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MLB敏腕記者が解説! 今シーズン得をしたのは昨年までに引退もしくは解雇された大型契約選手たち?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
2017年に現役引退しながら今年も約26億円のサラリーを得られるフィールダー氏(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLB敏腕記者が寄稿した興味深い記事】

 5月12日に現地時間の選手会との協議に入り、いよいよ2020年シーズン開幕に向け最終段階に入ったMLB。

 だが本欄でも報告しているように、選手会はMLB案にある「収益分配性(revenue sharing)」がサラリーキャップに当たるとして強く反発する姿勢を見せており、まだ予断を許さない状況にある。

 そんな中、MLB界きっての敏腕記者として知られるケン・ローゼンタール記者がスポーツ専門サイトの『THE ATHLETIC』に非常に興味深い記事を寄稿している。

 2020年シーズンがどんなかたちで実施され、またはキャンセルされようとも、大型契約を結びながら引退もしくは解雇された選手たちは、シーズンに関係なく高額サラリーを受け取れるというものだ。

【すでに大型契約により年俸支払いが確約】

 ローゼンタール記者がその象徴的な例として挙げているのが、2017年に現役引退したプリンス・フィールダー氏だ。

 彼は2012年1月に、タイガースと9年総額2億1400万ドル(約229億円)の大型契約を結び、2013年11月にレンジャーズにトレードされた。しかし2016年シーズン途中に2度目の首のヘルニア手術を受け、これ以上の現役続行が難しくなり2017年に現役引退を表明。同時にレンジャーズから解雇された。

 しかし彼の大型契約は、期間内のサラリー支払いが保証されており、契約最終年となる2020年も2400万ドル(約26億円)が支払われることになっている。

 ローゼンタール記者が関係者に確認したところでは、新型コロナウイルスの影響でレンジャーズと年俸額削減で合意することも有り得るが、すでに40人枠から外れており、基本的には統一労働規約(いわゆるCBA)で全額の支払いが保証されているという。

【ウェイン・チェン投手も得した1人に】

 フィールダー氏と同様のケースは、他にもある。

 昨シーズン終了後にマーリンズから解雇されたウェイン・チェン投手も、その1人だ。彼はマーリンズとの間に2020年まで契約が残っており、今シーズンも2200万ドル(約24億円)のサラリーが保証されている。

 またザック・コザート選手もジャイアンツから1216万7000ドル(13億円)、デビッド・ライト選手がメッツから1200万ドル(約13億円)、トロイ・トゥロウィッキー選手がブルージェイズから1800万ドル(約19億円、ただし2022年まで分割払いで合意)──のサラリーがそれぞれ保証されている。

 さらに現在は選手会との間で支払い義務があるかどうかで審議中ではあるが、昨シーズン終了後にヤンキースから解雇されたジャコビー・エルズベリー選手は、契約通りの支払いが求められた場合は、今シーズンは2600万ドル(約28億円)のサラリーが保証されることになっている。

【現役選手は年俸額の半減は必至】

 一方の現役選手は、どんなかたちであれサラリーが大幅カットされるのは決まっているのだ。

 前述通り、現在はMLBと選手会が「収益分配性」で攻防を繰り広げている最中だが、仮に選手会の主張が全面的に受け入れられたとしても、MLB案によれば、今シーズンの公式戦は通常シーズンの約半分の82試合に留まることになる。

 そうなれば選手たちの実質労働日数も半分になるので、選手たちは当然のごとく契約上の年俸額の約半分しか受け取れないことになるわけだ。

 ということは、もしフィールダー氏にレンジャーズからサラリーの全額が支払われるようなことになれば、今シーズンの実質的な最高年俸選手はフィールダー氏になりかねないのだ。

 まさに大型契約の負の遺産といえるだろう。危機的状況を迎えているチームにとってはかなり手痛い出費に他ならない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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