佐世保同級生殺害事件容疑少女の父自殺報道:被害者家族の支援・加害者家族の支援のために
■佐世保高1女子同級生殺害事件、逮捕された少女の父親自殺報道
今日、ショッキングなニュースが入ってきた。
■精神鑑定と今後捜査、更正への影響
佐世保高1女子同級生殺害事件「人を殺してみたかった・遺体をバラバラにして解剖したかった」と供述している少女。
逮捕された少女は、現在精神鑑定を受けている。精神鑑定は、脳波や血液検査のような検査だけではない。おそらく、鑑定人が少女との人間関係を徐々に作りつつ、対話を進めていたことだろう。
今回の出来事をどの段階で少女に知らせるのかはわからない。しかし、いずれにせよスムーズな精神鑑定の進行に悪影響があるだろう。実母はすでに死去し、父も亡くなったことで、生育歴を調べていくにも支障があるだろう。
少女は、有罪になったとしても、死刑にも終身刑にもならない。少年法の精神からも、また実際上からも、彼女の更正プログラムを作っていかなければならない。今回のことで、困難度はさらに増すことになるだろう。
少年事件では、加害者少年が少年院から出てみると、両親は離婚し、家は売り払われていたといったケースもある。これでは、更正は難しい。今回の少女も、実の両親がいない社会の中で、更正をしていかなければならなくなった。
■加害者家族の自殺
家族の逮捕も、家族の自殺も、とてもつなく衝撃的だ。
加害者の家族が自殺することは、残念ながら、時おり起きている。
2008年に発生した秋葉原通り魔事件の加害者加藤智大の弟は、逮捕直後に手記を週刊誌に発表などしていたが、2014年に自殺している。彼は死の直前、週刊現代のインタービューに答えて語っている。
「あれから6年近くの月日が経ち、自分はやっぱり犯人の弟なんだと思い知りました。加害者の家族というのは、幸せになっちゃいけないんです。それが現実。僕は生きることを諦めようと決めました。死ぬ理由に勝る、生きる理由がないんです。どう考えても浮かばない。何かありますか。あるなら教えてください」。
(『秋葉原事件』加藤智大の弟、自殺1週間前に語っていた「死ぬ理由に勝る、生きる理由がない」)
東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の加害者宮崎勤(1989年逮捕、2008年死刑執行)の父親も、1994年に自殺している。
父親は自宅を売却し、その代金を被害者の遺族に支払うようにした後、自殺している。この自殺に対して「現実逃避であり被害者家族を顧みない行為である」と非難する識者もいた。
今回の父親の自殺も、社会的に言えば無責任な行為と言われてもしかたがない。
ただ、自殺予防の観点から言えば、自殺を潔いなどと美化することも、また亡くなった人を責めることもしたくはない。
■被害者の家族・加害者の家族
犯人に家族を殺された被害者遺族は、地獄の苦しみを味わっている。
そしてこれまでの事件の加害者家族も。
■罪意識と恥意識
悪いことをしてしまったとき、大失敗をしたとき、臨床社会心理学的に言えば、人は「恥意識」を持つ時と、「罪意識」を持つときがある。
イエスを銀30枚で裏切ったユダは、自殺している。イエスを三度知らないと拒んだペテロは、激しく自分を責めながらも、逃げ出さず、許されて、キリスト教の土台を作っている。
恥意識は、自分の行為を後悔するが、自分が窮地に陥っていることに苦しみ、「穴があったら入りたい」という感覚となり、人間関係から退却する。さらに心が追いつめられると、自分を否定し、社会を否定し、破壊的行動に至る。
一方、罪意識は、自分の誤った行為を強く意識し、謝罪の思いとつぐないの思いがわく。仮に許してもらえなくても、努力し続けようとする。人間関係から逃げず、建設的行動がとれるのだ。
被害者側も、加害者側の心からの悔い改めを、求めているのではないだろうか。
■被害者家族支援と加害者家族支援
犯罪を起きたときには、犯人逮捕と被害者保護をすること。正しい裁きが行われ、適切な制裁が行われること。同様の犯罪の発生を防ぐこと。それが、もちろん大切だ。その上で、すべての関係者を支援することが、必要ではないだろうか。
崩壊した家庭の中から、新たな加害者や、新たな悲劇が生まれることもある。それは、犯罪被害者にとっても、新たな重荷になりかねない。
「ワールド・オープン・ハート」は、加害者側の家族を支援する団体である。私の家族も被害者になるかもしれないし、私の家族も逮捕されることもあるかもしれない。
家族の再犯を防ぎ、新たな被害者の発生を防ぐためにも、家族が癒され力を持つことが必要ではないだろうか。
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