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渡辺王将VS広瀬八段の王将戦佳境――第69期王将戦七番勝負中間展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
9戦全勝で名人挑戦も決め充実の渡辺王将(筆者撮影)

 渡辺明王将(35)に広瀬章人八段(33)が挑戦する第69期大阪王将杯王将戦七番勝負(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)は第4局までを終え2勝2敗のタイ。第5局は3月5、6日に大阪市中央区「KKRホテル大阪」で行われる。

 勝った方がタイトルに「王手」となる岐路の一局を各種データから予想してみた。

調子は渡辺王将がまさる

<渡辺王将の最近10局>

1月29日 順位戦A級

対糸谷哲郎八段 ○

2月1日 棋王戦五番勝負第1局

対本田奎五段 ○

2月6日 叡王戦挑戦者決定戦第1局

対豊島将之竜王・名人 ○

2月8、9日 王将戦七番勝負第3局

対広瀬八段 ○

2月13日 叡王戦挑戦者決定戦第2局

対豊島竜王・名人 ●

2月16日 棋王戦五番勝負第2局

対本田五段 ●

2月20、21日 王将戦七番勝負第4局

対広瀬八段 ●

2月24日 叡王戦挑戦者決定戦第3局

対豊島竜王・名人 ●

2月27日 順位戦A級

対三浦弘行九段 ○

3月1日 棋王戦五番勝負第3局

対本田五段 ○

<広瀬八段の最近10局>

1月9日 叡王戦本戦

対渡辺明王将(三冠) ●

1月12、13日 王将戦七番勝負第1局

対渡辺王将 ●

1月17日 朝日杯将棋オープン戦本戦

対阿久津主税八段 ●

1月20日 順位戦A級

対佐藤康光九段 ●

1月25、26日 王将戦七番勝負第2局

対渡辺王将 ○

1月29日 順位戦A級

対佐藤天彦九段 ○

2月5日 竜王戦1組

対佐藤天彦九段 ●

2月8、9日 王将戦七番勝負第3局

対渡辺王将 ●

2月20、21日 王将戦七番勝負第4局

対渡辺王将 ○

2月27日 順位戦A級

対木村一基王位 ●

 渡辺王将は並行して行われる棋王戦五番勝負ほか、過密日程で2月に8局対局をこなし疲労が蓄積しているのは間違いない。ただ途中4連敗はあったものの先月末から盛り返しトータル6勝4敗と復調気配だ。

 広瀬八段は渡辺王将との直接対決を含み直近3勝7敗と負け越し。相手はトップ棋士ばかりとはいえ、本人も納得していないだろう。

 調子を見る限り、順位戦A級で9勝0敗の全勝で名人挑戦を決め、勢いに乗る渡辺王将有利と見る。

先手番キープがカギ

 第5局は渡辺王将の先手番。公式戦の先手番勝率は5割2分強というデータがあるが、持ち時間が長く実力者同士が対決するタイトル戦では「先手番キープ」がより重要だ。

 2019年度タイトル戦先手番勝敗は以下のとおり(開幕順)。

 名人戦七番勝負=3勝1敗(1千日手)

 叡王戦七番勝負=2勝2敗

 棋聖戦五番勝負=1勝3敗

 王位戦七番勝負=4勝3敗

 王座戦五番勝負=1勝2敗(1千日手)

 竜王戦七番勝負=4勝1敗

 王将戦七番勝負=4勝0敗

 棋王戦五番勝負=3勝0敗

 棋聖戦、王座戦のように後手が勝ち越したシリーズもあるが、トータル先手22勝12敗(2千日手)で6割4分7厘と公式戦全体の勝率を大きく上回っている。

 不利とされている第5局の後手番で広瀬八段が勝つ、あるいは千日手(先後交代で指し直し)で先手番を握れば、奪取への視界が開けるだろう。

 戦型は最近の渡辺王将の選択傾向から矢倉か角換わりと予想する。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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