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乾癬の皮膚症状と関節炎を同時に改善!最新の乾癬性疾患治療薬とは?

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(提供:イメージマート)

【乾癬性疾患の概要と診断】

乾癬は皮膚に炎症が起こる慢性的な疾患で、一部の患者さんでは関節炎を併発することがあります。この乾癬性関節炎を含めた病態を「乾癬性疾患」と呼びます。乾癬の皮膚症状は、赤くてかゆみのある斑点や鱗屑(りんせつ:皮膚の表面がボロボロとはがれ落ちること)が特徴的です。一方、乾癬性関節炎は手足の指の関節や脊椎に炎症が生じ、痛みや腫れが現れます。

乾癬性疾患の診断には、皮膚の症状と関節の症状を総合的に判断する必要があります。皮膚科や整形外科、リウマチ科の専門医が連携して診察にあたることが大切です。血液検査や画像検査なども行い、他の類似した疾患を除外していきます。乾癬性関節炎の確定診断には、CASPAR分類基準という国際的な診断基準が用いられます。

【乾癬性疾患の発症メカニズムと治療ターゲット】

乾癬性疾患の発症には、IL-23やIL-17という炎症性サイトカインが深く関与していることが分かってきました。IL-23は、病原性のあるTh17細胞への分化を促し、IL-17の産生を増加させます。IL-17は皮膚や関節の炎症を引き起こす重要な物質です。また、TNFαという炎症性サイトカインも乾癬性疾患の病態形成に関わっています。

これらのサイトカインをターゲットとした生物学的製剤が次々と開発され、乾癬性疾患の治療は大きく進歩しました。IL-23を阻害するグセルクマブ、IL-17を阻害するセクキヌマブやイキセキズマブ、TNFα阻害薬のアダリムマブなどが代表的な薬剤です。また、JAK阻害薬と呼ばれる低分子化合物も登場し、選択肢が広がっています。今後も乾癬性疾患のメカニズム解明が進めば、さらに優れた治療薬が登場すると期待されます。

【乾癬性疾患患者のQOL改善と課題】

乾癬の皮膚症状は見た目の問題だけでなく、強いかゆみのために睡眠障害をきたしたり、対人関係に支障をきたしたりと、QOL(生活の質)を大きく損ねます。乾癬性関節炎が加わると、関節の痛みや動きの悪さで日常生活にも影響が出てきます。治療の目標は、皮膚と関節の炎症を抑えてQOLを改善することです。

ただし、現在の治療薬でも十分な効果が得られない患者さんが一定数存在するのが課題です。初回治療で効果不十分だった場合、異なる作用機序の薬剤に切り替えることで改善が得られることもあります。治療は患者さん一人ひとりの状態に合わせて、専門医が薬剤を選択していく必要があります。また、体重増加や喫煙など生活習慣の改善も大切です。

乾癬は皮膚だけでなく全身に影響する疾患であり、専門医による継続的な管理が必要です。患者さん自身も病気に対する理解を深め、積極的に治療に参加していくことが重要だと思います。今後ますます、乾癬性疾患の治療は進歩していくでしょう。

【参考文献】

1. Pelechas E, et al. State of the Art Review on the Treatment of Psoriatic Disease. Mediterr J Rheumatol 2024;35(1):66-72.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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