「生きているけど・・・」アマルさんからの連絡 終わらない空爆 足りない水と燃料 電気なき病院の窮状
イスラエル軍による激しい空爆が続くパレスチナ自治区ガザ。
今月7日以降、22日までに4,385名が死亡、13,000名以上が負傷している。
死者のうち1,756名が子どもだ。
8bitNewsでは、そのガザで3歳と生後まもない赤ん坊を守りながら避難を続ける一人の女性の声を今月10日に取り上げた。
アマル・アブ・モアイレクさん。大学では機械工学を学び、ガザで行われたビジネスコンテストで準優勝を果たしている。主催はガザで起業支援を行ってきた日本の団体で、その後、アマルさんも来日している。
アマルさんは難民キャンプの家庭にも設置できる小さな発電機やソーラーパネルを設置する会社を友人と営んでいたという。
そのアマルさんから、JVC・日本国際ボランティアセンターの現地駐在、大澤みずほさんの元にメッセージが届いたのが9日だった。
ミサイル攻撃による爆発音が続く中、子どもたちに「大丈夫よ、大丈夫よ」と声をかける音声が添えられていた。
メッセージの一部をあらためて下記に引用する。
このメッセージを受け取った後、アマルさんの消息はわからなくなった。ところが、一昨日、アマルさんから大澤さんに「生きている」と連絡が入った。
アマルさんは、現在、両親の家があるガザ中部のヌセイラートという街に避難をしているものの、イスラエル軍による空爆が激しくなり、昨日の未明の爆発で、隣の家の一家が全員死亡したという情報も添えられていたという。
今、現地で何が起きているのか。大澤さんとリモートで繋いで緊急でインタビューした。映像と合わせてご覧いただきたい。
■空爆の中、生後1ヶ月の赤ん坊、そして3歳の息子と共に避難
堀)
早速ですが、よろしくお願いします。まずアマルさんからはどのような連絡があったのでしょうか?
大澤)
アマルさんとは今月15日の日曜日から連絡がつかない状況が続いていました。インターネットが全く使えない状況が何日も続いていました。
昨日夜、やっと連絡が来ました。
一瞬、ビデオコールがあったのですが、画面が固まってしまって話はできませんでした。しかし、そのときは、私も会ったことがあるアマルさんのお父さまや、アマルさんご自身、そして9月に生まれたばかりの娘さんの顔が一瞬だけ映りました。
その後、テキストでメッセージを続けてたんですけど、今日のこちらの現地時間の日中に、午前中ですね、午前中にアマルさんから「今日の未明に隣の家が空爆された」という連絡が来ました。
昨日の夜から彼女がいるヌセイラートという地域が結構激しく空爆を受けているっていうのをニュースで見てすごく心配してたんですけど、まさか彼女の家の隣に落ちると思って思っていなかったというか。
隣のご家族は皆さん、亡くなられてしまったということです。
そして、アマルさんのご家族の中にも軽傷ではあるものの、怪我をされた方もいてもう本当に家にはいられないような状況なので、今はその近くにあるお兄さんのお家に皆さんで身を寄せているっていうことでした。
堀)
中部の地域でも空爆が激しくなると、さらにまた南の方に避難をということになるんでしょうね。
大澤)
そうですね。アマルさんも言っていたのですが、これ以上ガザには逃げるところがなくて、一旦南に逃げた方たちも、もう一度北の方に戻っているという話も聞きます。南も結局空爆がずっと続いているような状況なので。「動いても動かなくても・・・」という状況が背景にあります。
堀)
支援車両がトラックにして20台分という報道がありましたけれども、実際にはそれは全く足りるような十分な数じゃないですよね。
大澤)
そうですね。トラック20台の中には4万4,000本の水が含まれていたということなんですけどそれも、2万2000人ぐらいがやっと1日過ごせるぐらいの水しかなくて。ガザには、その100倍の人たち、220万人の方たちがいるので到底足りないです。今日も現地のお昼ぐらいに17台追加でトラックが入ったんですけれども、ほとんどは医療物資で、食糧は1台か2台ぐらい。全員が生き延びるには全く足りていないです。
■病院ではまもなく電気が切れる 患者30名の命に直結
堀)
燃料なども全く足りてない状況ですよね?
