたこともない。才気というものを感じないのだ。「おおやるな!」「そうきたか!」と思わせる意外性溢れるアイデアに出会った試しがない。コロンビア戦。1-2に逆転されれば、後がないチームの監督は一か八かの采配に打って出るものだ。4-3-3にしたり、3バックにしたり、ストライカーを2人並べたり、思い切った戦術的交代に出たり、無駄な抵抗と言われようがとにかく何か手立てを講じるものだ。ギリシャ戦では、それが「ハイボール作戦」だったワケだが、技術委員長にそれが禁じられたコロンビア戦では、打つ手なし。3人目の交代で香川に代わってピッチに登場したのは、使い道が見えない清武。観戦意欲はその瞬間、大いに減退させられた。

(集英社 Web sportiva 6月25日掲載原稿)

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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