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Meta初の減収 どうなる「メタバース」先行投資

山口健太ITジャーナリスト
Meta創業者でCEOのマーク・ザッカーバーグ氏(Metaの動画より)

米Meta(メタ)が発表した2022年4-6月期決算は、同社として初めての「減収」が話題となっています。景気減速などを背景に広告収入が伸び悩む中、赤字続きの「メタバース」への先行投資は続けられるのでしょうか。

SNSの広告収入に逆風

Facebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)といったSNSで知られるMetaは、SNS画面上の広告枠を商品として売っており、売上のほぼすべて(約98%)を広告が占めています。

その売上高は約3兆8000億円、純利益は約8700億円と、SNS企業として最大手であることは言うまでもありませんが、4-6月期には売上高が前年同期を約1%下回る減収となりました。

Metaの4-6月期売上高は約1%の減収となった(決算資料より、筆者作成)
Metaの4-6月期売上高は約1%の減収となった(決算資料より、筆者作成)

米国では景気後退の兆しが見えており、広告費は真っ先に削られてもおかしくありません。SnapやTwitterといった他のSNS企業と同様に、Metaもデジタル広告の低迷に直面しているようです。

Metaの広告事業にはさまざまな逆風が吹いています。iOS 15の新機能「アプリのトラッキングの透明性」(ATT)では、アプリによる追跡をユーザーが拒否できるようになり、Facebookが得意としてきたターゲティング広告に悪影響を与えています。

広告市場では米Amazon.com(アマゾン)の好調が話題です。何か売りたいものがある広告主は、暇つぶしに見ている人が多いSNSよりも、これから買い物しようとする人が見ているアマゾンに広告を出したほうが効果的と考える可能性があります。

SNSのトレンド変化にも注目です。いま最も勢いがある「TikTok」は、Z世代が自撮り動画を共有するだけにとどまらず、買い物やコンテンツ消費などオンラインでのさまざまな行動の起点になりつつあり、そこに向けた情報発信も盛んです。

Metaの対抗策はInstagramのショート動画「リール」です。しかしリールの収益化はまだ初期段階で、短期的にはリールが伸びれば伸びるほど売上の足を引っ張ります。事業の柱になるまで「数年」単位で見ているようです。

今後の競争において、Metaが重視している技術の1つが「AI」です。優れたAIがあれば、ユーザーをスマホの画面に釘付けにするようなショート動画を次々と表示できるようになり、より多くの広告収入を得られると考えられます。

メタバースへの先行投資は続くか

昨年10月、社名をFacebookから「Meta Platforms」に変更した同社ですが、現段階ではSNS広告の会社であり、メタバースへの先行投資は赤字が続いています。

4-6月期の営業利益の内訳をみると、SNS広告では1兆5000億円の黒字に対して、メタバース事業はほとんど売上が立っておらず、3700億円の赤字です。

最近ではVRヘッドセットの「Meta Quest 2」を値上げするなど、赤字を減らそうという努力は感じられるものの、この程度では焼け石に水でしょう。

Meta Quest 2は8月から日本や米国で値上げを実施した(MetaのWebサイトより)
Meta Quest 2は8月から日本や米国で値上げを実施した(MetaのWebサイトより)

こうした状況を踏まえ、決算発表では投資の絞り込みや従業員数の増加の抑制といった対策が語られています。ロイター通信によると、ザッカーバーグ氏は従業員向けに「事業計画が楽観的すぎた」と発言したといいます。

ただ、これはメタバースへの投資をやめるという意味ではなさそうです。絞れるところは絞りつつ、メタバースへの投資を増やしていくことをCFOのDave Wehner氏は示唆しています。

真夏でも快適に使えるメガネ型のデバイスなど、ハードウェア面でのブレイクスルーも期待されるだけに、Metaのような企業が本気で投資を続けてくれるのはメタバース市場にとって大きな追い風になるでしょう。

一方で、メタバース事業が本格的にMetaの収益に貢献するのは「2030年代」ともザッカーバーグ氏は見ています。続く7-9月期の売上見通しも厳しい中で、投資家がどこまで付いてきてくれるのかが注目ポイントになりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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