大澤)
私達と繋がりのある病院、エル・ワファ病院がガザシティの中に一つあります。
そこの院長からも情報いただいてるんですが、今、自前のソーラーパネルと残っているわずかな燃料で何とかやりくりしているというのですが、もう本当に底をついてしまいそうです。
病院の中には医療機器で命を繋いでいる方もたくさんいます。電気がなくなるとその病院だけで30人の患者さんに影響がでてしまうとのことです。
今、院長は緊急で色々なところに支援のお願いを出してるみたいなんですけれども、やはりなかなか外から物資や援助を入れることが本当に厳しいというか。
昨日も今日も、トラックの中には燃料が含まれていないので本当に懸念されています。
堀)
院長はその他、どういったことを大澤さんに伝えてくれてましたか?
大澤)
とにかくご本人のことよりも、やはり患者さんたちのことを本当に心配しています。この病院は元々リハビリの専門の病院ですし、あとは身寄りのない高齢者の方だとか、在宅で診られないような、重度の障害を持つ方とか、そういった方たちが元々が入院している病院なんですね。
現場では、そういった方たちに食事を提供することやその他のサポートも非常に難しくなっていますし、院長はこうした現状での患者さんたちの健康を本当に心配しているということです。
ですから、患者さん連れての避難は到底できませんので、空爆が続いている今も、そこへ留まらざるを得ないという状況です。
堀)
病院だけではなく、学校などが攻撃の対象になったりとか、本来であれば守られるべき施設で次々と民間人の犠牲が出ています。国連の職員でさえ多くが犠牲になっているという状況ですよね。 どうご覧なってますか?
大澤)
今回、救急隊員の方たちも本当に寝ないで、おそらく食事も摂らないような状況で、皆さん活動されてると思うんですけど、そういった方たちも亡くなっています。
停戦が1日遅れるだけで、300人、400人という人たちが亡くなっているという状況は本当に信じがたいですし、1秒でも早く攻撃を止めてもらいたいなと思ってます。
■深刻な事態に発展 ヨルダン川西岸での緊張
堀)
一方で、ガザではなくパレスチナ自治区ヨルダン川西岸の方でも様々な動きがあって、以前大澤さんに伝えていただいたジェニンに対してもイスラエル軍による空爆があったという報道がありましたよね。現地ではどうですか?
大澤)
どうしてもやはりガザの方が大きく取り上げられているので、ニュースでも伝えられてはいますが、やはり世界では注目されずらい情報なのかなと思っています。
実は、この10月7日からもう既に90名あまりがヨルダン川西岸でもなくなっていますし、逮捕者も1400〜1500人ぐらいに増えている状況で、かなり大変なことになってきていると思います。
堀)
こうした中で大澤さんたちは、JVCとしてどのような支援をやり続けているんですか?
大澤)
とにかく今できることとして「発信活動」などをしていますけれども、外から何も入れられない状況だとしても、何とか、今、連絡を取っている病院に資金を送ったり物資を入れられないか、ということも検討しているところです。
堀)
もうありとあらゆる手を尽くしてということですよね。
大澤)
そうです。パレスチナではガザの中の人たちも、外の人たちもとにかく停戦を願っています。私達も日本とパレスチナの双方で活動するNGOとして、日本政府に対して何とか動いていただきたいということで、岸田総理に対して停戦に向けて、人々の安全を確保できるよう働きかけてもらいたいなと要請などを行ってきました。
「人道回廊の設置」など、そういったことが最初の方は中心で話し合いがされていたかと思うんですけど、やはり「支援が入ればいい」ということだけでは全くなくて、本当に空爆を止めて、皆さんが(生涯)安心して眠れるように、食事が取れるように、水が飲めるように、全て並行してやっていただきたいなと思います。
堀)
アマルさんや病院の院長に対して、いつも大澤さんはどんな言葉を返されているのですか?
大澤)
正直に言うと返す言葉がなく、安否確認だけでも精一杯なんです。「外の人たちはすごく願っているし、みんなが安全であることを願っているよ」ということと、安全な場所がないのわかってるんだけど「とにかく命が守られることを願っている」ということを伝えています。
堀)
悔しいですよね。本当に。でもこうやって伝え続けて、多くの人たちが知らないとやはり状況は変わらないですからね。
大澤)
はい。なので、現地の皆さんが送ってくれるメッセージをできるだけ多くの人に伝わるようにと思って発信活動を続けています。それが、私達にできる、今唯一できることかなと思うので、続けていきたいと思います。